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よいこわるいこふつうのこ

にんじゃなんじゃもんじゃ
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「荘園(そうえん)」

AFTER DARK ――禁欲的な「色気」という手法
コンセプトは夜会。2008年春夏シーズンではスポーツミーツヘアをテーマにモードオリンピックとも呼べるようなスポーティーでいて、トラッドのある魅力的なスタイルを我々に提案してくれた斉藤タカ丸。秋冬はダークカラーを基調に、「和」を思わせる落ちつきのあるスタイルでアレンジ。秋冬コレクションにダークカラーが多いのは毎年の傾向だが、ゴシックアレンジが隆盛を極める中、同じブラックでも、どこかコケティッシュなゴージャスさをアピールすることであえて別方向からの”攻め”の姿勢を見せつけてくれた彼から、目が離せない。
「秋冬はクリスマスもあるし、フォーマルな装いが必要になるパーティーシーンも多いかなって。それで、インスピレーションソースを夜会に持ってきました。今年はゴシックが流行っている。そんな中で、当然「黒」もトレンドのひとつとして持て囃されるわけなんだけど、僕はあえて、別の方向から「黒」の魅力を見せたかった。もともと僕は、「黒」はカラーヴァリエーションの中でも、一番エロティックでありながら禁欲的な、コケティッシュさを匂わせるものだと思ってるから」
そんな今期テーマに対して、彼がヘアアレンジモデルとして抜擢したのは、黒髪が美しい無名の美少年。無駄のない鍛え抜かれた肉体を、シンプルラインの着物に包み込ませた姿は、不思議と私たちに研ぎ澄まされた日本刀を思わせる。少年と青年期の狭間という微妙な年齢の危うさが、長い睫毛に縁取られたクールな目元に漂っている。美少女とも美少年とも、そして美青年ともとれるこのモデルの織り成す不思議なコントラストは、我々を妖しい夜の眩さの中へ連れて行ってくれる。モデルの名前はあくまで”無名”。ヘアスタイルはもとよりファッション界からも世界中の注目を浴びた「彼」だが、「ヘアアレンジを見て欲しい」とあくまで正体を明かさない。
長く伸ばした髪は、どこまでも黒く、練り上げられた墨のよう。それを、斉藤はトップで結い上げ、あえてアシンメトリーにサイドに流すことで、コケティッシュとストイックが危ういラインで共存した見事なスタイルを作り上げてくれた。
「彼の髪はもともと、結構硬い。なのに、背中に垂らすとウェーブがあってとても柔らかく見えるんです。それが、真っ黒なのに重たさを感じさせなくてすごく魅力的だなと思った。今回のコンセプトには彼しかいないと思ったので、無理をいってお願いしました」
右ページ 黒字の綸子に右肩から背中にかけて咲き誇る真っ赤な椿が美しい着物¥224,000(ニノクルワ)/シルバーリング¥61,050(KEMA)/ブーツ¥98,700(フーマ)


---------- キリトリ -----------

これ、くくタカって言ったら怒られるだろうか、やっぱり。
「装苑」見てたら思いついたんでやった。後悔はしていない。

久々知先輩はモデルをやっている間すごく恥ずかしがってくれそうでいいですね。しかもそれが内面に現れていなくて、表向きはすごくポーカーフェイスでクールに見えるという・・・。世界的に有名なデザイナーやらモデルやらが挨拶に来てくれる間も、媚びることなく、かといって無礼なわけではもちろんなく、落ち着いた品位ある対応で周囲に舌を任せる。
「すごいね、彼、素人モデルだって?信じられないな」
などとタカ丸に零しに来る。
撮影が終わり、ロンドンのパブリックホテルに戻ってから、「疲れた!英語わからん!和食食いたい!豆腐!」などと竹谷と国際通話している。寝る前の「お疲れ様、兵助くん」コールに、「斉藤?あんたのほうが疲れてるだろ。今帰ったのか?遅くまで打ち合わせやってたんだな、食事は?そっか。・・・ああ、俺なら平気。しっかり寝ろよ。じゃな、おやすみ」と優しい深みのある声で返し、就寝。そんな一度きりのモデル経験。
・・・が、あったっていいじゃないか!

ま、気が済んだら消します。
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好き好き大好き超愛してる④

孫兵は焦っていた。鼻息も荒く血走った眼で竹谷を真正面から見つめていた。飼育小屋の前に来た竹谷は、なにも知らないふうで、しゃがみこんでのんきに大ムカデの大五郎に声をかけている。孫兵は気を落ち着かせるために首に巻きつけたジュンコをひと撫ですると、「先輩、」と声をかけた。竹谷が、「ん?」とにこにこ笑顔で孫兵を見上げる。国宝級のスマイルだ。
孫兵は竹谷の笑顔が好きだった。彼の笑顔があればこの世から戦争は滅すると本気で信じていた。そのくらい、竹谷の笑顔はすばらしい。その昔、竹谷は笑顔で孫兵を救ってくれた。それから孫兵は、何をおいても竹谷だけは自分が守ると決めている。孫兵は生物のなかで人間が一番弱いと思っている。人間には、鋼鉄の爪も、鱗も、牙も、毒もないのだ。どうやって自分自身を守ったらいい!?絶望する孫兵に、竹谷は教えてくれた。人間は、争わない賢さを持っている。人間は、その賢さで、生き延びるんだよ。ならば竹谷の笑顔は、その賢さのひとつか。彼が生き延びるために、孫兵は、竹谷の笑顔だけは生涯自分が守りきると決めている。
「先輩、あの、噂を聞きました。あれがほんとなら、僕は、どうしたらいいですか。僕は、先輩を守りたい。先輩の力になります、悔しいけれど、先輩が笑ってくれるなら、僕は先輩の望みを叶えます。僕は、どうしたら、いいですか」
竹谷は、きょとんとした。孫兵は目の前で、必死の形相を浮かべている。真剣みを帯びた瞳は、まっすぐ竹谷を捕らえて、笑い飛ばすだけでは済ませてくれなそうだった。
「孫兵、噂って、なんだ。お前、何の話をしているんだ?」
今度は孫兵はきょとんとした。それから、眉を潜めて、首を何度も横に振った。
「お辛い気持ちを、隠さなくたっていいんです!僕が先輩のそばにいられないなら、せめて、先輩の痛みを僕にも半分分けてくれたら・・・」
「孫兵、俺、どっこも痛くないけど?」
孫兵は、また、きょとんとして竹谷を見上げた。竹谷はにこーっと微笑んでいる。まじまじと見つめてみても、別段、竹谷が痛みをこらえて笑っているふうでもなさそうだ。孫兵は首を傾げた。それから、訝しげに、竹谷を見上げた。
「あの、つかぬことをお伺いしますけど、先輩は久々知先輩と、付き合っているのではないんですか。それで、不破先輩のことが好きな鉢屋先輩に叶わない恋の慰み者にされてて、久々知先輩は変態だからそれを咎めずに一緒になって先輩のこと好きにしてるとか、・・・」
竹谷は笑顔のまま、こめかみに浮き出た血管をぷちんとはち切らせた。ぶしーっと勢いよく血が噴出す。孫兵が眼を丸くして叫んだ。「先輩ーッ!?」
「何だその妄想は。誰から聞いたんだ、孫兵」
「誰から・・・というか、誰からともなく・・・です。その、学園中の噂になってますけど」
「いつからだ」
「僕が知ったのは今日です。き、昨日もさ、3Pしたとかしてないとか・・・し、知らないですけど!」
真っ赤になって怒ったようにいう孫兵は、どさっ、という人の倒れる音で逸らしていた視線を上げた。そこにさっきまでの竹谷の姿はなく、地を見ると、顔を真っ赤にした竹谷が眼を回して倒れていた。


久々知が火薬倉庫に行くと、なにやらひそひそと話し込んでいたふうの三郎次と伊助が慌てて身体を離して、姿勢をよくして久々知に向きなおった。久々知はそれを訝しげに思い、「何だ、」と尋ねた。
「なにかあったか」
「い、いえ、なにも」
「そうか。仲がいいことは結構だが、わかりやすい内緒話をするものじゃないぞ。あらぬ疑いをかけられるもとだ。そうでなくとも他人への印象もよくない」
淡々と忠告する久々知は、三郎次と伊助にとって頼れる委員長代理であり、尊敬する先輩でもあった。ふたりは顔を見合わせると、「久々知先輩、」と遠慮がちに名前を呼んだ。久々知はふたりを振り返ってもう一度「何だ」と尋ねた。ふたりは、「先輩に関して変な噂が流れています」と困ったようにいい、それからもう一度顔を見合わせた。
「僕ら、さっきまでそのことについて話していたんです。先輩はそんな人じゃないよね、って。酷い噂だから、誰が流したのかわからないけれど、許せないねって」
伊助がおずおずという。兵助は、はて、と首を傾げた。まるで心当たりがなかった。
「噂、どんな」
伊助の顔が真っ赤になる。三郎次が兵助に耳打ちしようと爪先立ちし、兵助はそれを聞き取ろうと腰を低くした。ぼそぼそ、と三郎次が噂を耳に流す。兵助は最後まで聞き終わらぬうちに、
「くだらん」
と吐き捨てるように言った。三郎次も伊助も、首を縦に振る。
「先輩、どうしましょう」
「放っておけ、」
久々知は取り合おうともしない。伊助が、でも、と涙目で久々知の袖を引いた。
「タカ丸さんは信じちゃったみたいなんですう!それで、もうここにはいられないから作法委員に入れてもらうってえ~!どうしよう、先輩、タカ丸さんがとられちゃったあ!!」
これにはさしもの久々知も眼をむいた。「なっ、なんだとお~っ!?」
煙硝倉に大人気なく怒声が響き渡り、三郎次は先を思いやって溜息をついた。

好き好き大好き超愛してる③

三郎がカウンターでAランチを受けとって雷蔵の座っていた席へ戻ってくると、そこには、困りきった表情をした竹谷が座って縋るように三郎を見上げていた。
「雷蔵は?」
「どっか行った」
「飯は?」
「いらないって」
久々知がしらっとした表情で、肩越しに鉢屋を見上げた。ぼそりと低い声で歌う。
「おーこらせた、怒らせた。らーいぞうを怒らせた♪よかったな、嫉妬してもらえて、三郎」
ぷるぷると三郎の身体が小刻みに震えている。泣くのを我慢しているのだ。ふだん悪戯ばっかりして尊大で鷹揚な態度ばかりを見せつけている妖者の術の天才が、実は繊細で傷つきやすい性質であることを知っている竹谷は、久々知のサドっ気に無言で、やめてやれ、と首を振る。ぐし、うっく、えく、と三郎が小さく嗚咽するのを聞いて、竹谷は、
「・・・謝ったら?」
と至極まともな意見を述べた。三郎は何も言わなかったが、きっと今夜あたり雷蔵と仲直りするだろう。彼のいつもの馬鹿な思いつきは、今回はこれで閉幕するのだろうと、竹谷と久々知は疑わなかった。そう、まさか、この小さないさかいがあんな大事に発展するだなんて誰が予測しただろうか。


五年ろ組の席順は、一番後ろの教師に見つかりにくい人気席に、雷蔵と三郎が並んでいる。この、三郎にとって文句なしのいい席順は、もちろん奇跡なんかではなくて、彼が籤引きに細工をして成し遂げたものである。三郎にとって、奇跡は「自ら作り出すもの」であった。だが、この日ばかりは三郎も、この席順を恨んだろう。なにせ、三郎の隣では不機嫌を隠さない雷蔵が、長い文机を隣同士に分け合っているのである。三郎はびくびくしながら、謝るチャンスを掴もうと必死である。上目遣いに雷蔵の顔を覗き込んでみても、彼は教科書と黒板に視線を行き来させるだけで、決して三郎の視線の侵入を許さない。鉄壁の構えであった。三郎は仕方なしに、草紙を一枚破って、「ごめんなさい」と書き付けて、雷蔵に渡した。雷蔵はそれを片手で握りつぶして、三郎につき返す。視線は黒板を見つめたままである。雷蔵のあまりの沙汰に、三郎は息が止まるかと思うほど驚き、絶望した。朝ちょっと生意気な口を利いたことが、こんなに彼を怒らせるとは!
しょんぼりした三郎と、その横で怒りも心頭な様子の雷蔵を振り返って、竹谷は心配げな様子である。あまりにふたりを心配していて、竹谷は、自分が木下鉄丸から苛立った様子で何度も名を呼ばれていることに気づかなかった。
「竹谷ーッ!!」
ついには怒鳴りつけられて、竹谷はびくん、と大きく身体を揺らす。
「なにを鉢屋ばかり見つめとるんだ、馬鹿者っ!」
「えっ、あっ、」
それは厳しい木下なりの冗談を効かせた文句のはずだった。木下は厳しく、生徒に打ち解けないこと心情にしているが、竹谷にだけはわりと優しい表情を見せた。それは竹谷のひとなつっこい性格によるものだろう。さらに木下は、賢い三郎ならば自分の冗談を上手く返せると見込んだのだ。
「げーっ、木下先生、気持ち悪いこといわないでくださいよ~」
などと軽口を叩いて舌を出し、それに竹谷が「気持ち悪いってなんだよ!」などとプンスコ怒ることで、授業中の雰囲気を和らげようとしたのであった。・・・なにせ、今日は雷蔵の不機嫌でクラス全体が妙に緊張しているのである。
ところが、焦る竹谷の向こうで、雷蔵がクールに「木下先生、そんなことより授業を進めてください」と返し、その言葉に鉢屋が突っ伏して泣き出してしまい、事態はますます酷いものとなった。木下鉄丸は、思春期の男子生徒たちを教えることの難しさを想って溜息を吐いた。


おかしい、と呟いて首を捻ったのは久々知である。放課後の食堂でのことであった。竹谷から今日一日の雷蔵の不機嫌っぷりを困りきった態で訴えられての返答であった。
「雷蔵は別件でも何か起こってるんじゃないのか」
「今日の三郎の対応だけじゃないってことか」
「あんなこと、いつもの雷蔵だったらとっくに許していてしかるべきだ。それが、こんなに根が深いとなるとな、三郎は外に何かやっているのかもしれない」
「ありえない話じゃないな」
なにせ、雷蔵は怒りをためるところがある。とにかく、と竹谷は腹を擦りながら「はやく仲直りしてもらわないと、俺のほうが参っちまうよ」と深く溜息をついた。その背中を久々知が軽く叩く。
「ま、早いとこ原因を探って俺たちで仲直りさせよう」
「おう」
久々知の突き出した拳に、竹谷がコツンと己の拳をぶつけて、ふたりはふっとお互いに表情を緩める。緩やかな空気が流れた、そのときだった。背後で孫兵が、震えた声で竹谷を呼んだ。
「先輩、先輩、お話したいことがあります!」
竹谷は振り返って、なんだと問う。それに、ここでは無理だ、と美貌の後輩は恥らうように首を横に振った。竹谷は瞳をぱちくりさせた後、じゃあ、飼育小屋のあたりまでいくか、あそこなら人影もないし、と気を使ってくれるのに孫兵は頷く。竹谷が腰を上げると、久々知も、なら俺も委員会に行こうかなとなんのけなしに呟いた。それから竹谷が、「兵助、また夜にな」と片手を挙げるのに、ぽん、とそれを叩き返してやれば、孫兵が恐ろしい表情でこちらを睨んでるのに気がついて、首をすくめた。
(・・・なんだ、一体)

好き好き大好き超愛してる②

仕事で"(  ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ"といいたくなるようなときもあるさ、人間だもの。
怒りを創作意欲にかえ、三郎がうっとうしい話続き。

---------- キリトリ -----------

三郎の提案に、久々知は「何で?それって俺になんか有効なわけ?」と至極冷静な返答をし、竹谷は、「え、なんであえてそんな波風立てるようなことを!」と慌てて首を横に振った。唐突な比喩にはなるが、3人の恋愛を生みに例えるとこうである、と、三郎はおもむろに立ち上がって大仰な身振り手振りを交えて熱くプレゼンテーションを始めた。
「久々知の恋愛は引き潮の海である。お前のクールな振りして実は大変暑苦しい片想いに、タカ丸さんは少し引き気味である」
「うるせえよ」
「そこで、嫉妬という名の嵐を与える。するとどうであろう、それまで静かで決して揺れることのなかった凪の海が、久々知という名の砂浜に激しく寄せては返すではないか!兵助君が好き!ああ、でも、だめ、いけないっ!忍者を目指す僕が、誰かを深く愛するなんてそんなこと・・・ああっ、でも、止められない!好き!兵助君が好き!僕を抱いてーっ!・・・と、まあ、こうなるわけだ」
「よーし竹谷、明日も早いしもう寝ようぜ」
久々知はおもむろに布団を敷き始める。竹谷は苦笑して、「三郎、久々知疲れてるみたいだしさ、お前ももう雷蔵んとこ帰ったら?」などと遠慮がちに勧めてくる。三郎は竹谷に足払いをかけると、久々知の敷いた布団の上に竹谷を倒した。その上に圧し掛かって、起き上がれぬよう肩を押し付けると、さしもの竹谷も顔を引きつらせる。
「まあ、俺の話を聞け」
「三郎、あの、この体勢は俺いろいろ嫌なんだけど・・・」
「聞け。聞かないと舐めるぞ」
「ぎゃーっ!どこをーっ!?兵助助けろっ!」
「仕方ないな、三郎、三秒で説明しろ」
竹谷の布団を隣に敷いた久々知は、どっかりとその上に座り込む。
「竹谷、お前の恋愛は正直順風満帆だ。食満先輩は告白こそまだしないものの、あれはチャンスをうかがっているだけと見た。形式を重んじる人だから、告白ひとつとってもしかるべきときにしかるべき場所でしめやかに行いたいのだろう」
「い、いや、先輩と俺はそんなんじゃないって」
「ふっ、そういう謙遜の節々に”余裕”の二文字が垣間見えるよ、竹谷。だけど、本当にそんなに油断しきっていていいのかな?お前の幸せは、実は砂上の楼閣かもしれないんだぜ?食満先輩のルームメイトを思い出せ・・・」
竹谷がふと視線を横にそらしたのを、鉢屋は見逃さなかった。ぐぐっと顔を近づける。寸でのところで、ぐいっと兵助が襟元を掴んで引き上げたので、竹谷はほっと安堵の息を吐いた。
「食満先輩と伊作先輩は、一年は組の頃から付き合っていると噂され続けている仲だ。事実は違うとしてもふたりとも慣れきって、黒板にあいあい傘が書かれていてももう動じなくなっている。・・・いつ、噂が真実に変わってもおかしくない雰囲気だ・・・どうするう~(↑)?そんなことになったらどうするう(↑)竹谷あ~」
語尾上げで迫って来るのが非常にうざい。つい竹谷は、「もうどうにでもしろよ、もう!」と怒鳴っていた。三郎はにたりと笑うと、「我が同士を得たり!」とガッツポーズをとり、そのまま拳を天に突き上げる。久々知を振り返ったが、彼はやはり表情ひとつ変えず「断る、鉢屋馬鹿三郎」と生意気な口を利いた。恨めしく袖を引っ張ったのは竹谷だった。「兵助もいっしょにやれ~っ!」と我侭に請われて、兵助は溜息混じりに「仕方ないな、のってやろう」と頷く。久々知は、竹谷には態度が甘いのだ。久々知いわく、竹谷はどこか豆腐に似ているのだそうである。その真意も例えの意図も、誰一人理解できていない。まあ、それはいい。大切なのは、兵助も竹谷も三郎の案にのったということなのであるから。
「して、どうするのだ」
と尋ねる兵助に、三郎はにっと笑った。
「策はある」
竹谷が三郎の口元に耳を寄せる。久々知もそれに習った。三郎がふたりの肩を抱き、囁いた。
「俺ら三人で、愛し合っちゃおうぜ!」


その日雷蔵は、見てはいけないものを見た。
とうとう朝まで帰ってこなかった三郎は、久々知と竹谷とともに三人で、食堂に現れた。久々知も竹谷も表情がうんざりしているので、雷蔵は、果てはまた三郎が迷惑をかけたかと思い、「三郎!」と語気も強く彼を呼びつけた。
いつもだったらどんなに怒鳴りつけても、「うん、なあに、雷蔵(はあと)」と疎ましいような甘えた様子を見せるのに、その日はしらっとしらけた表情で「何?」とそっけなく聞いただけだった。人のいい雷蔵はそれだけで妙に居心地が悪くなってしまって、「何って、おはようって思っただけで、・・・」と語尾も弱々しく、もごもごと尻すぼみになってしまう。三郎はふい、と無視をしてカウンターのほうへ行ってしまった。久々知がそれに従う。
雷蔵は唖然とその背中を見送った。いつもだったら、雷蔵のメニューも聞いてくれるのに・・・。それで、いいよ、メニューくらい自分で決められるってば!とわざと突っぱねてそれで・・・。さみしげな雷蔵の表情に、竹谷が取り繕うような様子で、「あのさ、あの、三郎は今日ちょっと機嫌が悪いみたいだな」とあせってフォローする。雷蔵はなんだか胸がむかむかしてきて、
「三郎が機嫌悪くったって僕に当たることないだろ!」
とつっぱねて、席を立ってしまった。
「雷蔵、朝飯は?」
「いらない!」

つづく。

好き好き大好き超愛してる①

ライトなノリのものを書いてみんとてすなり。

・時代考証、なにそれおいしいの?
---------- キリトリ -----------

「見せつけてやろうぜ!」
と三郎が言った。丑の刻の頃、久々知と竹谷の部屋での出来事である。平手で勢いよく畳を打ったので、畳からぷわ、と溜まった埃が飛び出してきて、三郎はけほけほと咳き込んだ。久々知は忍たまの友に向かい合ってしこしこと作業をしている。そう書くとまるで忍たまの友をおかずに青少年としての健全で文化的な行為にいそしんでいるように思われるかもしれないが、何のことはない、タカ丸の忍たまの友に学習ポイントを丁寧に書き込んでやっているだけなのである。片思いの相手にあいまいな態度で愛をはぐらかされていまいち振るわぬが、まがりなりにもい組の首席(つまり学年トップ)なのであった。タカ丸が授業が難しいと伊助と話しこんでいるので、いいか、火薬の種類はこう覚えるのだなどと三郎譲りのゴロあわせをなんのけなしに教えてやったら、きらきらと宝石のような瞳で見上げられ、「すごいかっこいい!」「久々知くん頭いい!」などと褒められ、つい調子にのり、鼻下三センチ伸ばして「そんなら単元ごとのポイント教えてやるよ、どら、忍たまの友貸してみな」などといってしまったのだった。自慢話として五年の双忍の卵略して双たまに話したら、雷蔵は微笑んで、「ああ、そりゃいいアピールになったねえ」と喜んでくれた横で、三郎が「おまえそりゃ都合のいい男フラグたっただけだぞ」とにこやかに言ったので、雷蔵とふたりで見事なジャーマンスープレックスホールドをかましてやったら、ろ組の生徒たちから、「雷蔵、三郎やめて久々知と双忍やれよ」と口々にアドヴァイスがとんだ。
竹谷は寝転がって、孫兵の日記を読んでいる。先日えらく勢い込んで、「先輩、ぼ、僕とよろしかったら、僕と、こ、ここ交換日記をしませんか!」と草子を突き出してきた。然して断る理由もなかったので、「おう」と軽く請け負った。孫兵はロマンチストな少年だが、理系脳の持ち主なので、そういう意味での文才はない。「朝、きみ太郎と散歩。その後朝食。メニュー:Aランチ。玄米、白菜の漬物、たまご、味噌汁、のり。昼、じゅんこ脱走。一時間後、裏裏山にて再会。夕刻、・・・」などと、行動記録とも行ったほうがいいような味気ない記載が続いている。竹谷はそれに、「じゅんこと再会できてよかったですね。逃がさないようにより工夫できるとよいでしょう」などとコメントし、これではまるで学校の先生か何かである。少し考えてから自分のページに、「三郎は突拍子もないことを突然言い出すので、なかなか面白い男だ」と書き込んだ。それから顔を上げて、今度は何だ、といった。三郎が、何かを思いついてふたりの部屋を訪ねてくるのは今に始まったことではない。そうしてそれは大概、雷蔵には決していえぬような悪戯だったり仕事だったりの相談なのだ。ふたりはこういうときの三郎の話を、ただ黙って聞いてやることにしている。聞いてやって、最後に、「じゃあ明日もがんばろうぜ」と当たり障りのない挨拶で軽く受け流して終わる。まともにのったら、雷蔵を怒らせる。雷蔵を本気で怒らせると、地球が三回滅びると三郎は言う。そのくらい雷蔵は怖い。だからふたりは雷蔵を怒らせないことに関しては真剣なのだった。
さて、その夜の三郎曰く。
「雷蔵を嫉妬させたい!」
んだそうである。それはなぜかといえば、「今日の昼休み俺は雷蔵と木陰で気持ちのいい風を頬に受けながら、俺が雷蔵をどのくらい好きかということについて語っていた」のだそうだが、「雷蔵が海なら俺はそこから生まれたヴィーナスだ」とか「俺はこの世界にクレオパトラが生きていないことを幸いに思う。あの嫉妬深き美姫が雷蔵を見たらきっとお前の持つ輝きに妬み狂っただろうから」とか「お前の声は小鳥の囀りだ、デュオニュソスのぶどう酒だ、こんなに俺を酩酊させるものを俺は知らない」とか口説いていたあたりで、にっこり天使の笑みを浮かべて「三郎、黙れこの野郎」といわれたというのだ。
「俺は悔しい!」
と三郎が畳を両手のひらでバンバンと打つ横で、久々知は「今回の事件はほんと、サブプライムショックきわまれりだよなあ」などといい加減な相槌を打ち、竹谷は、「そういえば三郎、この間貸した筋肉マン返してくれ。孫兵が読みたいって言うからさあ」などとにこにこ関係ない話を振ってくるのに、三郎は、
「嫉妬させてやろうぜ!」
と高く呼びかけた。「兵助はタカ丸さんに、竹谷は食満先輩を、嫉妬させてやろうぜ!!」
「「はあ?」」
ふたりが同時に首を捻ったのは言うまでもない。

つづく。

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