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よいこわるいこふつうのこ

にんじゃなんじゃもんじゃ
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男子 in ワンダーランド。

五年の友情って女の子が見てて「いいなー(はあと)」って思うノリがいいですよね。男4人でディ○ニーランド行っちゃう、みたいな。マスコット耳もノリノリでつけちゃう、みたいな。この場合、久々知はマスコット耳にもマウスたちにもまったく興味はありませんが、三郎や雷蔵や竹谷に言われるがままに耳つけたりアトラクション並んだりします。久々知は興味のないことにはこだわりがないので、3人に任せきりです。たまーに、パレード見て「あれ、あのアヒル、女バージョンもいるんだな」「ああ、でいじー?」「女マウスと違って色気ムンムンだな。いいな。俺こっちが好み」とか呟いたりします。それ見て三郎が「やだあ、兵助くん、ほんと熟女系好き過ぎー」とかってからかう。竹谷はジャンボ餃子食べよーぜってしきりに言ってる。ちなみにマスコット耳は竹谷と雷蔵がふたりともてぃがーをつけたがったんでジャンケンした。負けた雷蔵はぷーさんになった。三郎はマリー。久々知はみっきー。
4年もディ○ニー行けそうだけど、滝は人ごみ嫌いでげんなりしてるし三木と喧嘩ばっか。楽しんでるのは綾部とタカ丸。マスコット耳みんなでつけよーよと誘うタカ丸に対して「「そんなもんつけるわけないでしょーが!!」」とこんなところだけ気の合うふたり。
6年はディ○ニー6人でいくとか無理。絶対ムリ。潮江「夢の国?なんだそれは・・・団蔵、お前寝ぼけてるのか?」仙蔵「この面子でディ○ニーだと?面白い冗談だ」長次「・・・」小平太「一回行ったことあるけどあそこそんなにおもしろくないぞ」食満「嫌だ(即答)」伊作「ああいう場所は・・・男ばっかりで行くのは不毛じゃないかなー(苦笑)」


寒い日は食満先輩にダッフルコート着せたいよな!小説。↓

寒い。食満は鼻の頭を赤くして、自販機で買ったホットコーヒーの、冷めた一滴を咽喉の中に流し込んだ。ぶるっと身震いすると、そばにあるダストボックスにそれを投げ入れる。それから冷たい指先をコートのポケットの中に押し入れた。
「さみッ」
と呟いて身体をちぢ込ませる。吹きすさぶ北風は切るようだ。海に程近いこともあってとにかく寒い。手袋をしてこなかったのはミスだったな、とひとりごちた。公園の時計を見上げると、針は午後二時過ぎをさしている。どんよりと立ち込めた厚い灰色の雲は、空全体を覆い隠して世界はどんより薄暗い。今夜は雪になるかもしれないと食満は思った。
「留三郎せんぱーい!」
背後で自分の名前を呼ぶ声がして、食満は振り返った。富松がジャンバーを羽織っただけの軽装でこちらに走ってきていた。ジーンズに擦り切れそうなコンバース。慌てて家から飛び出してきたのだろうか、いつもと変わらぬなりに食満は苦笑する。
「作兵衛、ばか、お前、寒いだろ」
駆け寄ってきた少年の首に、己の巻いていたチェックのマフラーを巻きつけてやる。富松は平気ッスよ、と返したが、すぐ後で大きなくしゃみをした。食満は笑ったが、これには富松も格好がつかないと情けない表情を浮かべた。
「いきなり呼ぶからなんだと思って、慌ててきたんですよ!」
「別にたいした用事じゃない。お前が見たがってた試合のチケットが偶然手に入ったから、いっしょに行こうと呼んだだけだ」
「それならそうといってくれたらいいのに」
「膨れるな、サプライズだよ」
食満が機嫌よく笑って富松の鼻のてっぺんを指でつついた。そのとき、竹谷が孫兵を引き連れてやってきた。どうやら食満は4人分のチケットを手に入れたらしい。竹谷は孫兵の手を引いている。こういうところ、ほんとたらしっぽい人だよな。富松は見咎めて内心呆れた声を上げる。孫兵はまったく野球に興味はないだろう、竹谷がいくというからついて来たに違いない。竹谷に逃げないように手を握られて引っ張ってこられて、孫兵は怒った表情のまま頬を上気させている。体温の低い孫兵は、冬は本当にひんやりとした身体をしている。それをピーコートとマフラー、手袋で包んで完全温暖装備だ。たいして竹谷はもともとの体温が高い人でもあるから寒さに強く、大きなパーカーを羽織っているだけだった。
「ハチ、寒いだろそれじゃ」
「平気ですよ。さっきまで身体動かしてたし、暑いくらいです」
食満はしばらく逡巡して、おもむろにダッフルコートを脱ぎ始める。竹谷が慌てた。
「交換だ」
「いいですってば別に!」
「汗が冷えたら風邪引くだろ」
ほら、と脱いだコートを惜しげもなく突きつける。富松がはたで慌てた。「あの、俺、俺寒いの平気だから、マフラーお返しします!」そういってマフラーと外そうとするのを、竹谷と食満がふたりでとめた。
「いいよ、マフラーは富松がしてろ。風邪引くと大変だからな」
「作兵衛、それはお前がしてろ」
「え、あ、でも」
孫兵は、はあ、と深く溜息をついてから、自分のマフラーと手袋を外して竹谷に渡した。
「孫兵、寒いだろ」
「寒いですよ。だから、さっさと行きましょうよ。試合に遅れます」

4人でわきゃわきゃしてろっつーの。

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年下の男の子

メールとかお返事とか、ためちゃっててすいません。

食満←富松で書きたいとこだけ。

 

たとえば。
上下関係とか礼儀に厳しい留三郎先輩が、「作兵衛、お前だったら俺を名前呼びしてもいいぞ」といってくれたときの嬉しさを、俺は恋だと思った。俺は我ながら色恋沙汰に疎いという認識があるので、やれ好いた惚れた愛だの恋だのの詳しいことはなんにも知らねえが、それでも「恋というのはいっしょにいてそれだけで嬉しくて楽しくて笑ってしまうような相手を見つけたことをいうんだ」という数馬の言葉を信じれば、俺はやっぱり留三郎先輩に恋をしていたんだと思う。俺は留三郎先輩と一緒にいるといつも心臓のあたりがほこほこして安心していたし、わくわくどきどきして何を話してもどれだけ一緒にいても退屈することがなかった。
でも、結論からいえば、俺の恋は叶わなかった。
留三郎先輩には俺が先輩のことを好きになるずっと前から、とっくに付き合っている人がいたのだった。五年の竹谷先輩だ。つまんねー話だ。好きになった人に恋人がいたなんて、ありがちでくだらなすぎて三文芝居にもなりゃしない。それでも俺は結構本気でへこんだ。めっそりへこむたびに、ああ、俺ってけっこうほんとに留三郎先輩のこと好きだったんだなと再認識して、ますます惜しいような悔しいような気持ちになった。俺の同級生に伊賀崎という男がいて、美形で成績優秀の、毒虫をこよなく愛する変な野郎だったが、こいつは竹谷先輩が好きだった。
伊賀崎は俺に、悔しいか、というようなことを聞いた。留三郎先輩が竹谷先輩と付き合っていることを俺に教えたのは伊賀崎だった。俺が頷くと、伊賀崎は、フ、と鼻で笑ったようだったので、俺は腹が立ってお前は悔しくないのかよと聞いた。孫兵は、
「奪えばいいのさ」
といった。
「奪えばいいんだ。私は、竹谷先輩のことを諦めていない。あの人は、後半年で卒業してしまうからそうしたら私にだってチャンスがめぐってくる」
「そんなことしていいのかよ。人のものを奪うだなんて」
「恋に、いいも悪いもあるものか。気持ちの通じ合ったものが正解なんだよ。それ以外はみんな間違ってるんだ」
なるほど伊賀崎の考え方はこの世のわずらわしい常識が絡み付いていることもなく、シンプルだ。こいつは頭がいいんだなと俺は心底納得した。それでも俺にはできないと思った。留三郎先輩が卒業してしまうまでの間、竹谷先輩はもちろんずっと傍にいる。ふたりの間をひっかきまわして留三郎先輩と気持ちが通じ合ったとして、俺は竹谷先輩とどう向き合っていけばいいのだろう。俺は、竹谷先輩のことだって、好きなのだ。だからこんなにも参っているのではないか。
伊賀崎は俺の迷いを、「その程度の気持ちなら、自分が諦めるのが一番いいな」といった。その程度、なんて言われて、馬鹿にされたと思ったが、伊賀崎の深く強固な情念に比べれば確かに平和ボケしていて、気楽なことこの上ないという自覚はあったので、俺は黙っていた。

獣の本能

ありえねー忍者ネタ。ぶち切れ小平太と滝夜叉丸。


頭の中で火花が散る。赤、青、黄、色とりどりの花が咲く。それは体中を駆け巡る危険信号がショートした合図だ。ドクン、と大きくやけに大きく心臓が飛び跳ねて、目の前が真っ白になり、五感が世界から遠ざけられる。耳鳴りの後の静寂。そして鳴り響く音楽。かき鳴らす、打ち鳴らされる、己の鼓動。駆け巡る信号。理性などとうに焼ききれて、体中を信号が駆け巡る。屠れ、と自分の中の野生が命令する。お前に立ちはだかるものみんな、喰い尽くしてしまえ。お前の脚に叶うものなどいない。お前の牙から逃れられるものなどない。さあ、楽しい楽しい狩りのはじまりだ!
小平太は大地を蹴って目の前の敵に飛び掛る。腹を負傷したとは思えぬような素早い動きに、男は、あ!と息を呑んだ。抉られた腹からは血が噴出し、肉が削げ落ちている。それでも小平太は痛みでも感じぬとばかりに傷口を庇うこともせず、男の首を両手で掴み、あらぬ方向へ捻った。金吾が鋭く息を呑む。いけないッ、ととっさに叫んでいた。相手が死ぬ。小平太が殺してしまう。金吾は割って入ろうと思ったが、恐怖心にあおられてどうしても身体を動かすことが出来なかった。あれは獣だ。理性を無くした餓えた獣だ。狩りを邪魔したらこちらも無事ではすまないだろう。ハッ、ハッ、ハッ、金吾は短くきれぎれの息を吐き出しながらただ目の前の残酷な成り行きを見守る。止めなければ。しかし、どうやって・・・?
そのときだった。金吾の背後で、ふいに鋭く小平太の名を呼ぶ者があった。それは滝夜叉丸だった。彼の声音は、ひどく冷静で、取り乱した様子がなかった。金吾はそのことに安堵して息を吐き出すと、後ろを振り返った。
「先輩、」
滝夜叉丸は呼びかけた。
「それ以上は、駄目です。殺してしまう。もう帰りましょう、先輩」
小平太は男の首から手を離して、すっとこちらを振り向いた。その、無感情な瞳に金吾は戦慄する。息を呑んで震えを止めようと拳を握る。その肩を、滝夜叉丸がそっと叩いた。大丈夫だ、と無言であやしていた。
「邪魔するな」
小平太は静かに言い放つ。
「邪魔するなよ、これは俺の相手だ」
「先輩、帰りましょう。三之助の怪我ならたいしたことはありません」
「煩い。止め立てするならお前も殺す」
滝夜叉丸の瞳がすっと細まる。金吾を庇うように彼の前に身体を投げ出すと、
「ならば殺していただきましょう」
ときっぱりと言を放った。そうして彼の得意武器である千輪を構えた。


小平太と滝夜叉丸のペアも好きだけれど、腐った関係ではなく、主従関係がいいです。

ここ最近のパソコンの動きが異様に重たくてイライラする。

四年長屋へようこそ!

忍術学園の四年生は怖いよ、という話。
話、というかシーンが書きたかっただけなので、特にストーリー性はないのですが、それでもよいよという方はどうぞ。


「待て待て待て待て待てゴルア!!!!」
ハードでスリリングな長い一日がようやく終わろうとしている夕刻。忍たま長屋の四年棟からはなにやら騒々しい物音と、叫び声と、怒鳴り声とがひっきりなしに上がっていた。ひとっ風呂あびてほこほこと身体から湯気なぞ立ち上らせながら渡り廊下をぞろぞろと進むは不破雷蔵・竹谷八左ヱ門を筆頭に後ろに続くは鉢屋三郎と久々知兵助といういつもの五年メンバー。彼らの前方から、おもむろに田村三木ヱ門が走りこんできて、五年はなんだなんだと飛び退いた。田村は足音も自嘲せずダカダカダカ!と物凄い音を立てて駆けてゆく。なんなんだ、一体、と呆れたような半目で三郎が呟けば、カサリと背後の植え込みでかすかな物音。兵助が首に巻いていた濡れ手ぬぐいを手にとって、植え込みに向かってビタン、とそれを振るった。触れている布はどうしてなかなか殴られると重い衝撃の武器になる。
「うごっ!」
と小さな悲鳴とともに、植え込みから何者かが飛び出してきた。すぐに屋根の上へ飛び移ってしまい一瞬しか確認できなかったがあれは、
「曲者、だな」
「捕まえるか!」
「それもいいけど、ハチ、庭を見ろ」
兵助の指摘に一同が振り返ると、りいりいと虫の音が微かに合唱する風情ある庭に、低く腰を落とし両腕に千輪を構える少年が独り。滝夜叉丸だ。
「ぬははは、この千輪の名手平滝夜叉丸様から逃れられると思ったのか馬鹿め!変態よ、ここが貴様の墓場となるのだ、ふーははははー!」
「うるさいっ!早くあいつを片付けろッ、馬鹿夜叉丸ッ!!」
横から、先ほど走り去ったはずの三木ヱ門が砲身を担いで走りこんできた。敵は屋根の上からひらりと向こう側、五年長屋の屋根に飛び移ろうとしている。「させるかあッ!!」三木ヱ門が漆喰砲をぶっ放し、滝夜叉丸が千輪を投げつけた。うまく当たって落ちてきた曲者は、そのまま地面に倒れ――ることなく、掘ってあった蛸壷に落ち込んでいった。穴の淵では、シャベルを構えた美少年綾部喜八郎が「だーいせーこう☆」と相変わらずのマイペースな呟きだ。
「曲者確保オー!」
「出合え出合え!!」
わやわやと長屋から飛び出してくる美少年たち。すべて四年生だ。各自に得意の武器を持って、曲者相手に容赦ない止めを刺す。人混みから遅れて苦笑気味に長屋から出てきたのは斉藤タカ丸だ。
「あ、兵助。みんなもこんばんわ~」
「何の騒ぎですか」
「うんと、曲者」
「はい」
「僕らどうもあの曲者さんたちに三日連続ふんどしを盗まれてまして、ひっ捕らえて吊るし上げようという作戦です」
「ぬあっ、変態か!」
くわっ!、と兵助が目をむく。ふんどし紛失騒動なら、兵助もタカ丸から聞いて知っていた。雷蔵が、「タカ丸さんは参加しなくていいの」と首を傾げると、タカ丸はごそごそと懐からはさみと櫛を取り出す。
「僕は刈上げ係なのです」
「なるほど」
五年はいちように頷いた。それから、
「アフロにしてやれ」
「ラーメンマンみたくしてやれ」
「馬鹿それじゃあ逆にかっこいいだろうが、スキンヘッドにしてやれ」
「いやいや、もういっそのことポニーテールに真っ赤なリボンつけてやれ」
などと勝手な応援をする五年生を背後に、曲者の哀れな悲鳴が木霊したという。

なんてどうでもいい話。

竹谷八左ヱ門は動かない

こんな忍者いねーよシリーズ③
この孫兵どう見ても悪役です本当にありがとうございました編。

ガサリ。
背後で葉を踏む音がしてサワリはぞくりと身を震わせた。おそるおそる後ろの林を振り向けば、杉の大木の陰から一人の少年が覗いているのである。それは、先ほど自分が谷から突き落としたはずの少年だった。暗闇の中で、白い膚がぼんやりと浮いている。
「ああ、そこにいたのか。探したよ」
「生きてたのか、生きてたのかよお前ええええ!」
サワリはほとんど恐怖で我を忘れて、懐の短剣を抜き出した。その刃先には、植物からとった猛毒が塗布されていた。孫兵はそのことを、大気中に混じったかすかな匂いから嗅ぎ取った。
「毒か。その匂いなら附子かな。附子の毒は、経皮呼吸・経粘膜呼吸によって、経口から摂取後数十分で心室細動ないし心停止によって死に至る。・・・あの晩、ミユキ殿を殺したのはお前だな」
「だったらどうする!」
サワリがナイフを突き出した。餓鬼独りに怖がっていられるかと、覚悟を決めて飛び出す。対峙する伊賀崎孫兵は随分と細く、体力も無さそうな様子である。勝てる、とサワリは踏んだ。事実、突き出されたナイフを避けきれず、孫兵は刃先をぐっと拳で掴んでそれを留めた。ぽたり、と滴り落ちた彼の血の匂いに、サワリはあはははは!と大声で仰け反って笑った。
「ばあか、毒の突いた刃先を握りやがった!俺の勝ちだああ!」
「いいや、お前の負けだよ」
孫兵はにやりと笑うと、短剣から腕を外し、血の滴る傷口を赤い舌をチロリと舐めあげた。サワリがキョトンと、目の前の少年を見つめる。
「残念だが私に附子は効かない」
ゆっくりと孫兵が歩み寄ってくる。サワリは今度こそ気が狂わんばかりに仰天した。猛毒が効かないなんて、そんな人間がいてもいいのだろうか。
「でたらめだろお前っ!」
わめくサワリを、孫兵は何の感情も滲まない冷たい瞳で見つめる。堂々と歩きながらじりじりと間合いをつめていく。サワリは後ずさりしてそれから逃れたが、やがて木に進路を防がれて止まった。孫兵はひどく冷たい視線――それこそ、一般に”虫を見るような”とでも形容される瞳で、サワリを見ている。サワリの怯えたような視線とぶつかると、美しい容貌を皮肉気に微笑ませた。
「普段私はジュンコを使って相手を倒すことは滅多にないんだ。だってそうだろう、美しい私のジュンコの牙が、醜いものの肉を食むだなんて、そんなこと一瞬でも許されるわけはないからね。でも、まあ、お前は特別だよ。特別にジュンコの毒を味合わせてやろう。ジュンコがお前をたいそう気に入ってな、噛みたい噛みたいと僕に言うんだよ。ジュンコの毒はそこらでは味わえない格別なものだ。酩酊のうちにあの世に逝けるぞ、光栄に思え」
なあ、ジュンコ、と、美しく微笑んで、孫兵は首に巻いた大蛇をひと撫ですると、低い声でサワリを見つめ、言った。
「往け、ジュンコ。お前の毒を分けてやれ」
孫兵が伸ばした腕を伝ってジュンコはするするとサワリのほうへ移動し、大きな顎を開けてサワリの首筋に齧り付いた。そこで、彼の記憶はまったく途切れてしまっている。
再び目が覚めたとき、彼の身体は生涯二度と起き上がれぬものに変わり果ててしまっていた。


ひいい、と吉佐はまったく間抜けな悲鳴を上げてそこらの林を走り回っている。
「動くなッ!」
彼を守りながら闘わねばならない立場にある竹谷は、吉佐に大して鋭く一喝する。ヒッ!と短い悲鳴を上げて吉佐はその場に尻餅をついた。竹谷の言うことを聞けといわんばかりに、彼のまわりを毒虫たちが飛び交って進路をふさいでしまったので、それ以上どこへ逃げることも出来なくなってしまったのだった。
竹谷は構えを解かぬまま、敵を見つめている。竹谷の得意は雷蔵と同じく体術だ。ただし彼の場合、そこに虫獣使いという特性も加わる。孫兵は毒虫専門だが、竹谷にはすべての毒が聞かぬなどという特殊な体質はない代わりに、すべての生き物に愛されるという性質を持っていた。野生の生物で、竹谷の前に立ちはだかるものはない。
コウガは構えもせぬままただ竹谷を見つめて立ち尽くしている。彼の傍らにはよく牙の尖れた狼が一匹、唸り声を上げている。ぐうるる、と低く唸る狼の口からはだらだらと唾液が零れていた。ひどく餓えているのだ。
「疾風丸は人の肉しか喰わんものでな、大喰らいなのに、可愛そうにここ三日ばかり何も食っておらんで腹を空かせている。幸い、お前の肉は美味そうだ、疾風丸が甘さず屠ってくれるだろうよ。なあ、疾風丸」
オオーン!と天高く鳴く。竹谷は構えたままじりじりと間合いをつめる。竹谷の目は、あくまでもコウガを見ている。疾風丸のことはまるで相手にせぬといった様子に、コウガは腹を立てた。
竹谷を援護せんとばかりに、大きな角を持った牡鹿が竹谷にすり寄った。
「いいんだ、山主。俺なら大丈夫だから、山主はあの狼に気をつけてくれ」
やまぬし、はこの山の主だ。彼が竹谷に懐いている限りは、この山の生き物すべて、竹谷の味方といっていい。
竹谷は間合いをつめきると、そのままコウガの懐めがけて走りこんだ。竹谷の得意とする体術は、大陸由来のものだ。身体の捌き方が独特で、獣に似せてある。そのうちの鷹爪拳は相手が倒れるまで攻撃をやめない、攻め一辺倒の動きだった。コウガの鳩尾に拳を叩き込んでやる前に、疾風丸が横から竹谷に喰らいついた。首筋から血が噴出す。林の奥から、野生の狼が二三匹走り来て、疾風丸に飛び掛った。竹谷は血を流したまま、コウガに蹴りを喰らわせる。コウガは大きく傾いだが踏みとどまって、そのまま竹谷めがけて拳を叩き込んできた。竹谷は両手でそれを押さえると、そのまま己のほうにぐいと引き寄せる。突然の行動にコウガが戸惑うふうなのを、竹谷はすかさず彼の身体を抱きこむと、至近距離で顔を近づけた。それから、太い眉を寄せて、はっきりと告げる。
「なあ、お前、山を騒がせたら駄目だろう。さっき、獣の臓腑で山主をおびき寄せるだとかどうとか言っていたが、そんな方法で山主がお前に力を貸してくれると思ったか?・・・馬鹿か、」
吐き捨てるように呟く。コウガは悲鳴を上げた。竹谷が話している間に、彼の足元からざわざわと大百足やら蜘蛛やらが這い上がってきていたのだった。手で払い落としている合間に、竹谷は鳩尾に一発拳を叩き込んでやる。それで終わった。
残った疾風丸が吉佐に襲い掛かったが、竹谷が間一髪で合間に入って彼を庇った。
「ひいい!」
疾風丸が竹谷の肩に歯を沈める深く喰いついてはなれない獣を、竹谷は両手で抱きこんだ。
「よしよし、そんなに腹減ってんのか。可愛そうにな。俺の肉でよかったら遠慮なく食え」
そうして疾風丸の美しい獣をわしわしと両腕で掻き混ぜる。人の肉しか食わない獣なぞいるはずがない、それしか餌を与えられず、他を喰うことを知らなかったのだろう。かわいそうな獣だ。疾風丸がひとかけの肉を千切って、あとは竹谷から離れた。
「それでいいのか。もう、満足したか」
オオーン、とひと鳴きして、疾風丸は竹谷の膝で丸くなった。あは、と竹谷が噴出す。吉佐がそろそろと竹谷に元に寄って来た。
「もう、大丈夫なんですか」
「たぶんな。見ろよ、疾風丸。睫毛が長くて可愛いなあ。こいつ、女の子だぞ」
にこにこと吉佐に話しかけるのに、彼はひどく疲れた表情で、「いえ、あんまり可愛くもないです」と呟いた。

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