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コニーアイランドベイビー

左近と伏木蔵(この名前響きがすごく好きだ)も好きなんだが、どう想像しても古きよき時代の少女マンガになる。左近はほどほどに悪戯っぽくてでも常識人の良い子で、ちゃんと男の子しているのに、伏木蔵がどうしても箱入り娘になる。一年ろ組は想像するとみんな箱入りになる。箱の中でみんなしてきゃわきゃわしてる。そこがかわいい。だけど、妄想していると痒い。



痒いSS。(女体化現パロ)



思わず泣いてしまう、とてもよい映画だった。スタッフロールが流れて伏木蔵が小さく鼻を啜っていたら、 隣に座っていた左近が、小さくワンピースの袖を引っ張った。顔を上げたら、辺りに気兼ねするように、小さく、出るぞ、と囁いて、こそこそと席を立った。背中を丸めてかがんで人前を横切ると、なんだかとても悪いことをしているようなバツの悪い思いがする。映画館から出て、ロビーに出た途端、左近が謝った。
「あの映画、2時間半もあったんだな、悪い」
急げば電車に間に合うかも、と独り言のように呟くと、伏木蔵の手をとってスタスタと足早にビルから出てしまう。歩みの遅い伏木蔵は慌ててついてゆく。情緒がない。ぐいぐいと引っ張られる腕が痛くて、「先輩、手」と情けない声を出したら、「悪い」と一言言って、パッと手は離れてしまった。帰宅ラッシュにさしかかった駅の構内は混雑していて、伏木蔵は迷わないように左近の上着の裾をギュウと握る。付き合っているのだし、どうどうと腕を掴めばいいのだが、なんとなく、出来ないでいる。駅ビルの装飾は一ヵ月後のクリスマスに向けてサンタクロースがきらきらと微笑んでおり、ウインターセールの宣伝が賑わしく掲げられている。煌びやかな世界の様相に伏木蔵は楽しくなる。きょろきょろする伏木蔵をひとり楽しみの中に泳がせて、左近は電車の時刻掲示を眺めては、過ぎ去った電車を悔やんでいる。
「乗り過ごしたか・・・」
眉を顰めているのに、伏木蔵は両手でおずおずと腕を掴んで、彼を見上げる。「先輩、ちょっとくらいなら平気ですよ、たぶん」
「だけど今日親父さん帰ってくるんだろ。怒ると怖いんだろ」
「でも仕方ないから、」
映画って行ったら普通2時間にまとめてあるものですよね、私も気がつきませんでした。伏木蔵は微笑んで、携帯電話をバッグから取り出す。黒のがま口型のバックは、持ち手が黒いサテン地でリボンのようなあしらいになっていて、品が良くて可愛らしい。友人の平太からのプレゼントだといっていたっけ。誕生日に左近が与えた黒のセーターコートに合うから嬉しいと微笑んで、今日着てきた。昼に入ったデパートでふと伏木蔵のバッグと同じものを見つけて値段を見たら、左近の買い与えたものより1ケタ違う値段だったので白けた。伏木蔵はつくづく”お嬢さん”だ。
ぷちぷちとボタンをおして、小さく首を傾げ、上品に携帯を使う。
「あのね、お母さん、電車に乗り遅れちゃったからあと30分遅れるね。え、いいよう、迎えに来なくても。大丈夫。暗いけど、平気、明るいところ通って帰ってくるから。寒くないよ、コート着てきたもん。え、うん、…はい。お父さんにはちゃんと謝ります」
背中を小さくして喋るひとつ年下の少女の背中を、左近はぼんやりと見詰める。伏木蔵はまもなくぱくんと電話を閉じると、左近に微笑んだ。
「今日はあと30分も一緒ですね・・・!」
「なあ、親父さんにひどく怒られたら電話してこいよ」
「はーい。ねえ、先輩、お茶が飲みたいです」
伏木蔵ははしゃいで、駅ビルの中のカフェを指差すが、左近は指先で額をぺちんとはね、「馬鹿、そんな時間あるか」と怒った。伏木蔵は肩を竦めて残念がると、左近が足を進めるままに駅のホームへとあがる。ホームで缶入りのコーンポタージュスープを買ってもらう。喜ぶ小さくて細い体を、左近は愛おしいと思って、まだ抱き締めたことのない少女の指先を、そっと掴む。寒さでひんやりしている。
「先輩の手、あったかい」
「お前が冷たすぎるんだ。冷え性か」
線路に電車が滑り込んだ。埃臭い強風に煽られる。伏木蔵の黒髪が乱れる。整えようと手を伸ばしたら、伏木蔵がこちらを見上げて何ごとかを言った。小さな珊瑚色の唇が、小さく動く。
「つ」
   
    「れ」
      
        「て」
           
              「に」
                 
                      「げ」
                     
                               ・・・
風に吹き散らかされていく。左近は最後まで聞き取れず、眉を顰めた。轟音の去ったあと、伏木蔵は静かに微笑んで、「なんでもないです」といった。左近はそれで何もいえなくなってしまって、黙り込んだ。左近は今日のデート中、ずっと、「この間の見合いは上手く断れたか、」と聞けなかったのを、悔やんでいて、でも、とうとうそれを言い出せないままだ。黙って互いの熱を分け与えていたら、すぐに次の電車は来た。これに乗らなければ帰れない。左近は、最後の七分をもっと喋ればよかったと後悔して、それでも、また時間ができたらやっぱり自分たちは黙ってしまうのだろうと思った。
「来月のクリスマス、楽しみだな」
「はい」
伏木蔵はにこにこと微笑んで、するりと電車に乗り込んだ。甲高いホイッスル、機械音、電車のアナウンス。冷たい扉が閉じて、愛おしいあの子が攫われてゆく。左近はちょっと項垂れて、それから、ホームから立ち去った。
今日の映画はとてもよかった。ストーリーなんかもう、何にも覚えちゃいないけれど。



かか、かゆー!かゆ、うま(ちがう)。

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Comment

無題

  • muryan
  • 2008-06-22 22:24
  • edit
うう~ん
痒いのがいいです。
皮膚が痒いのは堪んないですが心をくすぐる痒さって云うのは想いを反芻して掻き毟るように楽しんでも爛れたりしないでいられるのがいいです。
ああ、かわゆい。

無題

  • すがわら
  • 2008-06-22 22:35
  • edit
コメントたくさんありがとうございます~ほくほく。
ひとり遊びじゃないって素敵なことですね。

痒くてよいといってくださって嬉しいです。ほっ。すがわらは痒い話好きなんですが、自分で書くとなると照れますね。

これからもかゆうまな話(ちがう)を書き続けたいです。
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