現パロ 忍術学園現代版。
堅物の兵助が付き合い始めたのは、後輩だけど僕らよりひとつ年上の斉藤タカ丸。若いながら将来有望な見習い美容師なのだそうだ。最初に彼を見たとき、独創的なアシンメトリーの髪型に、金色に染めた髪。香るコロン。制服のネクタイをわざとリボン結びに決めてみたりして、一体どこのチャラ男だと僕らは目を丸くした。
兵助は今日まで色恋にはまるで感心のなかった朴念仁だ。どうしようもない堅物で、学校の校則を破るなんて微塵も考えないような男だ。それが、まるで世界が違う、今まで恋人がいなかった時期がないんだろうなっていうような派手な人間を捕まえて、「こいつが俺の恋人」などと臆面もなくいうのだから、僕らの驚きは相当なものだった。
「どこで出会ったの?」
と開口一番三郎が詰め寄ってしまったのも無理はないと思う。
兵助は相変わらずマイペースで、僕らの驚きなんかにはまるで気づいていないふうで、「俺腹減ったからメシくおーぜ」とあっさり言い、さっさと駅前のスターバックスに向かって歩き出した。
駅前のスターバックスで平助と三郎が僕らの注文もあわせて請け負ってくれている間、僕はタカ丸君とふたりっきりで向かい合うことになった。僕はどうしても兵助とタカ丸君を結びつけることができず、無遠慮にタカ丸君を見つめてしまっていた。彼は僕の視線に気がついて、真っ直ぐ僕を見ると、にっこりと微笑んだ。
「はじめまして」
「あ、こっちこそ、はじめまして」
「えっと、俺まだよく分かってないから申し分けないんだけど・・・不破、雷蔵さん、ですか?」
「あ、うん」
「双子じゃないんですよね」
「うん、まあ・・・・」
説明が面倒だから、僕らは堅気の人間には双子という設定にしてある。さては兵助が真実を喋ってしまったのか。いくら恋人相手だからって、兵助らしくない短慮だ。忍者が秘密をべらべらと喋るだなんて。それがどんなに小さな嘘でも、命取りになることだってある。僕はあとで兵助に文句を言ってやろうと思った。
タカ丸君は、ははあ、と感心したように溜息をついて、まじまじと僕を見遣る。
「学校は大変ですか」
「別に、学校なんてどこも一緒でしょ。ほどほどに楽で、でもテストは多いし予習も多いし、そういうところはやっぱり大変だよね」
「そうか、そうなんですね」
タカ丸は君はこくこくと深く頷く。ちょうどそのとき、コーヒーの香りとともに兵助と三郎が戻って来た。それぞれに、三郎は僕の隣、兵助はタカ丸君の隣に座る。
「どんな話をしてた?」
兵助が気遣うようにタカ丸君を見た。僕は、あれ、と思う。どうして兵助はわざわざ僕らを街に呼び出して、タカ丸君に合わせたんだろう。そんなことが今更ながらに気になる。
「自己紹介をしあっただけ」
「そうか」
兵助はタカ丸君に向かって深く一度頷いてみせると、そのまま僕らのほうをまっすぐ見つめて口を開いた。
「タカ丸は、桂男の家系なんだ」
無題
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