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好き好き大好き超愛してる④

孫兵は焦っていた。鼻息も荒く血走った眼で竹谷を真正面から見つめていた。飼育小屋の前に来た竹谷は、なにも知らないふうで、しゃがみこんでのんきに大ムカデの大五郎に声をかけている。孫兵は気を落ち着かせるために首に巻きつけたジュンコをひと撫ですると、「先輩、」と声をかけた。竹谷が、「ん?」とにこにこ笑顔で孫兵を見上げる。国宝級のスマイルだ。
孫兵は竹谷の笑顔が好きだった。彼の笑顔があればこの世から戦争は滅すると本気で信じていた。そのくらい、竹谷の笑顔はすばらしい。その昔、竹谷は笑顔で孫兵を救ってくれた。それから孫兵は、何をおいても竹谷だけは自分が守ると決めている。孫兵は生物のなかで人間が一番弱いと思っている。人間には、鋼鉄の爪も、鱗も、牙も、毒もないのだ。どうやって自分自身を守ったらいい!?絶望する孫兵に、竹谷は教えてくれた。人間は、争わない賢さを持っている。人間は、その賢さで、生き延びるんだよ。ならば竹谷の笑顔は、その賢さのひとつか。彼が生き延びるために、孫兵は、竹谷の笑顔だけは生涯自分が守りきると決めている。
「先輩、あの、噂を聞きました。あれがほんとなら、僕は、どうしたらいいですか。僕は、先輩を守りたい。先輩の力になります、悔しいけれど、先輩が笑ってくれるなら、僕は先輩の望みを叶えます。僕は、どうしたら、いいですか」
竹谷は、きょとんとした。孫兵は目の前で、必死の形相を浮かべている。真剣みを帯びた瞳は、まっすぐ竹谷を捕らえて、笑い飛ばすだけでは済ませてくれなそうだった。
「孫兵、噂って、なんだ。お前、何の話をしているんだ?」
今度は孫兵はきょとんとした。それから、眉を潜めて、首を何度も横に振った。
「お辛い気持ちを、隠さなくたっていいんです!僕が先輩のそばにいられないなら、せめて、先輩の痛みを僕にも半分分けてくれたら・・・」
「孫兵、俺、どっこも痛くないけど?」
孫兵は、また、きょとんとして竹谷を見上げた。竹谷はにこーっと微笑んでいる。まじまじと見つめてみても、別段、竹谷が痛みをこらえて笑っているふうでもなさそうだ。孫兵は首を傾げた。それから、訝しげに、竹谷を見上げた。
「あの、つかぬことをお伺いしますけど、先輩は久々知先輩と、付き合っているのではないんですか。それで、不破先輩のことが好きな鉢屋先輩に叶わない恋の慰み者にされてて、久々知先輩は変態だからそれを咎めずに一緒になって先輩のこと好きにしてるとか、・・・」
竹谷は笑顔のまま、こめかみに浮き出た血管をぷちんとはち切らせた。ぶしーっと勢いよく血が噴出す。孫兵が眼を丸くして叫んだ。「先輩ーッ!?」
「何だその妄想は。誰から聞いたんだ、孫兵」
「誰から・・・というか、誰からともなく・・・です。その、学園中の噂になってますけど」
「いつからだ」
「僕が知ったのは今日です。き、昨日もさ、3Pしたとかしてないとか・・・し、知らないですけど!」
真っ赤になって怒ったようにいう孫兵は、どさっ、という人の倒れる音で逸らしていた視線を上げた。そこにさっきまでの竹谷の姿はなく、地を見ると、顔を真っ赤にした竹谷が眼を回して倒れていた。


久々知が火薬倉庫に行くと、なにやらひそひそと話し込んでいたふうの三郎次と伊助が慌てて身体を離して、姿勢をよくして久々知に向きなおった。久々知はそれを訝しげに思い、「何だ、」と尋ねた。
「なにかあったか」
「い、いえ、なにも」
「そうか。仲がいいことは結構だが、わかりやすい内緒話をするものじゃないぞ。あらぬ疑いをかけられるもとだ。そうでなくとも他人への印象もよくない」
淡々と忠告する久々知は、三郎次と伊助にとって頼れる委員長代理であり、尊敬する先輩でもあった。ふたりは顔を見合わせると、「久々知先輩、」と遠慮がちに名前を呼んだ。久々知はふたりを振り返ってもう一度「何だ」と尋ねた。ふたりは、「先輩に関して変な噂が流れています」と困ったようにいい、それからもう一度顔を見合わせた。
「僕ら、さっきまでそのことについて話していたんです。先輩はそんな人じゃないよね、って。酷い噂だから、誰が流したのかわからないけれど、許せないねって」
伊助がおずおずという。兵助は、はて、と首を傾げた。まるで心当たりがなかった。
「噂、どんな」
伊助の顔が真っ赤になる。三郎次が兵助に耳打ちしようと爪先立ちし、兵助はそれを聞き取ろうと腰を低くした。ぼそぼそ、と三郎次が噂を耳に流す。兵助は最後まで聞き終わらぬうちに、
「くだらん」
と吐き捨てるように言った。三郎次も伊助も、首を縦に振る。
「先輩、どうしましょう」
「放っておけ、」
久々知は取り合おうともしない。伊助が、でも、と涙目で久々知の袖を引いた。
「タカ丸さんは信じちゃったみたいなんですう!それで、もうここにはいられないから作法委員に入れてもらうってえ~!どうしよう、先輩、タカ丸さんがとられちゃったあ!!」
これにはさしもの久々知も眼をむいた。「なっ、なんだとお~っ!?」
煙硝倉に大人気なく怒声が響き渡り、三郎次は先を思いやって溜息をついた。
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