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よいこわるいこふつうのこ

にんじゃなんじゃもんじゃ
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ふがいないや

優タカって、幼馴染から恋人になる瞬間を妄想すると萌えで禿げ上がりそうになる。
友達から恋人とはわけが違うよね、だって近所のいいお兄ちゃんが悪いお兄ちゃんになっちゃうんだもんね。
はあはあ。

そっと身体を横たえられて、厚みのある指を柔らかい髪に梳き入れて、頭を捧げ持つように両手のひらに抱え持つ。あくまでも優しく接吻の雨を降らされて、タカ丸はくすぐったくて咽喉を鳴らして笑った。笑った先から泣き残しの涙が零れて、優作はそれを舐め取ると、やはり瞼に、頬に、なんども触れるだけの優しい口付けを落とした。
「優ちゃん、くすぐったい・・・!」
どうしても、タカ丸は笑ってしまう。瞳を開いて優作を見上げたら、自分を見下ろす彼の瞳があまりに優しかったので、むしろ心臓が痛んだ。優作はふいにタカ丸から立ち上がると、背を向けた。タカ丸はもそもそと起き上がって、畳に尻をつけたまま優作を見上げる。
「・・・優ちゃん?」
「ごめん、タオルケットをもってくるよ」
「いいよ、俺、平気だよ」
優作が何故そんなことを言い出すか、すぐに見当はついた。畳の上で行為に及ぶと背中がひどく擦れるから、それを心配したのだろう。どこまでも優しい男だ、と思う。優作は、「なんだか段取りが悪くてすまないな、もう少し、ムードを出せたらよかったんだが」と頭を掻いて苦笑をする。タカ丸も、くしゃりと顔をつぶして笑った。
「俺、始める前のこういうそわそわした雰囲気好きだよ。なんか、いたずらする前みたいでドキドキする」
優作が、すぐ戻ってくると言い置いて、部屋を出て行ってしまう。タカ丸は、所在無げに、部屋を見渡した。
どうしようか、と思う。
優作がわざと時間をつくってくれたのはわかった。別に、シャツを着たままだって行為に及べるのだし、そもそもタオルケットなら居間の押入れにも入っている。タカ丸は知っている。たぶん、優作が戻ってくるまでの数分間は、タカ丸に与えられた最後の逃げ道だ。今ならまだ戻れる、リセットできる。やっぱり嫌だといたら、優作は嘘をついてでも気にしないと笑って、タカ丸を逃がしてくれるだろう。
最後まで決心をつけがたく、タカ丸は、そんな自分を心底嫌らしいと思いながら、食事のときに優作に用意したビールの缶がそのまま卓袱台の傍らに置かれているのを発見して、手に取った。プルトップを引き抜いて、ぐいぐいと煽る。
「こら、未成年」
背中で優作の声がした。タカ丸が苦笑する。
「・・・気つけ。なんかどきどきして心臓止まりそうだから」
「タカ丸くん、」
優作が気遣うように名前を読んだ。タカ丸は優作が重たいほどに感じているだろう責任感を、冗談で混ぜっ返してしまう。
「ふつつかものですがどーぞよろしくお願いします!・・・って、なんか違うか。ははは」
優作が、タカ丸を抱きしめた。タカ丸は一瞬身を硬くしたが、すぐに努めて力を抜いて、優作に全身を預ける。広げたタオルケットの上に横たえられて、丹念な愛撫を受けていく。泣き声みたいな変な声がでて、俺は男だし気持ち悪く思われないかと余計な心配をして、けれど、見上げた優作と目があったら、よっぽど不安そうな目でもしていたのだろうか、大丈夫だと繰り返し囁かれて、口付けを貰った。こんなに好きな人と出会ってしまったのは、自分にとって一番の幸せだし、不幸だ。タカ丸は心の底からそう思う。

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勝利の女神

19 チラリズム(4年女体化)

真夏の日が当たってグラウンドの土もどこか白い。学園の野球部員たちは、自分たちの応援団をみて次々と仲間たちと顔を見合わせて騒いだ。
「な・・・なぜあいつらがここに!?」
「え、あれ、どんなサービス?」
「学園長が急に編成したらしいよ」
ひそひそと騒ぎあっているのは他校も一緒で、「なに、忍術学園ってあんなかわいい子そろってんの?レベル高くね?いいよなー俺らのムサい学ラン応援団よりずっと目の保養」なんて囁かれている。応援席には、話題の原因となっている4人のチアガールたち。
明るい茶髪のストレートヘアをポニーテールにして、スポーツドリンクをあおっているのは4年の田村だ。自分のことを自分でアイドルといってしまう痛さはあれど、黙っていればすらっとした足のラインがかわいい、キュートな少女だ。その隣では、高貴な顔立ちをした平が振り付けについて隣の少女と真剣に話し込んでいる。彼女もたいそうな自信家でプライドが高く、話しているとついて行けないことも多いのだが、黙って遠くから眺めているぶんには、高飛車も表にあらわれず、ただ胸のでかい美人だ。胸は大きいのに、腰や手足はすらりと細く、その絶妙なバランスがどこかなまめかしい。それから、ひとり青いベンチでくつろいで、どこから持ってきたのか骨付きチキンを囓っている少女は綾部。組んだ足も胸の形もむっちりと胸がついてなんともコケティッシュだ。
後ろで束ねたポニーテールもふんわりとウエーブがかって女の子らしい。彼女も、口を開けば不思議ちゃんここにきわまれりで、周囲を圧倒する人物なのだが、黙ってたってくれている限りでは天使だ。
最後に、4人の中で一番背が高いのが斉藤。他の三人より2歳も年上なだけあって、身体も大人っぽく育っている。まぶしい金髪と独創的な髪型、整えられた眉など、一見するとギャル系なのに、ふんわり微笑んで平らから真剣そのもので振り付けの確認などしてもらっているのがひたむきで頼りない感じで、かわいい。チアのスカートが短いのが気になるのか、スカートの裾を下げようと必死で手で押さえているのがまた、恥じらいたっぷりで良い意味で男を裏切ってくれている。
「俺右」
「俺一番左」
「俺巨乳のやつ」
「いやいや、金髪だって」
「えー、あの肉食ってるやつもかわいくね?」
「あいつなんか変わり者って感じするからなあ」
他校の男たちに好き勝手評されているのをきいて、虎若は鉢屋を見上げる。彼は鉄道模型研究会なのだが、スポーツ万能なのでいろんな試合に引っ張りだこなのだ。鉢屋は口笛を吹く。
「おー俺たちの勝利の女神だな。縁起がいいや」
「どうしたんでしょうか、うち、チア部なんてないのに」
「さあ、学園長先生の思いつきじゃね?」
虎若が応援席へ駆け寄ると、斉藤がしゃがみ込んで微笑んだ。
「応援に来たよ。虎ちゃん、がんばってね」
「タカ丸さん、紫のチア衣装いいっすねー」
後ろからついてきた鉢屋の指摘にタカ丸はぷくうと拗ねたみたいにほほを膨らませる。
「何にもよくないって。こんなの恥ずかしいだけだよ」
「似合ってますよ」
言ったのは綾部だ。後ろからぎゅうっと抱きしめて、「タカ丸さん柔らかい」と背中に頬を押しつけている。タカ丸は頬を上気させた。
「綾部の方が似合ってるよ」
鉢屋は田村と平にも声を掛けた。「よー、ご苦労、我がアイドルたち」
「先輩、試合がんばってください」
ぺこりと頭を下げる礼儀正しい平の横で、田村が「アルバイトなんです」と口を挟む。
「先輩、絶対試合勝って下さいね!」
「勝ったらお前らに幾らはいるの?」
「一万です」
悪びれず答えたのは綾部だ。タカ丸は苦笑気味で、「鉢屋くん、がんばってね」と応援を重ねる。
「必ず勝つための秘策を用意してますから!」
田村と平が意気込むのに、虎若は嫌な予感を胸に抱いた。
かくて試合が始まり、順当に進んだゲームの末、優勝候補とぶつかった。相手の強さにさしもの学園野球部にも敗戦の匂いが漂った。そのときだった。
「N・I・J・Y・U・T・U!忍術学園☆ファイトッ!」
4年の女神たちが紫のチア衣装を身にまとい、ポンポンを投げ、大きく回し蹴りした。試合に命をかける球児たちの目に焼き付けられたるは、太陽よりまぶしき白パンツ――。
「優勝がんばれ!忍術学園☆」
その日、空に高く血しぶきが上がり、それはそのまま夕日となって試合は終わった。

「あはは、超ウケるんですけど、うちのガッコ」
腹を抱えて笑い転げる鉢屋の足下では、鼻血の出し過ぎで参加停止になった部員たちが、苦悶とほんのちょっとの喜びをない交ぜた表情で転がっていた。
「鼻血で予選敗退とか、ないんですけど――」

男の子女の子

  20     日傘(竹谷女体化)
 
孫兵は日焼けしない。日焼けできない性質なのだ。長時間太陽に当たっていると白い肌が火照ったみたいに真っ赤になる。そうして、夜眠れないほどに痛くなる。だから真夏の孫兵にとって、日傘は必需品だ。黒いレースの日傘は同じ肌質を持っていた母親から譲り受けたもので、縁を金糸で薔薇の刺繍がしてあるのだった。女物ではあったが、店で求めるよりは品がよく、ごてごてとレースなどで飾り立てられていないぶんだけ、気に入って使うことができていた。
生物委員は真夏になると、炎天下の中生き物の飼育に追われるから人気がない。好きでやっているのは孫兵と五年の竹谷くらいのものだろう。竹谷はもともと生物が特別好きだと自覚していたわけではなかったそうだが、一年のとき何の気なしに生物委員になって、その大変さに一度と遠ざかった。
「だけどさ、次におれのかわりに生物委員になったやつがひどかったんだあ。面倒くさいってんで、何度か餌やりとか小屋の掃除とかさぼったらしくてさ、ほんと、弱い生き物なんかどんどん死んじゃって。それから、もう任せておけないってんでなんでだかずっと生物委員やってる」
およそ女の子らしくないがさがさごわごわした髪をかき混ぜながら、竹谷はそういって笑った。その飾り気のなさが孫兵は好きだった。
竹谷は、男女問わず色んな生徒から「女じゃない」なんてからかわれている。化粧もしないし、日焼けして真っ黒な肌をして虫たちの世話をしている。眉は整えなくても良いかたちを保っているけれども、少し太い。目鼻立ちがはっきりしているから、飾り立てればずいぶん美人になるはずなのになあ、と惜しむ声を漏らす男たちを孫兵は何度か見かけた。そんな風評を竹谷は知ってか知らずか、今日もジャージにTシャツという格好で校内を虫取り網片手に走り回っている。
日傘を差して毒蛇のジュンコの日光浴にグラウンドへ出たら、わきにある菜園から自分の名を呼ばれるのが聞こえた。
「お~い、孫兵!」
振り返ると、竹谷がしゃがみこんで、箸で一匹ずつ青菜についた毛虫を捕まえている。
「チュン吉たちの餌取りしてんだ」
ジリジリと焼け焦げるような蝉の声が、周囲の木々から響いてくる。竹谷が腕で乱暴に顎から滴る汗をぬぐった。その黒さに孫兵は驚く。
「いつから外にいるんですか」
「いつ・・・そういや午前くらいからかな」
「帽子もかぶらずに?」
「ああ、うん。帽子はさあ、被ると視界が狭くなるだろ、それが嫌でさあ」
「誰かにやらせたらいいのに」
「チビたちはこんな暑いのに仕事させたらかわいそうじゃん、プール行かせた」
「じゃ、せめて僕を誘ってくれたら」
「孫は日に弱いだろ。今日ひどく暑いしな、外出したら肌が真っ赤に火傷しちまうよ」
「でも先輩も・・・」
「ああ、おれは平気」
あっさりと竹谷が言う。あんまりあっさり言うから、孫兵は言葉に詰まった。
「日焼けは肌に良くないんですよ。それに、女性がこんな長時間日にあたってたら、体にも良くないだろうし・・・」
竹谷は、あはは、と声を出して笑う。それから、本当に、驚いたみたいに言った。
「女扱いされたのってはじめてかも。でもほんとに大丈夫だからさ、あたし女じゃないし」
孫兵はなぜだかカッとして、竹谷に向かって女じゃないとかいってきた連中みんな、殴ってやりたいような気分になった。こんなに綺麗なのに。自分を飾り立てて、ただ汚いものからは目を背けて、守ってもらうことを当然としている女を女というのなら、孫兵は女など嫌いだと思った。孫兵の思う美しさはそんなところにはない。
「馬鹿!何言ってるんですか、先輩、ちゃんと女性でしょう!」
「え、あ、はい」
「先輩が皮膚癌にでもなったら僕はどう責任を取ったらいいのか」
「いや、孫が責任を取る必要は別に」
「責任を取りたいんです」
ぎらっと鋭い視線で真正面から睨み付けられ、竹谷はただ圧倒されて頷いた。孫兵はそれから、持っていた黒いレースの日傘を竹谷に押し付けると、もっていた冷たいスポーツ飲料も一緒に渡した。
「孫兵?」
「残りは僕がやります」
青菜畑の中にしゃがみ込んで、虫たちを丁寧に取り上げていく。竹谷はそれをぼんやり見つめて、これはいったいどういうことか、と思った。長屋に帰ったら久々知に聞いてみなければ。孫兵は女の定義を間違えているのかしらん。それとも趣味が悪いのか。
 
そんな心配をする竹谷に、久々知はさも意外なことを聞かれたように目を丸くして、
「あ?何言ってんだ、ハチ、お前たいした美人だぞ」
といったものだから竹谷は思いっきりひっくり返ることになる。
「おれ、女じゃないとかよく言われるからてっきりすっかりそういうもんだと思ってきたけど」
「ああ、そりゃ見る目がないやつらなんだろ。本気にしてたのか、ハチ、ばっかだなあ。俺や三郎がどんだけお前のこと美人って言ってきたよ。友達の言うことは素直に信じろよ。あれだよ、お前、虫愛ずる姫君なんだ。伊賀崎って、あの三年の毒虫野郎だろ?ああ、そりゃお前に惚れても仕方ないわ」
ひとりだけ納得したような久々知に、竹谷は今度こそきょとんとするしかなかった。
後日、やっぱり真っ赤に日焼けして「痛い痛い」と顔を歪める孫兵に、多少の罪悪感を感じて、「薬塗ってやろうか、背中だしな、」と服をはだけさせようとした竹谷に、孫兵に大慌てで「先輩、僕男、あなたは女性!」と真っ赤な顔で怒鳴りつけられた。
「男と女って難しいもんだな」
そう途方にくれる竹谷の肌も始終ぽっぽと赤く火照っているのが、日焼けのせいでないと気づくのは、もう少し先のことだ。

君は僕の太陽だ!

 
05 太陽(浦風女体化)
夏休み中盤。八月の二週目。それまで何の音沙汰もなかった富松作兵衛から電話が入った。富松は同じ学校の同学年で、学校ではそれなりに話もするけれど、実家はお互いに住所が別だしプライベートで連絡を取ったことはほとんどない。
電話も、恐らく連絡網で調べたのだろう、宅電に掛かってきた。
「お母さん、電話―」
昼真っからクーラーの効いた部屋で、ソファに寝転がりながらDVDを見ていた。地元の学校に通わないと、長期休暇は結構暇だ。だらだら過ごしていたら牛になるわよと毎日母に小言をぶつけられている。どうやら洗濯物を乾すついでにお隣さんと話し込んでいるらしい。
「藤ちゃん、代わりに出てー」と返事が来た。
「へーい」
「女の子がへーいなんて言わないのよ」
「はーい」
宅電は二階へ続く階段のそばにある。
「はい、浦風です」
「あ、俺だけど、富松」
「え?」
富松の顔を思い出すまでに数秒を要した。言い訳させてもらえば、夏休みが始まって家に帰ったとたん、学生なんて学校のことを7割は忘れるものだ。
「お前、今俺のこと必死で思い出してたろ。ひでえやつだな」
「そんなことないよ」
「しれっと嘘つくな」
「で、何の用?」
「おい、10日に会わねえ?」
「なんで?」
「俺の地元来いよ」
「何がある?」
「えーっと、ダイエーとジャスコとつぶれかけたショッピングモール。あと川。すっげ汚いけど」
「ひとりで遊んでろ」
「わー、冷たいこと言うな友達だろ!」
「都合のいいときだけね。何が楽しくて電車で30分もかけてダイエーいかにゃならんのか。そんな罰ゲーム私は嫌です。クーラー効いた部屋で寝るわ。じゃーね」
「あっ、じゃあ、パフェおごる!お前バケツパフェ食ったことある?俺の地元のカフェにあるんだよ。おごる、いや、おごらせてください、お願いします」
「何時にどこ集合?」
 
 
 
行ってみて驚いた。てっきりふたりで遊ぶのかと思っていたら富松の傍らにはそれぞれ二組のカップルがあったからだ。電車から降りて人ごみに流されるようにして小さな街の駅前に吐き出された。途端、富松と話していた遊んでるふうの男が顔を上げて「お、愛しのカノジョがきたみたいだぜ」とにやにや笑って富松の肩を叩いた。富松は苦笑してそれを否定しない。そこでようやく、浦風は自分が何に利用されたかを知ったのだった。
ちょいちょいと富松を駅構内のコインロッカーの陰に呼びつける。
「なんだよ、ふたりっきりがいいって?仕方ねえやつだなあ」
などと鷹揚に言って悠々と浦風の後をついてきた富松だったが、ふたりきりになった途端、「申し訳ありませんでした」と真顔で深く腰を折った。
「地元の友達に調子こいて彼女いるっていっちまってよお、んならトリプルデートしよーぜみたいなノリになったんで、俺も焦ったんだよ」
「孫兵のほうが近くに住んでるでしょ」
「メールしたら一言“死ねば?”ってきた」
「数馬は?」
「死んでも嫌だって」
「嫌われたもんね」
「な、一日でいいんだよ!バケツプリン奢るからさあ!お願いします、今日一日だけ俺の彼女になって!」
身も蓋もないプライドを捨てた富松の依頼に、浦風は溜息をつくしかなかった。
とはいえ彼女役といっても何をしたらいいものか。浦風は富松の横をビニールサンダルをぺたぺた鳴らしながら、ぼんやり考えていた。浦風はまだ誰とも付き合ったことがなかった。学園に入学するまでは、美人だといってちやほやされてもいたけれど、学園に入ってしまえば浦風以上の美人はそれこそはいて捨てるほどいて、浦風は自分が美人といわれていた過去を忘れることにした。彼女が入った作法委員会はたいそうな美男美女ぞろいで、ひとつ上の綾部先輩などは男のくせに浦風以上の美貌の持ち主なのだからもう笑うしかない。作法委員会の中では浦風だけ「ふつうだね」といわれることにももう慣れっこだ。浦風だって自分のことを「ブス」だと思ったことはないが、あんな平生からきんきんしゃらしゃらした人物たちと接していれば自分が美人であるなんていう誤解もいまさら生まれてこない。
富松の友達の一人だという遊び人風の男が振り返ってきた。
「ねえ、後でふたりで抜けださない」
と耳元でこっそり打ち明けられて顔を上げる。
「え、だって彼女はどうするの?」
「俺、浦風さんのほうが好きになっちゃった」
映画の時刻表を探していた富松が携帯から顔を上げたので、ぽん、と肩を叩いて男はまた彼女のほうへ帰っていった。「あとで合図する。ほんとは浦風さんも、富松の彼女ってわけじゃないんでしょ?」
「何の話してたんだ?」
富松が浦風を見上げた。浦風はすらりと長身だ。ちっと小さく舌打ちして、胸の前で腕を組んだ。
「ビーサンにジーンズは失敗だったかな」
「完璧にご近所行くときの格好だよな、それ。いかにお前が俺のことをぞんざいに考えているかが如実に現れてるよな」
「人生で初めて口説かれちゃった」
なんの気なしにぽろりと零したら、富松は「げ!」と声を上げ、浦風が思っていた以上に真剣な反応を示した。
「騙されるなよ、あいつ美人に対して手が早いんだ」
「んじゃ私は大丈夫じゃない?」
「お前美人だろ、自覚持てよ」
富松がお笑い芸人のような突っ込みを入れてくる。
「美人じゃないと思うけどなあ。よく作法なのに普通だねって言われるし」
「作法のきんきんしゃらしゃら集団と比べるなよ、あいつらは特別だ。人の生き血を吸って生きる吸血鬼だと俺は踏んでる」
「妄想乙。」
「とにかく!危ない男には近寄っちゃだめだからな!今度言い寄られたら俺に言え。現行犯でぶん殴る」
「穏便にね」
「ひとのオンナ口説くなんてふてえ野郎だ」
「ひとのオンナ(仮)ね」
ぼきぼきと指を鳴らして臨戦態勢に入る、武闘派用具委員長食満留三郎の後輩富松をぼんやり眺めながら、浦風は、なんだか悪くない気分だなと考えていた。あとでふたりで抜け出さない、とでも誘ってみようか。

ガラスの靴は脱がないで

竹谷祭りはリベンジするとして、女体化で「夏っぽいお題31」色んなカップリングでひたすら女体化書くというスガワラだけが楽しい試み。

14     サンダル(小松田女体化)
 
「・・・あ」
街で偶然利吉を見かけた。山田利吉二十五歳独身教育系営業職は、その日もやっぱりワイシャツを肩から背中の辺りまでぐっしょり濡らして働いていた。山田利吉独身は、イケメンでしかもえらく仕事ができるらしい。来年あたり本社勤めになって、役職がもらえるんじゃないかと噂されている、らしい。腕で顎から垂れてくる汗を乱暴にぬぐって、彼はそのまま小松田秀作に気がついて、
「あ」
と声を上げた。
「こんにちは」
と声をかけると、帳簿になにやら数字を書きつけながら、「こんにちは」とそっけなく返される。
「お仕事ご苦労様です」
「どうも」
利吉の視線が足元をじいっと見ていた。何かあるのかと考え込んで、数秒。小松田は自分のはいているサンダルに思い当たった。赤いエナメルに白の水玉が散っているミュールで、首筋の辺りをリボンのように巻きつけて結ぶ形になっているものだった。ひどくはしゃいだ格好をしている。(呆れられただろうか)と小松田は思った。別に、今はれっきとした夏休み中だし、だから平日だってどうどうとお洒落して街を歩いていたっていいはずなのだ。後ろめたく思うことはないはずなのに、それでも利吉はどう思っただろうかと気にしてしまう。イケメンでクールでバリバリの出世株の彼は、マイペースで仕事のできない小松田にすぐ呆れてしまうらしいから。小松田は小松田なりに日々を一生懸命生きているつもりなので、利吉に呆れたり馬鹿にされたり苛立った顔をされたって、彼がなぜそんなふうに思ったのか理由がまるで検討づかないのだ。
だからこの男は、私に対してならいつもなんにでも怒るのだ、と彼女は思っている。
「学園は今、夏季休暇なんです。あの、職員も。全員」
「知ってますよ、取引先ですから」
「あ、ですよねー」
「ええ」
会話はそれで止まった。利吉は仕事中だからさっさと解放してやるのが親切なのだが、小松田は他人行儀過ぎやしないかと的外れなことを考えては必死で会話を繋ごうとしている。
「この靴、先週買ったんです。かわいいでしょう、あのね、店になかったからわざわざ発注してもらったんです。最近のお気に入りで、こればっかり履いてるんです。用事がなくても、こればっかり。これしか履いていないんです」
「はあ」
「今日は、こんな靴はいてますけど、ただの買い物なんです。お兄ちゃんに、店に飾る風鈴買ってきておいでって頼まれたんです」
返事がなかった。利吉は苛立った表情をしている。利吉は腹を立てるととたんに無口になる。小松田はしまった、と後悔した。吉野先生いわくどうにも自分は空気が読めない性格らしい。今もたぶん、空気を読めていないのだろう。だけど空気ってどう読むのだろう。ふたりの間に今、どんな空気が流れてるっていうんだろう。それが読み取れたら、利吉は笑うのか。土井先生にするみたいに?
「ただの買い物なんです」
と、もう一度、小松田は繰り返した。言い訳をしているようだと自分で可笑しかった。利吉に返事の間を与えずに言葉を続けた。
「あの、お仕事お疲れ様です。利吉くんは偉いって、土井先生が昨日、褒めてみえました」
「そうですか」
利吉はちょっと微笑んで、それから「その靴、あなたによくお似合いですよ」と褒めた。
小松田は、嬉しかった。利吉はデキるスーパーモテモテエリートサラリーマンなので、たぶんお世辞なんてハリウッド並みに上手に言えるんだと自分に言い聞かせて、舞い上がる足を地につけさせて、それでもやっぱり嬉しかった。
そしてどこかで、利吉をわかりやすい男だと笑ってやりたい気持ちが起こった。山田利吉独身くん、わたしはあなたが独身の理由を知っているんですからね!
土井先生なら絶対履かないような馬鹿っぽいミュールの踵を高く鳴らして、小松田は「お仕事お疲れ様です」ともう一度頭を下げて分かれた。空気が読めたから何なのだ。空気を読んだって、利吉は秀作には微笑まない。だけど秀作は、お世辞でだって利吉に褒めてほしいと思っている。
つまりそういうことだ。恋をしたら女は、空気なんか馬鹿正直に読んでいたら闘っていけないのだ。

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