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年下の男の子

メールとかお返事とか、ためちゃっててすいません。

食満←富松で書きたいとこだけ。

 

たとえば。
上下関係とか礼儀に厳しい留三郎先輩が、「作兵衛、お前だったら俺を名前呼びしてもいいぞ」といってくれたときの嬉しさを、俺は恋だと思った。俺は我ながら色恋沙汰に疎いという認識があるので、やれ好いた惚れた愛だの恋だのの詳しいことはなんにも知らねえが、それでも「恋というのはいっしょにいてそれだけで嬉しくて楽しくて笑ってしまうような相手を見つけたことをいうんだ」という数馬の言葉を信じれば、俺はやっぱり留三郎先輩に恋をしていたんだと思う。俺は留三郎先輩と一緒にいるといつも心臓のあたりがほこほこして安心していたし、わくわくどきどきして何を話してもどれだけ一緒にいても退屈することがなかった。
でも、結論からいえば、俺の恋は叶わなかった。
留三郎先輩には俺が先輩のことを好きになるずっと前から、とっくに付き合っている人がいたのだった。五年の竹谷先輩だ。つまんねー話だ。好きになった人に恋人がいたなんて、ありがちでくだらなすぎて三文芝居にもなりゃしない。それでも俺は結構本気でへこんだ。めっそりへこむたびに、ああ、俺ってけっこうほんとに留三郎先輩のこと好きだったんだなと再認識して、ますます惜しいような悔しいような気持ちになった。俺の同級生に伊賀崎という男がいて、美形で成績優秀の、毒虫をこよなく愛する変な野郎だったが、こいつは竹谷先輩が好きだった。
伊賀崎は俺に、悔しいか、というようなことを聞いた。留三郎先輩が竹谷先輩と付き合っていることを俺に教えたのは伊賀崎だった。俺が頷くと、伊賀崎は、フ、と鼻で笑ったようだったので、俺は腹が立ってお前は悔しくないのかよと聞いた。孫兵は、
「奪えばいいのさ」
といった。
「奪えばいいんだ。私は、竹谷先輩のことを諦めていない。あの人は、後半年で卒業してしまうからそうしたら私にだってチャンスがめぐってくる」
「そんなことしていいのかよ。人のものを奪うだなんて」
「恋に、いいも悪いもあるものか。気持ちの通じ合ったものが正解なんだよ。それ以外はみんな間違ってるんだ」
なるほど伊賀崎の考え方はこの世のわずらわしい常識が絡み付いていることもなく、シンプルだ。こいつは頭がいいんだなと俺は心底納得した。それでも俺にはできないと思った。留三郎先輩が卒業してしまうまでの間、竹谷先輩はもちろんずっと傍にいる。ふたりの間をひっかきまわして留三郎先輩と気持ちが通じ合ったとして、俺は竹谷先輩とどう向き合っていけばいいのだろう。俺は、竹谷先輩のことだって、好きなのだ。だからこんなにも参っているのではないか。
伊賀崎は俺の迷いを、「その程度の気持ちなら、自分が諦めるのが一番いいな」といった。その程度、なんて言われて、馬鹿にされたと思ったが、伊賀崎の深く強固な情念に比べれば確かに平和ボケしていて、気楽なことこの上ないという自覚はあったので、俺は黙っていた。

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