忍者ブログ

よいこわるいこふつうのこ

にんじゃなんじゃもんじゃ
MENU

ENTRY NAVI

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

春と修羅

考えていたオチが変わったので、「子どもが寝たあとで」改題。内容は続きです。


こんなことがあった。その日も竹谷は後輩を連れて用具倉庫に遊びに来ていた。あまりに天気が好かったので、食満は倉庫にこもりきりでいることをなにやら不健康だと感じて、大きく伸びをしながら、どっか遊びに行くかあ、と言った。それを聞いた一年生たちは大はしゃぎして、ピクニックだあ、とか、食堂のおばちゃんにおむすびをつくってもらおうとか、目を輝かせてぴょんぴょん飛び跳ねるので、食満は自分で言い出しながらちょっと驚いて、竹谷を見た。そうしたら、竹谷はくすくすと嬉しそうに笑って、「みんな先輩と出かけるのが好きなんですよ」と言った。それから、「よかったな、一平!」とどこか間の抜けた顔つきが憎めない後輩の頭をわしわしと掻き混ぜた。
裏裏山までみんなで歩いて、頂上でおむすびを食べた。一年生たちがかくれんぼを始めたので、食満と竹谷は青草の上に尻をついて、それをぼんやりと見ていた。風が気持ちよい日だった。そよそよとかすかな風が、柔らかく頬を撫でては後ろへ流れていった。蒼い空は高くて、綿をちぎったみたいな雲が流れていた。食満は、のんびりとした気持ちで、今の自分を取り巻くいろんなことを忘れた。たとえば自分は忍者を目指していて、人の血の匂いを、肉の柔らかさを、知ってしまっているということ。夜の闇の深いこと。背負うべきもの。普段ならば決して忘れてはいけない、そういう重く宿命じみたもののことを、全部忘れた。自分が誰であるかということも、たいしたことではないとさえ思った。隣で竹谷が竹筒の水筒を取り出して、食満に渡した。なかには、熱い茶が入っていた。それをふたりしてこくこく飲んでいたら、竹谷が、「うまい!」と声を上げたので、食満も頷いて、「うん、うまい」と返事をした。むこうでは、きゃあきゃあと、子どもらが走り回っている。
ふいに竹谷が、「兄ちゃんは、」と言った。言ってしまってから、しまった、というような顔をして、食満を見た。食満はふいをつかれたような表情で竹谷を見返した。
「すいません」
「いや・・・」
竹谷は、食満を兄と間違えてしまったのだろう。食満は、苦笑して、それからおもむろに「ハチ、」と呼んだ。食満はそれまでずっと竹谷のことを「竹谷」と呼んでいたのだった。ハチ、とたぶん、自分がこいつの兄ちゃんならそんなふうに呼ぶだろうなと思って、その音を口から出すと、なんだか響きがまるっこいのに、胸がいい具合にざわざわした。竹谷は、ちょっと目を丸くしてから、「はい」と言った。
「なんですか」
「ハチ、」
「はい」
「いい名だ。呼びやすい」
竹谷は少し照れたようで、頬がぼうっとのぼせたようになった。


最近伊作は、夜、部屋に帰ってこない。どこをほっつき歩いているのか知らないが、委員会とか自主練というわけでもなさそうだった。食満が起きる少し前にこっそり帰ってきて、衝立の向こうに、ごろんと転がる。布団を敷く気配もない。それから間も無くして、すうすうと寝息が聞こえてくる。少し前に小平太が、夜中、文次郎と伊作はいつも一緒にいると喋っているのを聞いた。食満はそれから、伊作のいない夜の部屋が嫌いになった。衝立の向こう、しんとした闇がうずくまっていると、食満はいらいらした。伊作のやつ、うまくやったのか。素直に喜んでやれない己の度量の狭さがまた許しがたく、胃を痛めるのではないかというほど気を揉んで、苛々を募らせた。
食満は、気分の悪さで眠れない夜を、竹谷や一年生たちのことを考えて、紛らわせようとした。明日はどうして遊ぼうか、とか、子どもたちの頬の柔らかさとか、ふにゃふにゃの腕とか、竹谷の嬉しそうな顔とか、自分の名前を呼ぶ声とか、一年生を呼ぶときの柔らかい響き、「兄ちゃん、」といったときのばつの悪そうな困り顔。ハチ、と読んだときの照れくさいような表情。それらはみんな食満から何か奪うようなことはない。傷つけるようなこともない。竹谷は晴れた日の風の温度を持っている。太陽の匂いがする。
そのひかりは、食満の疲れた心を、少しだけ癒した。

PR

だって男の子だから

>>先ほどスガワラにタイトルの間違いを大変ユニークなコメントで指摘してくださった方へお礼SS。でも、44巻何も関係ない内容なんだぜ・・・嘘みたいだろ・・・。

*イケメンはエロ本なんて読まないもん、雷蔵と三郎が気持ち悪いのは許せないもんという人は、絶対に読んではいけません。

久々知は委員会の集まりだとかで帰ってこない。竹谷はひとり腹ばいになって床板に寝転がると、孫兵との交換日記を読んでいる。『先輩は、毒虫だと何が一番好きですか?僕は蝮です。毒蜘蛛も好きです。でも先輩はもーっと好きです!』竹谷は筆に墨をたっぷりつけると、隣のページに返信を書く。『ありがとう。俺も孫兵好きです。孫兵は面白い後輩だと思います。俺は虫ではだんご虫が好きです。孫兵は、犬では何が好き?俺は、柴犬。▼・ェ・▼←三郎に教えてもらった犬の絵。』
そんなのんびりした時間をすごす竹谷の静寂は、ぴしゃーん!と鋭く開かれた障子によって壊された。障子を開いたのは三郎だった。竹谷が顔を上げると、三郎はにんまりと笑って、「ハチ、俺天才!今度買った春画大アタリッ!!」と両手でブイサインを作った。竹谷は嬉しそうに笑うと、満面の笑みで、上体を起こした。
「タイトルは!?」
「真夜中のくのいち乱舞~霞扇でうっふん~」
「や~らし!」
「とかいって竹谷くん、ほっぺたゆるんでるよ~。見たいんでしょ、見たいんでしょ~」
「鉢屋くんったらえっち~」
にやにやしながらふたりして鉢屋の持参した春画本を開いた。豊満な女房がくんずほぐれつしている絵がばばん!と思春期の少年たちの眼前に広がり、強い刺激を与える。
「おおっ!これは凄い・・・」
「だっしょ、だっしょ?このページとかマジ凄いんですよ先生、ほらっ!」
「うお~っ。これはやばいでしょ~おっぱい丸見えでねえの!」
きゃっきゃっ、と黄色い声を上げて喜ぶふたりの背後から、「秋の新作か」とクールな声がした。ふたりは、足音がなかったために、背後の気配に気づかなかったのであった。振り返ると、そこにはい組の優等生久々知がたっていた。彼は委員会の後そのまま風呂に入ったのか、寝巻き姿からほこほこ湯気を立たせてふたりの間から春画本を覗き込んでいた。
「見事に清純派の女房ばっかりだな。三郎、お前の趣味、ほんとわかりやすいよな」
「何で俺のってわかるのよ」
「ハチは巨乳のしか買わない」
「おっぱい好きで悪かったわねえ!」
久々知は風呂あがりの豆乳をごくごくと飲み干しながら、天井板をずらして中を探った。ほどなくして、ばらばらと何冊かの草紙が落ちてくる。それは、彼の所有の春画だった。
「俺もいいのがある」
「あっ、この間見せてもらったやつか、あれは凄い」
「兵助の好きなやつたいていお姉さん系だろ。俺年上興味ないもん」
舌を出す三郎の方を、竹谷が叩いた。
「いや、三郎、これは見といたほうがいいぞ。ほんと凄いから」
「なんなのよ~タイトルは何~?」
「”美女と蛸壷”」
「な・・・なんなんだ・・・シュールなのに異様に卑猥な妄想を書き立てるそのタイトルは・・・。さすが兵助・・・俺たちはお前のむっつりスケベに勝つことは出来ないのか・・・!?」
「ハチはなんか買ってないのか」
久々知に促され、竹谷は、「今食満先輩に貸しててさあ、」と頭を掻きながら、文机の裏に貼り付けてある本を取り出した。九々知と鉢屋が覗き込む。
「「・・・”おっぱいがいっぱい”」」
ふたりでタイトルを読み上げた後、顔を見合わせ、それから竹谷をふたりしてぎゅうっと抱きしめた。
「俺、ハチのそういうところ好きだよ!」
「よし、よし、ハチは一生そうでいてくれな」
「な、なんだよその生ぬるい感じはよ~!!」
竹谷がわめくと、三郎は竹谷の文机の裏を覗き込んだ。
「チッ、もうないか・・・」
「なに探してるんだよ」
「食満先輩から何か借りてないかと思って」
「借りてるけど、見せない」
「え、なに、やっぱロリコン系!?」
「鉢屋、仮にも俺の好きな人のことそんなふうにゆーな!」
ぷくう、と頬を膨らませた竹谷に睨まれて、鉢屋は素直にごめんと謝る。呆れた表情の久々知が、溜息をつくと、竹谷は、そんな彼を振り返って「斉藤さんはどうなんだ」と尋ねた。
「さあ」
「エロ本の貸し借りしねーの?」
「しない」
「猥談しねーの?」
「一回話振ったけど、にこにこ笑いながら、”兵助くんも若いってことか~。うふ、なんかかわいいねっ”って言われて終わった」
「大人だ・・・」
「そこで食い下がるなよ、もっと積極的に下トークぶちかましてこうぜ!」
熱く語る三郎に、久々知は冷静な表情を向ける。
「っていうかさ、そんなこといわれたら食うしかないだろ」
「は、何を?」
「本人を」
竹谷と鉢屋は黙り込み、顔を見合わせる。((男だ・・・))
「そういや三郎、雷蔵とはあんまり猥談しないよな」
「ばかっ!雷蔵はピュアな天使なんだよっ!煩悩にまみれた薄汚い野郎どもと一緒にするんじゃねえ!!」
三郎の言葉に、久々知と竹谷は白い目を向ける。雷蔵は、三郎の居ないところではわりとばんばん下ネタを飛ばしていくのだ。特に、彼が「AVの冒頭に必ずある女優のインタビューの部分は本当に心の底から不必要」と語るときの真剣な瞳は、聞く人を頷かせる強さを持っていると有名である。
三人でぎゃあぎゃあと話し合っていたら、ノックもなしに部屋の障子があいて、雷蔵が顔を覗かせた。
「三郎、もう寝よ~」
「あ、うん、寝るー」
「雷蔵、今エロ本見せ合ってたんだけど、お前もなんかお勧め持ってる?」
竹谷が尋ねた。三郎が、「雷蔵を汚すんじゃねええ!」と怒鳴りつける。雷蔵はしばしの逡巡の後、にっこりと微笑んで言った。
「エロ本より、実際の女の子が一番ってね」
それは後光が差すかのような清々しい、悟りきった笑みだった。久々知と竹谷は、自慰の後の、理性を取り戻してしまった、あの悟りをひらいた後のような心の平安を感じた。
「いやあああ!雷蔵の不潔ううう!俺だけって言ったじゃない、ばかあ!ばかあ!ばかあ!浮気しないよって俺を抱きしめて囁いてくれたのは嘘だったの!?もう誰も信じられないいいい!恋なんて、愛なんて、あああ!」と泣き喚いて伏せってしまう三郎を肩に抱えて、雷蔵は、「冗談だよ」とわらった。そうして、竹谷と久々知に手を振っていってしまう。
泣き喚く三郎があまりにうるさいものだから、雷蔵は、三郎の耳元で、
「こら、泣くのは僕とのベッドの中だけって約束だったろ、子猫ちゃん」と囁いて、三郎をうっとりさせた。そんな後姿を見て、久々知と竹谷はただただ拝むしかなかったという――。

すごいだろ、これでお礼って言い張るんだぜ・・・

44巻感想文

44間読了。ずっとにやにやしながら読んでいたので、頬の筋肉が痛いったら・・・
そうだな・・・とりあえず何からいったらいいのか・・・はやく45巻が読みたい。
まさかの幸隆さまが・・・ああ・・・。最後の次巻予告にすべてもってかれた。
鉢雷可愛すぎる。食満先輩武闘派過ぎる武器怖すぎる。怪士丸可愛すぎる。鬼蜘蛛丸さん×カメ子でご飯十杯は軽くいける。鉢雷可愛すぎる。与ヱ門×キクラゲ城の若様に興味津々。鉢雷可愛すぎる。利吉さんかっこよすぎる。魚食べてる伊助可愛すぎる。鉢雷かわいry。鉢雷ry。はちry。はry

---------- キリトリ -----------

>>せんせい!ほんとだ!タイトル間違ってました!ありがとうせんせい!どうやらスガワラはよっぽど45巻が読みたかったらしいよ・・・

イギー・ザ・デザートドラゴン・オブ・ニルヴァーナ

みんな一年だけ進級してます。
孫竹で性描写あるので注意!


いつからだか大きなやもりが一匹、竹谷のもとをついて回るようになった。教室にも厠にも寝所にもついてまわる。最初に気づいたのは、孫兵だった。竹谷は、身体からそういう匂いか、蜜でも出しているのか、不思議と蝶に好かれる。蝶はいつも竹谷の身を守るように、ときに甘えるように、彼のまわりをふわふわと飛び交っている。孫兵はそれを、仕方のないことと思い黙認してきたが、そのやもりだけは許せなかった。それは、いつでもどこでも竹谷についてまわるからである。彼のそばを片時も離れないいじましい蝶たちですら、寝所の竹谷にまでは遠慮して傍に控えようとはしないのに!
「また居る、」と眉根をひそめて後ろを振り返ると、竹谷も歩みを止めて、「ん」と振り返った。ちょろり、と尻尾がひるがえり、脇の茂みにかさこそと何かが隠れる。「卑怯ものめ」と孫兵が憤慨しながら呟くと、竹谷が、「やもりか」と言った。
「ここ最近、いつも先輩についてまわっています」
「そうだったのか」
「追い払いますか」
「そうもいかんだろ、やもりだし」
やもりは、”家守り”に音が通じるから無碍に出来ないのだった。孫兵はふんと鼻を鳴らした。竹谷が背中をひるがえして歩みを再開すると、また、ちょろりと頭を出してちょろちょろとついてくるのが、孫兵には疎ましく感じられた。その翌日になって委員会へ行くと、竹谷が、孫兵に向かって苦笑した。
「参ったよ」
「どうしたんです」
「昨日のやもりな、寝所へ入ってきたんだ」
「え、」
孫兵は慌てて竹谷の足元に視線をめぐらせる。孫兵の怒りを被ることを恐れるように障子の隙間からひょっこりと小さな頭だけを出していて、孫兵は、その姿が無性に憎らしく、鋭く睨みつけた。途端に、頭は引っ込んでしまう。小さな気配は、部屋から少し離れたところまで移動して、そこでまた止まってしまう。どうあっても竹谷のもとを離れるつもりはないようだった。
「同室の久々知が、じっとこっちを見ているふうなのが気になって眠れないって、珍しく神経質なことを言うから、手のひらで掬って部屋の外へ出したんだ。そうしたら、夜中になって、久々知が俺を起こすだろう、なんだと思ったら、やもりがさ、俺の寝巻きの中に入り込んでやがるんだな。久々知は俺がやもりをつぶさないように、掬って部屋の外に出そうとしたらしい。そうしたら、ちょろちょろと俺の体中を走り回って逃げるんだと、それで、なんだか気色悪くなって俺を起こしたんだ。それからはふたりしてやもりとの追いかけっこさ。いなくなったと思うと、寝所の隅やら俺の寝巻きの間からちょろちょろと顔を出すんだ。呆れたよ」
孫兵は溜息をつくと、「今も隣室に居ますね」と言った。「うん」と竹谷は頷く。
「先輩って、蝶だけじゃなくやもりにも好かれる性質だったんですね」
「虫には好かれる性質だと思うけど、こんなにまでついてまわられるのは、蝶以外じゃ初めてだよ」
「ジュンコに喰わせましょうか」
「や、でもなあ、何をしたってわけでもないし」
孫兵が首に巻きつけた毒蛇をすらりと細長く白い指で撫でると、竹谷は、「許してやろうよ」と誘うように笑う。
孫兵はそれで、しかたなくやもりを許すことにしたのだが、それでも彼の行き過ぎた愛情にやきもきしてしまうのだった。

ある夜は、孫兵は竹谷に呼ばれて彼の部屋で眠ることになった。それは孫兵が実習から帰ってきた晩で、初めて人の死に触れた夜でもあった。遺体の検分の仕方の実習で、死臭に吐き気がした。人の死体は、腐ると、虫たちにはない独特の臭いを発する。成績優秀の孫兵は、淡々と実習を終えたが、帰り道に林道で独り吐いた。孫兵以外にも、おばちゃんの料理を戻さなければいけなかった生徒は何人も居たらしい、教師たちも毎年のことでそれをよく理解していて、その日に限って現地解散だった。孫兵は、戻りたくない、戻りたくないと思いながら寄り道する気力も逃亡する元気もないままに忍術学園へ戻った。井戸水で口をすすいで、今日はもう寝てしまおうと顔を洗っていると、六年の久々知兵助が歩み寄ってきた。
「伊賀崎、お前、今日は竹谷の部屋へ行って寝ろよ」
「え、」
「布団はもう敷いてあるから」
久々知はそうそれだけ伝えると、さっさと五年の長屋へと消えてしまった。孫兵は、こんなに弱った夜に竹谷に会いたくないと思ったが、仕方なしに彼の部屋を訪れた。竹谷は、菜種油に火を灯してその明かりで草紙を読んでいたが、孫兵が来ると、顔を上げてそれを閉じてしまった。
「待っていた、孫兵。今日は疲れたろ、寝よう寝よう」
孫兵がうんともすんとも返事をしないうちから、竹谷はがばっと孫兵を布団で包んで、自分のもとへ引き寄せた。ぎゅうと抱きしめられると、竹谷の規則正しい心音が聞こえて、孫兵は泣きそうになった。生きている人が隣にあって、体温を分け与えているのがどんなにか嬉しかった。
竹谷はさっさと菜種油の火を吹き消してしまった。部屋に、静寂と闇が訪れた。それは柔らかで暖かく、真綿のように二人を包んだ。
「孫兵、」
と闇の中で竹谷の声が優しく孫兵の耳朶を打った。竹谷の身体からは、太陽と草いきれのにおいがした。孫兵は安心して、ほう、と溜息を吐いた。
「俺も4年のとき、実習あけに先輩から同じことをしてもらったよ」
それは、去年卒業した食満留三郎のことだろうと孫兵には知れた。竹谷と彼は、懇意にしていたと聞く。こんなときにそれをいうなんて、この人はひどい人だなあと思った。それでも、それを詰るには孫兵はあまりにも竹谷のことを愛し過ぎていた。俺が、勝手に、好きになっただけなのだ。
「先輩、あなたのことが好きです」
息のようにかすかに吐いたら、竹谷は「ん」とどっちつかずの返事をした。
孫兵は、そろそろと竹谷の寝着の帯もとを緩めると、胸元から冷たい手を這わせた。竹谷の身体が小さく震えて、しなやかに反れた。孫兵はそのまま赤い舌をちろりと出して彼の胸の飾りを舐った。あ、と小さく竹谷が息を零した。かりりと歯で先端を噛むと、また、あ、と声が零れる。それが楽しくて、孫兵は子供用な無邪気さで執拗にそこを責めた。あ、あ、あ、とあえかな悲鳴。自分を包み込んでくれた大きな存在が、こんなふうに自分の腕の中に納まってくれている事実は、孫兵の胸中を確かな満足感で満たした。
竹谷を掻き抱きながら、孫兵はその晩、竹谷の中に飽くことなく己の情を注いだ。ねっとりと絡みつく様は蛇のようだった。竹谷の奥は頑是無く腰をぶつけてくる孫兵のために濡れていた。
「先輩の奥、僕でぐちゅぐちゅに濡れている」
孫兵の冷静な検分が、ひどく竹谷を辱めて、それがまた、お互いの温度を高めあった。水音を絶えず立てながら竹谷の上にのっかっていた孫兵は、視線の先にやもりを見つけた。ああ、おまえか。
孫兵は心のうちだけで呟いていた。残念だけれど、この人はやらないよ。胸のうちで囁きかけても、やもりはじいっとこちらを見つめている。竹谷ではなく、孫兵を、じっと。その瞳と対峙しているうちに、あ、と孫兵は小さく声を上げていた。
「そうか、お前は私だったのか」

朝になって、ふたりして精液で汚れきった布団に困り果てた。保健室で特別大きな盥を借りてくるから、そこで布団を洗おうと竹谷が提案して、孫兵が満足に頷きもしないうちに竹谷はびゅう、と長屋の廊下を駆け抜けていってしまった。孫兵は長屋の部屋から内庭に出ている縁側に腰掛けた。やもりの姿を求めても、部屋にも庭にもどこにも居なかった。たぶん、執着が叶ってどこぞへいってしまったのだろう。
早朝で長屋はまだ静かだったが、スーッと音もなく隣の部屋の障子が開いた。大欠伸とともに、部屋の主が出てきた。それが返送名人の鉢屋なのか、彼が好んで化けているという不破なのか、見分ける目を孫兵は持っていなかった。
「おはようございます」
と挨拶すると、ふあ、と続けてもう一度大欠伸した後に「次から長屋は止し給え、君の情熱の具合が余所へも知れるよ」と平静な様子で言われて、孫兵の体温の低い全身が、ぼうと赤く燃えた。

拍手お返事

拍手&コメントありがとうございます。相変わらずお返事返すの遅くてすみません。お返事不要の方、愛しています、コメントありがとうございます。愛しています(二回目)

>>mryan様
毎度コメントありがとうございます。相変わらずお仕事のほう忙しそうですが、その合間を縫ってユニークなコメントをしてくださってありがとうございます。更新、早いですか?楽しんでいただけているならよかったです。毎日更新できたらいいのですが、平日はスガワラも仕事から帰ってくるとバタンQで・・・ベッドの中で妄想→朝→出勤→ベッドの中でryの流れが多いのが悔しいところです。今後もmryan様に楽しんでいただくためにがんばりますよ~。

>>こちらのおかげで食竹にハマりました。~ の方
おー!同士様、おー!食竹の世界にようこそ!!(この表記、なんだかパンダみたいですね)面倒見のいいお兄さんコンビですよ、いつかぜったい保夫さんパロやりますよ!スガワラはやる気ですよ。だってエプロンですよ。お昼寝の時間に、竹谷先生が一緒にくかーって寝ちゃうんですよ。それ見て食満先生が仕方ねえなあって笑うんですよ。寝つきの悪い文次郎くんが、「食満せんせー、竹谷せんせーいっしょに寝ちゃったよ。起こさなくていいの?」って聞いたら、「そうだなあ、でも竹谷先生いまとっても幸せそうな夢見てるみたいだから寝かしといてやろうな」「あんぱんまんの夢見てるの?」「文次郎はあんぱんまんの夢見てると幸せなのかー」「うん」竹谷はくかーって気持ちよさそうな寝息立てながら、ときどきふにゃって笑う。それ見て食満は(ああ、こいつ、寝てるときまで笑うんだ)って一緒になってふにゃって笑う。夕方になって子どもたちが帰ってから、竹谷が、「俺、昼間、先生の夢見ちゃいました!あはは、」と笑うので、食満はそのときの竹谷のふにゃっていう、幸せいっぱいの寝顔を思い出して顔を真っ赤にする。――っていうところまで妄想しました。
広がれ食竹の輪!今後ともよろしくお願いします。

>>~孫平と竹谷の照れくさい関係にきゅんときました。 の方
竹谷女体化珍しいですか?!確かに、孫兵と比べたらあまり見ないかも・・・。でも、元気な女の子!って感じでなんか可愛いだろうなって思います。夏服の、シャツと紺のプリーツスカートでね、スポーツバッグもってね、スニーカーはいてね、「孫兵、おっはよ!」って後ろから背中バシン、てしてね、孫兵は私立の進学校通っててね、隣の友達が「え、誰、伊賀崎の彼女?」って目を丸くするのを、白い頬を赤く染めて拗ねたみたいに、「ん、近所の、先輩」っていうんだよね。わかります、孫兵の初恋のお姉ちゃんなんですよね、わかります。
一年の女体化も開眼したといっていただけて嬉しいです。女体化ばっかりの欲望暴走サイトですが、よろしければまた遊びに来てくださいね。

>>~次は長こへも楽しみにしてます!!
長こへ、本命過ぎて手が出しにくいです。俺・・・いつか絶対長こへ書ききってやるんだ・・・。長こへ、多そうだと思うのにいざ探すと全然取り合いサイト様に遭遇しないのはどういうわけなのか・・・やはり探し方が悪いのか・・・。小平太は本は読まないのに長次に会いに図書館通いしてたらいいと思うんだ。そんで、時々カウンターの向こうで仕事してる長次と目があって「にひひ~」って笑えばいいんだ。それ見てきり丸が(図書館でいちゃいちゃすんなよなあ)と呆れてればいいと思うんだ。
長こへもがんばって書きます!コメントありがとうございます。

>>~実は日参しております(笑)~ の方
ふおお、恐れ多いです、日参などと!嬉しいお言葉ありがとうございます。日参に耐えうる話が書けるようにがんばっていきたいと思います。こんな話読みたいっていうのありましたら、ぜひ教えてくださいね!

>>新作面白いです!~ の方
「好き好き大好き~」にコメントありがとうございます。ギャグにすると、三郎はどうしても雷蔵が好き過ぎるエキセントリックなキャラクターになってしまって、かっこいい三郎好きの方にはいささか申し訳ないのですが・・・。でも、そんな三郎にコメントいただけて嬉しかったです!新作も更新進めたいと思います。ありがとうございました。

>>ひとでなしの恋を読んで泣きました。~ の方
泣いた、なんて、もったいないようなコメントです。ありがとうございます。食満と竹谷はあれで終わると悲しいので、第二部以降に続きは考えてあります。幸せかどうかはわかりませんが・・・(´ `;)続きも早く書こうと思います。嬉しいお言葉ありがとうございました。

>>作法委員会へ向かったタカ丸が気になりすぎます!~ の方
綾タカフラグへの期待ありがとうございます!当然、綾タカです!くく→タカ←綾の激闘横恋慕を書きたくてしょうがないスガワラです。欲望に忠実なやつですみません。作法委員の怪しい雰囲気も早く書きたいです。作法委員の委員会室は、文次郎が足を踏み入れたときはその後三日三晩夏の熱病で苦しみ、食満はげんなりして戻ってきて、お供についていった富松は泣き伏してしまい、伊作は凍りつき、・・・そんな場所であることを願って止みません(タカ丸死亡フラグ)

>>~すきすきだいすきです~ の方
スガワラもすきすきだいすきですちょーあいしてます!コメントありがとうございます!くくタカと食満竹にもはまったとな!?にやにや、いらっしゃいませ、素敵CPワールドへ。くくタカはよいですぞ~。禁断の年下攻めだよ~。食満竹なんか、元気っこが優しいお兄さんにぱくっといただかれちゃうエロティックワールドだよ~。すいません、表現がキモかったですね、すいません。でも、はまっていただけて素直に嬉しいです。鉢雷も大好きなので増やして行きたいです。今後ともよろしくお付き合い願いたいです。

>>荘園すごく面白かったです!~ の方
なにやってんだこいつと白い目で見られそうで恥ずかしかったのですが、消さなくていいといっていただけて嬉しかったです。実は五年生全員ぶん考えてあったのだという馬鹿な裏話を今なら言ってもいいだろうか・・・。
ドキドキもののネタだったので、好意的なコメントをいただけてほんとに嬉しかったです!ありがとうございました。

>>小平太の話、とても素敵です! の方
ありがとうございます!小平太の話、少なくて恐縮です。もっともっと増やしていきたいと思います。コメントありがとうございました。

>>謝るんかいな! の方
な、ナイス突っ込み・・・!コメント読んだ瞬間吹きました。スガワラの得意の忍術は「スライディング土下座の術」なので、今後もこの必殺技を駆使していきたいと思っている。すみません!

>>雪子様
たくさんコメント書いてくださってありがとうございます、とっても嬉しいです!うちの久々知のことも「男前」などと表現していただいて・・・「むっつりスケベ」といわれなくて何よりです。(実はいつこうやって指摘されるかとひやひやしていました)久々知をいかに書くかに結構がんばりを注いでいるので、ほんとうに嬉しい表現でした。
モデル体験のお話も、いつかきちんとした文で書きたいなあ。雪子様のコメント見てそう思いました。ある日こっそり増えていたら、ああ、やらかしたか・・・と苦笑いしてやってください。また読みにきてくださると嬉しいです。ありがとうございました。

× CLOSE

カレンダー

06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

フリーエリア

最新コメント

[06/22 すがわら]
[06/22 すがわら]
[06/22 muryan]
[06/22 muryan]

最新記事

(04/04)
(09/07)
(08/30)
(08/24)
(08/23)

最新トラックバック

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

アクセス解析

アクセス解析

× CLOSE

Copyright © よいこわるいこふつうのこ : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]