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こんなめに君をあわせる人間は僕の他にありはしないよ22

22  作戦会議、あるいは、忍びとは。

眼前に広げられた巻物にはタカ丸に似た女が描かれている。着ている着物の豪奢さが、彼女の素性が高貴であることを訴えている。女は唇に赤すぎる紅を刷いて、強張った表情でこちらをじっと見ている。
「相手の目的は抜け忍の捕獲ではない」
と長次が重い口を開いた。忍装束の袴が脛から足元にかけてぐっしょりと血で濡れている。ぷんと赤錆びた匂いが漂っていた。その只ならぬ状態が、事態の深刻さを無言で告げている。久々知も綾部も黙り込んだまま六年の車座に混じって、中央に広げられた巻物をじっと見つめている。目の前の女から、タカ丸の片鱗を探すように。あるいは、タカ丸とは違う者である証を見つけるように。
「タカ丸の祖父斉藤幸丸は、仕えていた城の姫君を攫って逃げた。奴らはその姫君の情報を狙っている」
「そのお姫さんがこの人か」
小平太が顎で巻物を示す。食満が身体を揺らした。
「大体の事情は知れたな。この女はタカ丸の祖母で、高貴な血筋の人だ。大方、連れ戻したいといったところか」
「しかし、今になってか?生きていてももう老婆だろうに」
「年なぞ関係ないんだろう。今日までうまく逃げ続けていたというわけだ、さすがは斉藤幸丸だな」
文次郎と仙蔵は、食満の出した結論が納得いかぬらしく、それぞれに押し黙って思考している。
「幸丸殿は・・・」
仙蔵の呟きに答えたのは、久々知だった。綾部とはまた違ったクールさを持っている。タカ丸が死んだと聞かされて、もっと取り乱してもいいはずだったが、瞳は冴え冴えとした光を放って曇りがない。刺すような眼光を持っていると綾部は思った。この男は、根から忍びのものだ。仕事になると躊躇なく己を捨てられる。努力してそうなったというよりは、そうなってしまう性質なのだろう。彼の中で、「彼」であることはさほど重要なことではないのだ。誰でもなくなって、闇に溶け込む。己の任務のための道具に変えることに抵抗がない。
「本人から死んだと聞いています。学園長からも同じ言を聞きましたし、まず真実でしょう」
「祖母については聞いていないか」
「はっきりと確認したことはありませんが、おそらく幸丸殿より先に亡くなられているはずです」
「間違いないか」
「以前、本人が、“斉藤の家系は女は早く死ぬ血筋”だと」
「そうか。深く聞いてすまんな」
「いえ」
「ふたりともとうに死んでいる。なぜ今になって女にこだわる必要がある」
「知らん。女がなにかしら城の機密にかかわる情報を持っていたのではないか。女とはいえ、姫君だ、ありうるだろう」
「あるいは幸丸殿がもっていたという詮もある。まあ、いずれにせよわかることは、それを、今はタカ丸が握っているのだろうということだ」
文次郎が頷く。そうして、広げられた巻物を手に取った。
「これを相手方が奪っていたということは、だ、これが重要な機密をもつものの一つというわけだな。・・・俺ではまったく読み解けんが」
ふうと溜息をついて巻物を巻き取ってゆく。「これは俺がもつ。いいな」と短く告げ、懐に仕舞い込んだ。食満は(勝手に決めおって)と内心で舌を巻いたが、状況にそれを言い出すほどのゆとりがない。ひとまず置いて、気にかかっていることを告白した。
「俺に巻物のことを言ったとき・・・確か和歌のようなものを呟いていたな」
「和歌?どんな、」
「すまんが覚えがない」
食満に、和歌を詠むといった情緒的な遊びは無縁だ。つい聞き流してそれっきりだった。文次郎がこれ見よがしに溜息を吐く。それに食満が、また嫌な顔をした。長次が口を開く。低い掠れたような声が、一つの歌を紡いだ。
「浅茅生の篠原…」
「おう、それだ」
食満が愁眉を開いて頷く。長次が諳んじた。
「浅茅生の・・・小野の篠原しのぶれど・・・あまりてなどか人の恋しき」
「源等ですね」
久々知が視線だけ上げて長次を見遣った。
「恋の歌か」腕を組み唸る小平太の隣で、仙蔵が鼻を鳴らす。「おそらくは恋の歌に見せかけた“何か”だろうよ。この歌には本歌もある。なにかかかわりがあるやも知れん」
「忍んで貴女を恋い慕ってきたが、もはや忍びきれない。どうしてこれほど貴女が愛しいのだろう」
歌意を綾部が呟いた。まともに聞けば、それは忍びのものと彼が仕える姫君との、忍ぶ恋の、秘密裏に交わされる告白のようである。
沈黙が降りた。皆がそれぞれに和歌を手がかりに、巻物に隠されているらしい謎を読み取ろうと思考した。しかし、明確な答えの出ぬままに、「ま、俺らはこれを守り抜けばいい。謎は二の次さ」と明るく小平太が言い放ったのを一応の結論とした。
 
 
男が伸びている。穴に嵌った間抜けな男を、仙蔵がうるさいからと意識を落とさせたのだった。川べりに横たえられているのを、綾部は無言で見下ろしていた。おもむろに懐から苦無を取り出す。慣れた手つきで右手に握ると、それを振りかざした。
「殺しても死者は生き返らんぞ」
背後で声がした。
「先輩、」
綾部が振り返ると、仙蔵が腕を組んで斜に構えて綾部を見ていた。他人に干渉することの少ない男だが、多少なりとも関わりのある後輩は気になるらしい。
「殺してしまいたい」
「その必要性は?」
「・・・」
「必要もないのに殺せば、それはただの殺人だ。お前、人以下の化け物に成り下がるぞ。それでもいいならやれ。お前の気の済むようにしたらいい」
「人質が死んでも構いませんか」
「その男は使えん。私にとってはどうでもいい存在だ。任務の役にはたたんし、お前と比べたらお前のほうが私は大事だ」
「貴方のほうがよほど鬼のようだ」
「忍びなぞ、どこかが壊れていなければ到底できる仕事ではないさ。孤独な仕事だ」
仙蔵が近寄った。呆然と立ち尽くす綾部の右腕から苦無を取り上げる。腕には力が入っておらず、それは簡単に仙蔵の手に渡った。綾部は疲れたように呟いた。
「貴方がいながら何故死んだ」
「すまんな」
「こんなに簡単に死んでいい人じゃなかった」
「・・・そうだな」
綾部に頷きながらも、仙蔵は、人間に死んでいい人も、死んではいいけない人もいないことを知っていた。死の前に人は等しく平等だ。綾部も、仙蔵も、いつ死ぬか知れない。明日かもしれない。どんなふうに死ぬのかもわからない。ぼろくずのようになって裏寂しい野山で腐っていく可能性だってある。そうしてその死に意味なんてない。ただ、なるべくしてそうなるのだ。それだけだ。仙蔵が十五年の歳月を経て到達した、あまりに残酷で、優しい、寂しい生き物の摂理だった。
「綾部、泣くな」
「泣いている?私が?」
綾部はその白くほっそりとした手で己の頬に触れた。冷たい水の滴が指先を濡らす。泣くなどと、久方ぶりだった。どうしたら止むのだ。邪魔な滴だ、と綾部は指でそれを拭い去る。そうすると、次から次へと零れ落ちてきてきりがなかった。
「泣くな。忍びは人前で涙など流さぬものだ」
 
 
肝が冷えるとはこのことか、と食満は思っている。腹を撫で擦っていたら、伊作が、「腹がくちいなら薬をやろう」と微笑んだ。ふたりして川べりで足を洗っている。冬の水はひどく冷たい。伊作は長次の血みどろの忍び装束を細かく裂いている。そうして、原形を残さぬようにして、どこぞに埋めてしまうのだ。
「いや、いい。久しぶりに怖くなった」
「任務かい?君ともあろう男が、弱気なことだ」
「・・・助けるべき人を殺してしまっては、任務は失敗だな」
「まあ、そうだね」
伊作は目を伏せる。食満はまだ腹を擦っている。そこへ久々知がきた。
「先輩、作戦の決行はあと半刻後だそうです」
「そうかい、ありがとう」
伊作は人好きのする笑みを浮かべると、懐から包みを取り出した。竹で巻いた握り飯だった。
「食うかい」
「俺は結構です」
「戦の前はよく腹ごしらえをしておくものだよ」
「そうですね」
久々知はゆるく笑ったが、握り飯には手を伸ばさなかった。伊作はまた忍び装束を裂き始める。あたりに血の匂いが漂って、久々知は考えずにいようとしたことをどうしても考えてしまう。
痛かったか。苦しかったか、最期のときは。出会ってばかりの頃に、何の話をしていたときだったか、痛いのは嫌だと言ったので、忍者が何を言うと叱ってやったことがあった。タカ丸は困ったように眉尻を下げながら、「僕は臆病で駄目だね」と自嘲した。そのとき久々知は鼻を鳴らして何も言わなかったが、本当は、臆病でいいのだといいたかった。手裏剣を骨肉に刺して、血の匂いを甲斐で、全うな人間がどうしてそんなことを平気で受け入れられるだろう。あんたはそのまんまでいいんだ、そのままでいておくれ、と我侭と思いながら久々知はいつだって願っていた。
その願いはついに叶えられることはなかったが。
「久々知、平気かい」
「どういう意味です」
「君にはこの任務は酷だと思って。もともと巻き込まれただけだ、ひいたっていい」
「俺では役に立ちませんか」
「そうじゃない。つまり、辛いだろ、といいたいのさ」
「・・・別に、平気です」
「そうか。うん、へんなことを言ってしまったな、ごめんね」
「いえ」
久々知は背を向けた。その静かな背中を見ながら、食満は、「あれも哀しいやつだな」とぽつんと言った。
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こんなめに君をあわせる人間は僕の他にありはしないよ21

21.死の知らせ

綾部と久々知はすっかりお互いを倒すことに没頭をはじめてしまった。小平太はしばらく眺めていたものの、放っておいて綾部の落とし穴に引っかかった間抜けな間諜の前にしゃがみ込む。小平太が何かを問う前に、
「俺は何も知らないんだ」
と男は情けない声を出した。
「だろうね」
と小平太は興ののらない様子で頷く。学園に忍んできた者たちに比べて、この男の動きはあまりに拙い。
「誰があんたを雇ったかわかるかい」
「わからない。どこかの城の忍者隊だと言った。それしか聞いていない」
「う~ん・・・」
小平太はぼりぼりと頭を掻く。どうしたものか。長次のほうはどうなったか。頃合的に、そろそろ完了ののろしが上がってもいいはずなのに、その気配はない。ただ、豪徳寺のほうから煙が上がったから、留三郎のほうは首尾よくやったのだろう。
「俺は殺されるのか」
とすっかりおびえきった様子で男が尋ねた。小平太はちらりと男を一瞥して、あまりに小物だ、と詰まらなくなった。話す気も失せたので、何も答えずに立ち上がったら、眼前に音もなくひとりの男が降り立った。猫のような独特の身のこなしから、小平太は顔を確かめる前にそれの正体が仙蔵であることを見抜いた。
「仙ちゃん。どうしてここに」
「事態が多少ややこしくなってな。小平太、お前何をしている、後輩なんぞ連れて・・・綾部と、五年の・・・誰だ」
「久々知兵助だよ」
「ふうん」
仙蔵は自分で問うたわりに興味のまるでなさげな様子で頷くと、「仲間割れか、阿呆どもが」と呆れたように呟いた。仙蔵の一言はいつも鋭くて手厳しい。小平太は苦笑いして、何も言わなかった。色恋沙汰の横恋慕だよと真相を教えたら、仙蔵は呆れ返ってそんなやつ忍者には要らん、死んでしまえの一言くらい言いそうだった。
「それより仙ちゃん、ややこしい事態って」
「うむ、それだ。小平太、心して聞け」
仙蔵はそこまで言って少し黙った。冴え冴えとした表情に、少し憂いの翳りが見えていた。
「悪い知らせかい」
「タカ丸さんが死んだ」
背後で行われていた鍔迫り合いの音がやんだ。仙蔵と小平太がふたりしていっしょに振り返ると、綾部と久々知が呆然と立ち尽くしていた。ふたりともその顔が蒼白だ。仙蔵は、お前らにその死を悼む資格は無いとでも言いたげに酷薄そうなふたりに瞳を向けた。
「何ですって?」
「嘘でしょう」
小平太も俄かには信じがたいといった表情をしている。六年が六人も出払って、まさかの任務の失敗だ。下唇を噛んで眉を寄せる。それは、小平太の焦ったときの癖だった。仙蔵は憂えた瞳で、はっきりと繰り返した。
「嘘ではない。背中に敵の刃を受けてな、死んだ。先だっての話だ」


水から引き上げられた少年の身体は蒼白だった。雷蔵と三郎はそれを見下ろしている。原因は失血死だと遺体の傍に控える男が告げた。保健委員長の善法寺伊作だ。普段知る彼は優しい男だった記憶があるけれど、タカ丸の死を告げるその口調は、こうして凄惨な遺体を前にして聞いてみれば奇妙に落ち着き払って、どこか酷薄そうにも聞こえた。つまるところ彼は、死体を見ることに慣れきっているのだろう。彼の中で、死と感傷は結びつかないものなのだ。
「化けられるかい」
と聞かれたので、三郎は、できます、と頷いた。身体は震えない。雷蔵が傍で見ているからだ。三郎は、ひどく冷静に、対処をした。衣を返して髪を解いた。猿楽師のようにくるくると舞って、ふたたびその姿を晒したとき、そこには生きているままのタカ丸の姿があった。
「どうです」
「うん、さすがは変装の名人だ」
伊作は目を細めた。「ではふたりとも、万事抜かりなく」と続けられた言葉に、タカ丸の変装をした三郎と雷蔵が同時に頷いた。そうして軽快な足音がタッと一度聞こえたかと思うと、それきりふたりは伊作の前から姿を消した。
伊作はふたりを見送ると、そのまま視線をタカ丸に転じた。タカ丸はぐったりとして動かない。伊作は首筋の辺りを指で探ると、気付けのツボを押した。タカ丸が小さく呻いて、明るい色の瞳を見開く。口がちいさく動くのだが、言葉にならない。枯れたような息がひゅうひゅうと秋風のように咽喉を鳴らした。伊作は上半身を抱き起こすと、耳元で囁いた。
「無理に喋らないで。失血が激しい。私が誰だかわかりますか」
「・・・巻物、」
「大丈夫、私たちで取り返します」
タカ丸は意識が混乱しているようで、伊作の手を握って、ひたすら「ごめんなさい、ごめんね」と繰り返す。
「タカ丸さん」
「あいつが嘘に気づく前に・・・口を封じなきゃ」
そうして溺れている人のように空を掻き毟るようにしてもがいた。無意識のうちにしきりに舌を噛もうとするので、伊作はタカ丸の口の中に躊躇なく己の指を突っ込んだ。強く舌根を押さえつけたために、タカ丸の顎が開く。咽喉の深いところに指を突っ込まれて、タカ丸がえずく。強く噛まれて、伊作の指からも血が滴った。だが伊作は決して指を抜こうとはしなかった。
「タカ丸さん、僕のいる限りは決して自害なんて許しません」
タカ丸の瞳から涙が零れる。伊助はそれを優しく指でぬぐって、「必ずあなたを助けます」と励ますようにいった。

こんなめに君をあわせる人間は僕の他にありはしないよ⑳

⑳無力の力、あるいは、迎え討て。


タカ丸は慣れぬ女装束の裾を捌きながら駆け逃げていく。
途中、草履のせいで転んだ。石で抉れた膝の痛みなど、もはや感じない。草履を捨てて裸足でなおも駆けていく。一日中走りとおしの身体が、限界を訴えてくる。顎から伝って汗が滴り落ちてくるのを拳でぬぐって、鉄の味がする渇いた咽喉を、唾液を飲むことで紛らわせた。
(俺は足が遅いから)
すぐに追いつかれるだろうことが不安でならない。誰かが追ってくる気配がする。振り向きたいという気持ちを掻き消して、前だけを睨んだ。タカ丸の脳裏には、食満の血に染まった右手がだらんと垂れている。殺した男の血液は滴り落ちて、タカ丸の足を濡らした。耳元には、先ほどの骨音。あの心優しく穏やかなばかりの雷蔵が出したとは思えぬ、冷たい死の音。死んだ男がぎょろんと目をむいてタカ丸を見つめる。お前のせいだ、と口が開く。お前のせいだ、お前が俺を殺した。食満が苦無を握ったまま疲れた顔でタカ丸を振り返る。あんたのせいだ、と口が動く。あんたが殺させた。雷蔵の声が耳音でする。本当は殺したくなんかなかったのに。
考えると挫けそうになるから、タカ丸は雑念を振り払って市井を駆け抜けていく。聞こえてくる呪詛にも似た声には、蓋を。手のひらで両の耳を覆って、前だけを睨みつける。
行き先は、あった。
タカ丸は市井で生まれ育った子どもだった。タカ丸の家は町の終わりにある橋のたもとにあった。ここは、町への出入に必ず人が通らなければ行けない区画になるから、客が引きやすい。だが本当は、町に出入する人間の選別という目的があったのだと、学園に入ってから土井に教えられた。演習の場所はタカ丸の生まれ育った町とは違ったが、同じように町のはずれに橋が架かっていることは知っていた。川は時に自然の堀になる。川に沿って町の区画を決めることは、利が大きいから、同じような特徴を持った町は多い。地形はすでに演習前に穴が開くほど見た地図で、確認をしていた。
肩で大きく息をつきながら、ようようの態で町の外れまできた。
のったりのったりと通行人が行き交う橋の上で、タカ丸は息を落ち着かせると、懐から櫛を取り出して髪を整えた。それから、携帯していた紅を取り出して、唇を赤く染め上げる。血色が悪くなって蒼白に近かった唇を、せいぜい女らしく整えると、頬紅も簡単に刷いた。血色のいい女が出来上がる。川面に自分の姿を映して見栄えを確認すると、タカ丸は泥だらけの着物を叩いて泥を落とし、汚い爪先も指で擦って綺麗にした。血にぬれた膝小僧は手ぬぐいを縛り付けて、裾で隠した。そうして橋の欄干に座って、高いか細い声で、
「女はいらんかえ、女はいらんかえ」
とうたった。小汚いはした女が鳴いておるわと眉を潜める通行人あれば、興味なさ気に表情も変えず通り過ぎる者もある。タカ丸は気狂いのように咽喉を震わせるばかりだ。


雷蔵はタカ丸を追った。どうやら彼が怖気てただ逃げているわけではないらしいことに気がついたのは、タカ丸の前だけを見つめるはっきりととした強い視線と、足取りの確かさだった。疲れで震える膝が彼の足を遅くしていたので、雷蔵が追いつくのは早かった。だが彼は、隠れて見守ることに決めた。
男は追ってこない。長次が捕らえたのだろう。殺しはしないはずだ、ぎりぎりまで。生け捕りにして、拷問にかけるのだ。長次は雷蔵にそれをさせなかった。タカ丸を追わせるのに託けて、雷蔵を逃がした。雷蔵にはそれが悔しくて悔しくてたまらなかった。怯えがばれたのだ。男の悲鳴に、殺人に、心が竦んだことが、ばれてしまった。雷蔵は長次を尊敬していた。だからこそ、その男に自分の情けない怯えが伝わったことが恥ずかしくて情けなくてならなかった。彼はきっと自分に呆れただろう。
と、そのとき、不思議な音がした。それは、笹の葉が擦れ合ってさらさらなるような幽かな音だった。雷蔵は顔を上げた。矢羽音だ。鉢屋からのものだとすぐに知れた。卒業したら双忍になろうと、お互いに考えている。矢羽音も示し合わせてふたりだけのものを決めた。お互いに、双忍になろうと口に出してはっきりと約束したことはなかったが、相手も同じ未来を見ていることを、お互いがうっすらと気づいていた。雷蔵と三郎の関係は、男女が恋人同士になる前の、あのふたりで呼吸を合わせていく不思議に通じ合っている時期の関係に似ていた。ふたりは別段恋人同士ではなかったが、ふたりが考えている”友情”という言葉でも、言い表せない不思議な重みを持っていた。
雷蔵が矢羽音で応えた。間も無く、音もなく、気配さえも消して傍らに男が立った。
「三郎、呼びつけてごめん」
「なに、いいのさ。困ったことでもあったかい」
「少しね、事態がややこしくなってしまって」
「にゃんこさんだね」
三郎の瞳が猫のように細くなって、眼前を駆けるタカ丸を捉えた。
「そうなんだ、守りたい」
「うん、ならそうしよう」
雷蔵はふと気がついたように、三郎の前に手のひらを差し出した。三郎はそれを迷いなく握りこんだ。雷蔵の手のひらの小さな震えは、それで止まった。三郎の手のひらの震えも、同じように止まった。
「ありがとう、三郎」
「いや、こちらこそありがとうよ、雷蔵」


タカ丸の前に一人の男が立った。薬師のようであった。編み笠を深く被っていて顔は見えない。
「女はいらんかえ」
タカ丸が鳴いた。男は低く押し殺したような声で、
「お前がすがや様の、」
と呟いた。タカ丸は色素の薄い瞳をまっすぐ男に向けた。
「そうです」
「よく似ておられる」
「祖父にも言われました」
「ああ・・・幸丸か、あれは、恐ろしい男だった」
男の腕がタカ丸に伸びた。ゆっくりといとおしむように頬に触れて、そのまま首を掴まれた。ぎゅうと力を入れられて、タカ丸は苦しさに身をよじる。タカ丸はそのまま声を絞り出すようにして、言った。
「もう、やめませんか。犠牲があまりにも多く出たから、僕はもう嫌です」
「怖いか」
「怖い」
「斉藤タカ丸、お前は忍者を目指しているそうな。お前みたいのでは忍者にはなれんよ」
「そうかもしれない。あなたに、祖父が託した和歌をお教えしようと思って」
「和歌」
「そうです、巻物を読み解くために必要だと、幸丸が一緒に僕に教えた」
「・・・言ってみろ」
「・・・恋しくば・・・」
男の瞳が酷薄に光った。「わかった、もういい」
鋭く言うと、そのままタカ丸を抱き込んだ。背中に鋭いものが押し付けられた感覚があった。タカ丸は瞳を閉じると、そのまま黙ってうつ向いた。
ごめんなさい、ごめんなさい、弱くて。守ってばっかりで。ただ、弱いものには弱いものなりの戦い方があると、先生は教えてくれた。
タカ丸は土井のことを思い出している。皮の厚い、見た目以上に戦いに慣れた男の大きな手のひらが、タカ丸をなでた。
「タカ丸、最初に行っておこう。お前は忍者には向かないよ。ひどいことを言うと思うかもしれないが、そういうことをはっきりといっておくことが大切なときもある。恨むのなら私を恨みなさい。ただね、タカ丸、だからといって戦うのをやめてはいけない。弱いものは弱いものなりに戦い方がある。私はそれを教えてあげよう」
学園長はタカ丸に問うた。
「力が欲しいか、タカ丸」
「欲しい」
「なぜ」
「誰も傷つかないために。守る力と抗う力が、欲しいんです」
タカ丸はそれから、ちょっとだけ死ぬのが怖いと思ったから、そんな自分を励ますために兵助の顔を思い浮かべた。兵助は忍者になりたいタカ丸の意思を汲んで、俺があなたを守るとは絶対に約束しなかった。力を手に入れたい男にそんなことを約束しても、それが侮辱にしかならないと考えたからだった。タカ丸は兵助のそういう考え方が嬉しかった。そうだ、俺はね、守られたかったんじゃない。いつだって、守る力が欲しかった。
(兵助、ねえ、これは俺なりの戦い方なんだから、泣いたりしたら駄目だよ)
笑って頑張ったなとでも褒めておくれ。
タカ丸は瞳を閉じた。トン、と背中に押されたような衝撃があった。刺されたのだ。血が噴出した。
タカ丸は、熱い、と思って、それを最後にそのまま力を失って、背中から川に落ちた。

こんなめに君をあわせる人間は僕の他にありはしないよ⑲

⑲力を欲する男たち


「力が欲しいか」
大川平次渦正は学園を立ち上げて以来、無数の生徒たちにその問いを発してきた。大川は、これまでに自分がその問いを発してきた子どもたちの、顔も名前も、そして答えも等しく記憶している。
忍術学園は、その教育プログラムが、上級生に上がるにつれて力のない生徒から淘汰される仕組みになっている。学園を辞めたいと大川を訪なう生徒は毎日のように後を絶たない。大川はそれを引き止めることも助長することもしない。ただ、静かに尋ねるのみだ。
「力が欲しいか」

久々知兵助がそう問われたのは、彼が忍術学園に入学する以前のことであった。兵助は賊に家族を殺された。そのころの兵助は、十に満たない子どもだった。有力な豪族の嫡子に生まれ、教養だけはきちんと身につけておらねばならぬという父の方針で、近所の寺に手習いに通っていた。ある日家に帰ったら、血みどろのなかに家族が死んでいた。父親と、母親と、その腕に抱かれた本当に幼い妹。
取り返さねばならぬ、と兵助は思った。人は生き返らない。兵助は知っていたが、それでも何もかもを奪われたままでいるのが耐え切れないように思えた。
(許せぬ)
孤児としてひとりで生きていく術を身につけたあとも、どうにかこうにかそれなりに安寧とした暮らしを送りながら、兵助はそればかりを考えていた。雷の激しい雨夜だった。兵助は、仇をとった。今思えば、相手の賊は弱かった。油断を取ったとはいえ、十にも満たない子どもに殺されたのだ。兵助は雨に打たれながら、懐に入れていた小刀でほとんど衝動的に賊を刺していた。罪悪感はなかった。手を濡らす血の生ぬるさと、突き刺すような錆びた臭いが腹に溜まって、ただただ気持ちが悪いと思った。人間というものはこうもあっけなく死ぬのかと思った。柔らかな肉を一突きするだけで、だたそれだけで。
ふいに背後から、「その男はもう死んでいる。刀を放せ」と落ち着いた男の声がした。しかし兵助は動けなかった。身体が泥のように重く、不自然に筋肉は強張っていた。近づいてきた男は兵助の背後から、兵助の指に己の腕を置いた。兵助は獣のように瞳をぎらつかせて、男の腕を噛んだ。男は同じように兵助を刺すだろうと思った。だが、そのまま腕に抱きしめて、優しく頭をなでた。
「よしよし、もう大丈夫だから手を離しなさい」
兵助は胸に抱かれながら、ほっと息をついた。途端、緩んだ手のひらからぽろりと短刀は零れ落ちた。兵助を抱きとめた男は、土井半助といった。兵助は彼に手を引かれて忍術学園の門をくぐった。対峙した老人は兵助に熱い茶と甘い菓子を与えた。兵助がそれを貪り食うのを黙って見守ると、重たげに口を開いた。
「兵助、お主、力が欲しいか」



「欲しい」
と、綾部は答えた。しれっとした表情だった。世の中のすべてを、等しく価値のないものだと蔑むような、そういう無感情の瞳をしている。それが綾部喜八郎の特徴だった。
ともかく容姿が美しい。少女めいた、華のような、という形容が似合った。
「なぜ欲しい」
問い質す大川に、綾部は返した。
「ではあなたは欲しくないのか」
「綾部、何故忍者を辞めたい」
「つまらなく思ったから」
「何を」
「わからない。けれど、とてもつまらない」
綾部は前日、実習でひとり同級生を殺していた。実践演習中の不意の事故だった。綾部はそれなりに実力があった。あったが、あくまでそれなりだったから、不意打ちにあって驚いたとき、力加減がうまくいかず思わず殺してしまったのだ。そのまま綾部はふらりと学園へ戻ってきて、手を二重にも三重にも洗い、布団を敷いて寝た。ぐっすりと眠り込んだあと、目を覚まして、学園長のもとを訪れ、
「学園を辞める」
と言い出したのだった。
「力は欲しい。けれど、私はここにいると力の使い方を間違えるような気がする。学園長、あなたは何のために力を欲したのです」
大川は頷いた。「もちろんわしにも理由はある。だがそれはあくまでわしの理由じゃ。お主はお主の理由を求めねばならん。それまではここにおるがよかろう」

タカ丸が目を開いたとき、最初に目に飛び込んできたものは苦無だった。己の首筋に押し当てられていた。本能的に逃れようとして身体を揺すると、がっちりと腕に抱きとめられていて身動きが取れない。
「目を覚ましたか、久しぶりだな」
耳元で低い声がした。タカ丸は息を呑む。古い、傷となった記憶が脳裏に蘇った。勝手に動機が早くなって、嫌な汗が全身から噴出した。
「・・・あ、」
「約束のものを取りに来たぞ。斉藤幸丸が持ち出した我が城の宝、返してもらおうか」
「・・・そんなもの、俺、知らない」
ゆるゆると首を振っても、相手の忍者は聞く耳を持たなかった。奪われた巻物と、歌。今は亡き幸丸からタカ丸が受け継いだものは、そのふたつだけだ。そのふたつがどんな意味を持つのかは、タカ丸さえ知らなかった。
「タカ丸さん、伏せて」
ふと近くで声がした。誰か知ったものの声だと認識して、慌てて身をちぢ込ませる。伏せた頭の後頭部を、さらに何者かにぐいっと勢いよく下に押し付けられた。
キンッ、と鋼同士がぶつかり合う音。ちいっ、と男の舌打ちが聞こえた。タカ丸が瞳を開けると、男の足首に縄標が巻きついている。中在家長次の仕業だ、とタカ丸はすぐに認識した。
「雷蔵。かまわん、へし折れ」
長次の低い声が飛んだ。「はい」と頭上からいつもは穏やかな声が少し震えて聞こえてきた。それは確かに雷蔵のものだった。「ぐうっ」と男の短い悲鳴。タカ丸の耳元でぽきっと小さく骨の軋む音がした。タカ丸は目を見開いて息を呑んだ。殺すのか。雷蔵は、殺すのか、この男を。タカ丸の脳裏に、冷たい過去の記憶に重なるように雷蔵の笑顔が浮かぶ。いつも親切そうな笑みを浮かべて、皆に慕われている。そうして、今日もいい天気ですね、とか、夕日が一段と綺麗ですね、とか、庭に菫が咲きましたよ、とそんな小さなことをとても喜ぶ。
殺させては駄目だ。タカ丸は強く思った。
タカ丸は懐に腕を忍ばせてようようの態で苦無を取り出すと、後ろ手で男と思われる身体の肉を刺した。
「うっ」
短く男が息を呑んだ。そうして、男の腕がわずかに緩んだかと思うと、強くタカ丸の首を絞めた。
「・・・ぐっ、」
「タカ丸さん!」
雷蔵は押さえつけていた腕を放すと、苦無で男の肩を刺した。男の腕が弱まる。タカ丸は男の身体を押しやるようにして慌てて男の拘束から逃れた。そうしてそのまま逃げ出した。
女の着物は裾が足に絡み付いて動きづらいことといったらなかった。だが、後ろも振り返らずにタカ丸は逃げ出した。
「先輩、タカ丸さんを追ってください!」
雷蔵が鋭い声を上げた。中在家は無言で首を振ると、縄標をぐいと引っ張った。男の身体が傾いで地に倒れる。
「いや、あとは俺がやる。不破、追え」
「いえ、できます。僕にやらせてください」
「駄目だ。追え」
駄目だ、という一言が雷蔵には重くのしかかった。殺すことに躊躇をした。それを責められているように感じたのだった。
「追え」
声を重ねられて、雷蔵は身を翻した。
背中越しに、ぼきり、と嫌な音が響いて、男の悲鳴はやんだ。
(力が欲しい)
雷蔵は思った。いざというときに躊躇しない心の強さが。欲しい。

こんなめに君をあわせる人間は僕のほかにありはしないよ⑲

⑲巻物捜し、またはあいかわらずのふたり

「あったか」
潮江の問いかけに、食満は途方に暮れたように立ち尽くした。辺りには賊の持ち物が散乱している。賊たちは縛り上げて御堂の隅に転がしてある。
賊たちの捕縛は思いのほかすんなり進んだ。どうやら敵方の忍者隊は数人で、適当に言いくるめて賊を部下として使っていたらしい。脅しあげれば何人かの蛮勇は抗い武器を振り上げてきたので、殺さない程度に打ちのめした。それを見て強面の男たちはすっかり震え上がって大人しくなる始末で、無用な殺生をせずにすんだことは潮江と食満にとって僥倖だった。
しかし、賊たちは今回の仕事について実に何も聞かされていないらしい。どのように脅しても「手足になれば報酬をやるといわれただけで、目的については何も知らない」と言い張るから、ふたりは途方に暮れた。
「あいつ、殺すんじゃなかった」
食満が焦れたように親指の爪を噛んだ。煮詰まったときの癖だった。それを見つけて潮江が言い差す。
「焦るな。手はあるはずだ、考えよう」
潮江の様子はどこまでも冷静だった。戦闘能力だけとればふたりは互角だ。しかし、追い詰められたときの対処能力で差ができる。ここが、学園でも将来を優秀な忍者として期待されている潮江という男の剋目するべきところだった。
「しかし、・・・どうする」
「俺たちが見た”忍者”は何人だ。食満、お前が殺った男が一人。タカ丸さんを攫った男が一人。小平太が追っているはずの男が一人」
「御堂に残されたこいつらに忍者らしいやつはいなかった」
食満が部屋の隅に転がる悪漢たちを視線で指し示す。
「相手の目的はどこまでもタカ丸さんの捕縛に絞られているらしい。この寺も賊たちも捕縛が達成されたら捨てていくつもりだったのだろう。やつら、おそらくここに戻ってくるつもりはあるまいよ」
「ではここに巻物はない、か。しかし男の死体を漁ったがやはり巻物らしいものはなかったぞ」
「残りの忍者が持っている、という可能性は」
「なくはない」
それしかあるまい、と潮江は思うのだが食満はどこまでも懐疑的であるようだった。前方を睨み付けるような鋭い視線をして思考に耽っている。
「何が引っかかっている」
「俺が殺したあの男、タカ丸さんのことを喋らせたとき、一度会ったことがあるような口ぶりをしていた。・・・”
あいつが餓鬼のころにちっとばかし可愛がってやったことがあるのよ”。敵方の首領はあいつではないのか」
「小物に見えたけどな」
潮江はぼりぼりと首筋をかく。
「強さはなくとも、タカ丸さんに関して最も情報を握っているものだったとしたら?今回の作戦の首謀者という可能性は十二分にある」
「それがやられたので、仙蔵が追っている忍者が動き出した、というわけだな」
「お前が出し抜かれた忍者、な」
食満の言に潮江はむっとしたように眉根を寄せた。
「じゃあ巻物はここにあるってことか。しかし、」
「・・・しかし、技量が劣っているとわかっている首領に、巻物を任せるだろうか、か。確かに」
「何せお前如きに殺られるくらいの男だからな。端っから任せていない可能性は高いぞ。捨てるためのアジトに捨てるべく集めた賊たち。そして、技量に問題のある首領。ここに巻物を残す理由があるまい」
潮江の喧嘩を売るような言葉に食満がふくれっ面をする。そうして首をひねった。
「だがどうしても・・・」
潮江はため息をつく。食満は納得しないと次に動かない頑固さがある。ここに巻物があるにせよないにせよしらみつぶしに探しまくって食満を納得させるしか他に方はあるまい。
「仕方ない男だ、お前というやつは」
潮江はすたすたと歩き出すと、隠し持っていた組み立て式の槍を取り出した。
「他に探していないところは天井と地下だ。天井は後々この御堂ごと捨てることを考えれば当然隠さない」
捨てる、とはすなわち焼き払うことだ。
「燃えても平気なところ・・・地下、だな」
食満が頷く。袂から火種を取り出した。火縄の先に火をつける。
「さっさと焼き払って掘り返そう」
「ったく、穴掘りは小平太の専売特許だろ。だれかあいつ連れてこい」
転がされたままの賊たちは、どうやら寺を燃やすことになったらしい成り行きに、もぞもぞと動き始める。それを見下ろした食満の視線とぶつかった。
「おい、こいつらどうする」
食満はこれみよがしに大声を上げて潮江を呼ぶ。その背中は興味がないとばかりに振り返らない。
「ああ?めんどくせーな。その辺に捨てとけ」
賊の顔色がみるみる青くなる。食満がにやりと片頬を釣り上げた。
「だってよ」

***

賊たちは紫陽花の陰に捨てられて、皆恐怖に気を失っている。
「あったか」
潮江の言葉に食満は深く頷いた。
「あった」
煤の中、穴を掘りまくった。そのうち、壺が埋められているのを見つけた。金やら銀やらの財産の下に、埋もれるようにして一本の巻物。食満はおそるおそるそれを持ち上げると、広げた。
潮江も興味があるらしく、のぞき込む。
そこに書かれていたのは、ひとりの女だった。
美しい着物を着て、こちらにむかって神妙な面持ちをしている。口元にひかれた紅が妙に赤い。なにか、大切な儀式の日に書かせたものかもしれなかった。
「・・・なんだこりゃ」
「どこぞの姫君だな」
「これが、タカ丸さんの奪われた巻物・・・?」
「そういやこの女、よく見るとタカ丸さんの面影があるような・・・」
絵の女は助けを求めるようにこわばった面持ちでじいっとこちらを見ていた。

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