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こんなめに君をあわせる人間は僕のほかにありはしないよ⑲

⑲巻物捜し、またはあいかわらずのふたり

「あったか」
潮江の問いかけに、食満は途方に暮れたように立ち尽くした。辺りには賊の持ち物が散乱している。賊たちは縛り上げて御堂の隅に転がしてある。
賊たちの捕縛は思いのほかすんなり進んだ。どうやら敵方の忍者隊は数人で、適当に言いくるめて賊を部下として使っていたらしい。脅しあげれば何人かの蛮勇は抗い武器を振り上げてきたので、殺さない程度に打ちのめした。それを見て強面の男たちはすっかり震え上がって大人しくなる始末で、無用な殺生をせずにすんだことは潮江と食満にとって僥倖だった。
しかし、賊たちは今回の仕事について実に何も聞かされていないらしい。どのように脅しても「手足になれば報酬をやるといわれただけで、目的については何も知らない」と言い張るから、ふたりは途方に暮れた。
「あいつ、殺すんじゃなかった」
食満が焦れたように親指の爪を噛んだ。煮詰まったときの癖だった。それを見つけて潮江が言い差す。
「焦るな。手はあるはずだ、考えよう」
潮江の様子はどこまでも冷静だった。戦闘能力だけとればふたりは互角だ。しかし、追い詰められたときの対処能力で差ができる。ここが、学園でも将来を優秀な忍者として期待されている潮江という男の剋目するべきところだった。
「しかし、・・・どうする」
「俺たちが見た”忍者”は何人だ。食満、お前が殺った男が一人。タカ丸さんを攫った男が一人。小平太が追っているはずの男が一人」
「御堂に残されたこいつらに忍者らしいやつはいなかった」
食満が部屋の隅に転がる悪漢たちを視線で指し示す。
「相手の目的はどこまでもタカ丸さんの捕縛に絞られているらしい。この寺も賊たちも捕縛が達成されたら捨てていくつもりだったのだろう。やつら、おそらくここに戻ってくるつもりはあるまいよ」
「ではここに巻物はない、か。しかし男の死体を漁ったがやはり巻物らしいものはなかったぞ」
「残りの忍者が持っている、という可能性は」
「なくはない」
それしかあるまい、と潮江は思うのだが食満はどこまでも懐疑的であるようだった。前方を睨み付けるような鋭い視線をして思考に耽っている。
「何が引っかかっている」
「俺が殺したあの男、タカ丸さんのことを喋らせたとき、一度会ったことがあるような口ぶりをしていた。・・・”
あいつが餓鬼のころにちっとばかし可愛がってやったことがあるのよ”。敵方の首領はあいつではないのか」
「小物に見えたけどな」
潮江はぼりぼりと首筋をかく。
「強さはなくとも、タカ丸さんに関して最も情報を握っているものだったとしたら?今回の作戦の首謀者という可能性は十二分にある」
「それがやられたので、仙蔵が追っている忍者が動き出した、というわけだな」
「お前が出し抜かれた忍者、な」
食満の言に潮江はむっとしたように眉根を寄せた。
「じゃあ巻物はここにあるってことか。しかし、」
「・・・しかし、技量が劣っているとわかっている首領に、巻物を任せるだろうか、か。確かに」
「何せお前如きに殺られるくらいの男だからな。端っから任せていない可能性は高いぞ。捨てるためのアジトに捨てるべく集めた賊たち。そして、技量に問題のある首領。ここに巻物を残す理由があるまい」
潮江の喧嘩を売るような言葉に食満がふくれっ面をする。そうして首をひねった。
「だがどうしても・・・」
潮江はため息をつく。食満は納得しないと次に動かない頑固さがある。ここに巻物があるにせよないにせよしらみつぶしに探しまくって食満を納得させるしか他に方はあるまい。
「仕方ない男だ、お前というやつは」
潮江はすたすたと歩き出すと、隠し持っていた組み立て式の槍を取り出した。
「他に探していないところは天井と地下だ。天井は後々この御堂ごと捨てることを考えれば当然隠さない」
捨てる、とはすなわち焼き払うことだ。
「燃えても平気なところ・・・地下、だな」
食満が頷く。袂から火種を取り出した。火縄の先に火をつける。
「さっさと焼き払って掘り返そう」
「ったく、穴掘りは小平太の専売特許だろ。だれかあいつ連れてこい」
転がされたままの賊たちは、どうやら寺を燃やすことになったらしい成り行きに、もぞもぞと動き始める。それを見下ろした食満の視線とぶつかった。
「おい、こいつらどうする」
食満はこれみよがしに大声を上げて潮江を呼ぶ。その背中は興味がないとばかりに振り返らない。
「ああ?めんどくせーな。その辺に捨てとけ」
賊の顔色がみるみる青くなる。食満がにやりと片頬を釣り上げた。
「だってよ」

***

賊たちは紫陽花の陰に捨てられて、皆恐怖に気を失っている。
「あったか」
潮江の言葉に食満は深く頷いた。
「あった」
煤の中、穴を掘りまくった。そのうち、壺が埋められているのを見つけた。金やら銀やらの財産の下に、埋もれるようにして一本の巻物。食満はおそるおそるそれを持ち上げると、広げた。
潮江も興味があるらしく、のぞき込む。
そこに書かれていたのは、ひとりの女だった。
美しい着物を着て、こちらにむかって神妙な面持ちをしている。口元にひかれた紅が妙に赤い。なにか、大切な儀式の日に書かせたものかもしれなかった。
「・・・なんだこりゃ」
「どこぞの姫君だな」
「これが、タカ丸さんの奪われた巻物・・・?」
「そういやこの女、よく見るとタカ丸さんの面影があるような・・・」
絵の女は助けを求めるようにこわばった面持ちでじいっとこちらを見ていた。

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