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よいこわるいこふつうのこ

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恋は夕暮れ

拍手ありがとうございます!「耳をすませば」に、なんか似たようなシーンがあったような気がする。


現パロ、女体化。


「えっ、そんな、俺困るよ!」
伊助は、虎若はきっと喜ぶと思って差し出した手紙を困惑気に拒否されて、瞳を瞬かせた。ラブレターだなんていまどき古風だけれど、その古風がきっと虎若にはたまらないだろうって、女子みんなで話し合って三治朗に書かせたものだ。今回の三治朗の告白に一番積極的に協力したのは伊助で、彼女は小学校から特別仲がよかった虎若の好みを積極的に教えたし、この手紙のためにわざわざ一番可愛いレターセットも買ってきた。そのレターセットはいつだったかに伊助が虎若への手紙を書くのに使ったもので(誕生日プレゼントにつけた手紙だったろうか、はっきりとしたことは覚えてない)、カントリーの落ち着いた風合いのもので、虎若が「品がいいね」と褒めたものだ。虎若が気に入ってた柄だよって三治朗に手渡したら、三治郎は、なぜだろう、少し困ったような顔で、「私が出しても同じように気に入ってくれるかな」などというから、伊助は小首を傾げて、「こういう柄に、三治朗の字ってすごく合うと思うよ。気に入らなかったら、もちろん、使う必要はないんだけど」伊助が遠慮を始めたら、三治郎は慌てて「ううん、使う、ありがとう」と笑ってそれを受け取った。
自分で手渡すのはどうしても嫌だと言ったから、机の引き出しに入れる法を兵太夫が提案したら、なぜだか「伊助が渡してきて!」と頼まれた。断ったのに、三治朗にしては頑固に頼んでくるから、どうしても断りきらなくて、仕方無しに頷いた。三治郎は可憐っていう言葉がよく似合う。優しいし、可愛らしいし、虎若にお似合いだ。きっと上手く行くと思ってたのに、虎若は困った顔している。
「それ、三治朗からのものなんだろう?」
「うん。三治朗が勇気を出して書いたんだよ。三治朗、ずっと虎若が好きだったんだって。優しいし、努力家だし、かっこいいしって。三治朗、見る目あるよ。私虎若の一番の友達だから、虎若には幸せでいて欲しいんだよね」
「だから三治朗、なんだ…?」
虎若は途方に暮れている。「悪いけど、俺、それ受け取れない。三治朗には悪いけど」
こんな展開考えていなかった。伊助は顔を青くする。三治朗になんて言ったらいいんだろう!
「だ、駄目だよ虎若!受け取らなきゃ駄目!三治朗がかわいそう!」
虎若の学生服の胸にぎゅうぎゅうと手紙を押し付ける。虎若は決してそれを受け取ろうととしない。
「好きでもないのに受け取るほうが卑怯で残酷だよ。とにかく、俺はそれは受け取れない。ごめん」
深く頭を下げられて、伊助のほうが困惑してしまう。
「どうして。三治朗って優しくてすごくいい子だよ。可愛いし、お似合いだと思うのに」
しょんぼりした伊助に、虎若は絞り出すような声で告げる。
「うん、三治郎はすごく可愛いよ。いいやつだし、俺も大好きだよ。でも俺、もっと可愛いと思う子がいるんだ。すごく好きで、幸せにしてあげたいなあって思う子がいるんだ」
「誰かきいてもいい?」
迷子のような気持ちで尋ねたら、虎若は口を開きかけて、だがどんな言葉を吐くより先に「…駄目だ、今は言わない」と視線を逸らした。
「なんで?」
神社の境内は、周囲の木々が陰になって、ひどく冷える。伊助はぶるりと身震いした。ぽとり、と言の葉が足元に落とされる。
「きっと伊助は困るから」


伊助が虎若を追いかけて教室をでてすぐ、兵太夫はきっと上手くいくよと両手ピースで笑ってくれた。三治郎はそれに微笑み返して、「ううん、絶対上手くいかないよ」とわざと軽く返した。兵太夫が眉を潜める。三治郎はもう一度微笑みかけた。
「虎若が好きなのは伊助だもん」
「は!?」
兵太夫の葡萄みたいに大きな目が見開かれる。あんぐりと大きく空けた口が、面白い。それに笑おうとして、三治郎は口元を釣り上げたが、なんだか頬の筋肉が引き攣って歪んでしまった。覚悟ならとっくの昔に決めたはずだが、引き摺らせてもらうなら、辛いものはやっぱり辛い。
「やだなあ、兵ちゃん、私虎若のこと本気だったんだよ。ずっと見てたんだもん、わかるよ」
「知ってて、伊助に自分のラブレター預けたの?」
「ラブレターじゃないよ、中身。伊助が好きなのに私からラブレター貰ったら、虎若が困っちゃうじゃない。くだらないことかいて終わらせちゃった。今頃虎若がいーちゃんに告白して、は組からカップルが誕生してる頃かもね」
兵太夫のかたちのいい眉がへにゃり、と奇妙に歪む。泣きそうな表情になった。
「虎若サイテー。伊助もサイテー」
「兵ちゃん、いくら兵ちゃんでも私の大切な友達ふたりをひどく言ったら絶交だからね」
ぼろ、と兵太夫の瞳から大粒の涙が零れた。ひくっ、と咽喉が鳴る。
「ばか、さんじろー!なんで私を泣かせるの!?今日睫プルーフじゃないのに、化粧はげたら三治朗のせいだからね」
「うん、ごめんね」
三治朗が笑っている。ばかだ、ばか。誰が馬鹿なのかは兵太夫にもわからない。誰も馬鹿じゃない、だから、こんなにもどかしくてどうしようもなく悲しい。なんでだ、みんながちょっとだけ幸せになりたいと思ってるだけなのに、何でこうなっちゃうかなあ?世の中って上手くいかない。ばかやろうは世の中だ。こんなふうに仕組んだ神様かなんかだ。ばかやろう、ばかやろう。
「コンビニ寄って馬鹿買いしよ。今日はさんじろーんチ泊まりにいく。一晩中美味いもん食って好きな音楽聴いて面白い映画見て楽しい話して、そんで忘れよ」
「うん。うん、そうだね」
すん、と三治朗の鼻が鳴るのを、兵太夫は聴こえないふりをして夕陽にきらきら輝く川面だけをにらんでずっと歩いた。前へ、前へ。

***

やべ、女体化楽しい。

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きらきら

女体化現パロ。


兵太夫に選んでもらった服は、とにかくスカート丈が短くて、伊助はどうにも居た堪れない気持ちで庄左ヱ門を待っていた。
(コンセプトは”ミニスカートでドキドキ!庄左ヱ門☆抹☆殺☆大☆作☆戦”といったところかな!)
(兵ちゃん、抹殺じゃなくて悩殺ね、悩殺。殺してどうするの)
伊助がスカートを履いて試着室から出てきたときの、兵太夫と三治朗のはしゃぎっぷりといったらなかった。ぎゃー似合う!印象変わる!可愛い!抱き締めたい!だの何だの散々言って、全く、居た堪れないといったらありゃしない。ショーウインドに全身を映してみて、伊助は溜息をつく。やっぱりなんだか変、な、気がする。べつにスカートを履くのは初めてではない。だけど、こんなに短くて大胆に女の子らしいのは初めてだ。甘口コーデには辛口アイテムで攻めなきゃねー基本よねーなどといわれても何がなにやらさっぱり。とりあえず言われるがままにブーツを履かされバッグを持たされ、髪を弄られ、メイクを施され。もともとがくせのない地味顔なだけに、ここまで飾られると自分でもこれが誰だかわからない。
だいたい、いきなり着飾って現われても庄左ヱ門はびっくりするだけだろう。先日買い物途中に偶然会ったが、そのときはセーラー服の上にエプロンをつけて、腕から大根を吊り下げたまま秋刀魚を選んでいるという最低のシチュエーションだった。オバサン高校生といわれても何も反論が出来ない。
(もっと普段から気を使うべき?でもミニスカートに髪を巻いてネギ買ってる姿というのもなあ…)
ショーウインドウに映った自分の表情が完全に怯えきっていてなにやら可哀想になってしまった。にっこりと微笑んだら、その笑顔がすでに引き攣っている。恥ずかしい、居た堪れない。「誰」とか言われたらショック死する、かも、しれない。
そわそわもじもじしながら地下鉄の出入り口付近でぼんやりと立ち尽くしていたら、肩を叩かれてびっくりした。
「うわあ!?」
振り返ったら、虎若と金吾がにこにこ笑顔を浮かべて立っていた。
「伊助、偶然だな!」
身をちぢこませて、こくこくと頷く。金吾は品のいいストライプの細身のパンツにジャケットという組み合わせで、正統派美青年という出で立ちだった。授業のときにしかかけない眼鏡をかけている。伊助は首を傾げた。
「ふたりで出かけてたの?」
「ああ、土井センセーの課題片付けてきたとこ」
「あー、そっかあ!あれ面倒くさかったよねえ、私も庄ちゃんに聞きまくってようやくなんとか完成した感じ」
「あはは、俺たちも似たようなもんだ」
金吾と虎若は顔を見合わせて朗らかに笑いあう。金吾がにっこり微笑んで聞いた。
「ところで伊助、今日はいつもと雰囲気が違うんだねえ、どうしたの?」
「ああ、兵ちゃんにコーディネート頼んだら、こんな感じに・・・。なんか変だよねえ」
ぼりぼりと首筋を掻いてわざと女の子らしさからは離れたような仕草をしてしまう。本当はもっと、兵太夫みたいにキュートでいたいし、三治朗みたいに清楚で可愛らしくありたい。だけど今更、それを目指すのもなんだか気恥ずかしい。
「そんなことないけど。すごく可愛いよ」金吾はおっとりと品のいい笑みを浮かべて、それから隣の虎若を見た。
「な、虎若」
「え、あ、うん。いつもの伊助も可愛いけど、今日はまた違った雰囲気ですごく可愛いよ!!」
なぜだか顔中を真っ赤にして力説する虎若に伊助は救われたような気分になる。虎若はいいやつだ。
「虎ちゃん、ありがとう。そこまで必死な感じで言われると思ってなかったよ」
「え、」
はたりと、まるで今気付いたかのようにして、虎若が動きを止める。傍らの金吾を振り返ったら、苦笑を浮かべてこちらを見ていた。
「必死だね、虎若」
虎若の顔が熟れたトマトのように真っ赤になる。「あー、ごめん!なんか俺、今変だったよね」触ったら熱そうだ。真っ赤な表情を見詰めて伊助は笑う。すっかり緊張は取れていた。虎若の肩をバンバンと叩いて、いつものように大口を開けて笑う。は組メンバーとはもうずっと一緒だから、今更取り繕う気も起こらない。は組メンバーは互いが互いに恥ずかしいところとか狭量なところとか弱いところとか包み隠さず見せ合ってきた。可愛く見せようというのが今更なのだ。
「あー、こんな似合わない格好しちゃって、変に緊張してたけど、虎若のおかげで目ぇ覚めた気がする。ありがと。虎若大好き!」
満面の笑みで礼を言う。伊助は、大口開けちゃって、およそ女の子らしくない、とこの笑顔を評しているけれど、虎若にはきらきらのかたまりにしか思えない。可愛い。伊助は笑ったときに見える前歯がとても可愛いのだ。あと、眼がくるくる動いて、それも小動物みたいで可愛い。虎若は知っている。伊助は、怒った顔も泣いた顔も可愛い。
小学6年生のとき、ふたりで文化祭の準備のときふざけあっていたら、伊助が大道具を倒してしまった。咄嗟に庇って落ちてきた木材に額を切ってしまった。そんなことがあった。あのとき、木材を避けながら伊助はびいびい泣いて、鼻水と涙でぐっちゃぐっちゃの顔が、なんでだろう、すごく可愛く思えた。「痛くないよ、平気だよ」って言い聞かせながら、熟れたトマトよりまだ赤いその顔を、今すぐ抱き締めて笑わせてあげたいなあと思った。それから虎若は、ずっとずっと伊助に笑っていて欲しいと思っている。
伊助は虎若にとってきらきらのかたまりだった。


***


虎若はいーちゃんが好きだ。いーちゃんは庄ちゃんがすきだ。金吾はいい男だ。

手紙をかくよ

伊助へ


先日は丁寧な手紙をどうもありがとう。いつも心のこもった手紙をありがとう。筆不精で滅多に返事を書かなくてごめん。今も迷いながら筆を執っているので、墨が乾いてしまって困る。
明日後から鷺嶽へ行くことになりました。仕事の話なので詳しい事はかけませんが、心配は要らない、大丈夫です。伊助の好きなまんじゅうを帰りに買ってきますね。
手紙を書くのは苦手なので、本当に何を書いたらいいか、困ってしまう。伊助に会ったら言おうと思うことはたくさんあるのに、それをうまく文にできません。つくづく風雅のない人間でごめん。先日家の納屋を整理していたら父ちゃんが母ちゃんに送った恋歌が何首かでてきて、懐かしがって家のものみんなで読んだのですが、呆れてしまうくらいまずかった。蛙が鳴くとそろそろ夏だから云々というような歌があるのですが、これなどは、ごく当たり前のことを読んだだけであって、どこが恋の歌かからっきしわからない。風雅のないのは、これも血かと諦めたような思いです。したがって今後もロマンチックな歌などは送ってあげられないからその点はどうかご了承頂きたい。(歌といえば、金吾が先日、庄左に習って喜三太に歌を送ったそうな。喜三太が大いに喜んでは組のみんなに見せてまわったそうですが、じつはその歌が庄左が手本に作ったそれを変えただけのもので、罰の悪い思いをしたそうな。は組で一番の色男はどうやら庄左のようですよ)
伊助はお元気ですか。季節の変わり目だが、風邪などひかないように滋養はたっぷり取ってください。先日取引先から高麗人参をたくさん分けていただいたので、それも一緒に送ります。粥に入れて食うのが一番美味ですよ。こちらは元気だから心配は要らない。
本当に、文というのものは何を書いたらいいやら困る。そうそう、伊助はもう忘れたかもしれませんが、一年の夏休みに、伊助は僕に手紙をくれましたね。手習いの一環では組のみんなに送ったのだと後で知ってなるほどと納得しましたが、じつはあの手紙を受け取ったとき、とても嬉しかったのですよ。あの時も、なんとか早く返事を書かなくてはと焦って、けれども何を書いたらいいのかわからずに困り果てたことをとても覚えている。何を書いたんだったか、もう忘れてしまいました。よほど不味い文だったろう、もし覚えていても、忘れてしまってよろしい。
拙い文もそろそろ終わりにしておく。ここまで読んでくれてありがとう。必ず帰りますから、僕のほうは心配要らない、のんびりと待っておいでなさい。それではお元気で。

この戦が終わればまた伊助に会いにいける。とても楽しみです。はやく、はやく会いたい。

虎若


***


虎伊というほどでもなく。虎ちゃんは筆不精なイメージがある。でも、字体は柔らかくて読みやすそうな。庄左は丁寧なんだけど、少し固い。兵太夫はくせが強い。三治郎は丁寧で読みやすい。でも少し線が細い。乱太郎は柔らかで伸び伸びとしている。
伊助は手紙魔なイメージを勝手に持っている。近況を書いて送りまくり。今でいうところのメール魔か。

こっちをむいてよハニー

くくたか。しょーもない話。


恋人の過去の恋愛遍歴なんていちいち気にしてたらお前、いつまでたっても処女としか付き合えないぞ。
そういった鉢屋は目の前で不破にぶん殴られた。俺はもっともだと思いつつ、それでも気になるから仕方がないのだと溜息をついて、掌の中の手紙を畳み直す。
くだらない喧嘩をしたという自覚はある。
タカ丸が朝からいやに真剣に文なぞを書いていて、横から何を言っても上の空だった。立場上はタカ丸の上級生に当たる俺が、わざわざ四年生の長屋へ出かけていって、半刻以上もタカ丸に向かって構って構ってという素振りをしてみれば、嫌でも注目は浴びるだろう。タカ丸の同室になった綾部が同情の篭もった口調で、「先輩、彼は今恋文を書いてるから放っておいてあげてください」と軽口を言ったものだから、あるひとつの疑惑を抱えていた俺は、その場で無理やりタカ丸の筆を降ろさせた。そうしたらつけてすぐの墨がぽたりと畳に落ち、タカ丸が珍しく大声をあげた、というわけだ。
「何するんだよ、兵助ッ!」
「何恋文なんか書いてんだアホッ!」
「書いてないよ!恋文じゃない!」
「じゃあ相手を言ってみろよ!」
「優ちゃんだよ!」
「てめえこのやろう!!」
「あーっ!せっかく書いたのに、なにすんだばか!」
ぎゃいぎゃいと掴み合いの喧嘩を始めた俺たちの横で、綾部はいつものとおり平然としていた(らしい)。タカ丸は傷を追ったままで何処かへ行ってしまって、ひとり部屋に残された俺は、取っ組み合いの喧嘩の横でどうやら本を読んでいたらしい綾部に「いいスポーツですね」とけろりと言われ、脱力するより他なかった。
俺の手の中にある手紙は、あの時タカ丸が書いていたものだ。
「優ちゃんへ」
で始まるそれには、あんなに真剣に向き合っていたくせに、「元気です、そっちは元気?忍術学園は、都と水の味が違うので、慣れるまでに苦労をしました。お元気で」それだけしか書いていない。疑惑いっぱいの気持ちで読んだから、読んでから、しまった、と思った。
「謝っちゃいなよ」
とにこやかに不破が言う。不破が言うなら謝るしかない。不破は優柔不断だけど、何か判断下すときは、悩んだぶん決して間違ったことは言わない。それに、今回のことは俺が悪い。わかってる。わかってるのに、それでもまだすっきりしない気持ちなのは、タカ丸がまだ”優ちゃん”のことを大切に思っていることを知っているからだ。あいつが大切にしている記憶と、俺はどうやって戦ったらいい?


タカ丸を探しに外へ出たら、その姿はすぐに見つかった。事務員の小松田さんを捕まえて、その髪を弄っていた。小松田さんは歌うようにぷくりと唇を尖らせて足をばたばたさせている。どこまでもお気楽な人だ。あれで、タカ丸さんより年上っていうんだから俄かに信じがたい。そして、”優ちゃん”はその人の兄上だ。俺は小松田さんを通して俺の恋敵の人物像を探ろうとするけれど、どうもうまくいかない。小松田さんのようなふわふわした男なのか?いやいや、それは想像力が拒否をする。
「優ちゃんは元気、」
タカ丸が聞くのに、俺はなぜだか息を殺す。小松田さんは、元気だよ、とあっけらかんといった。
「奥さんとの仲もうまくいってるってさ」
「こべにさん、だっけ」
「そう、綺麗でやさしい人だよ」
「うん、じゃあお似合いだ」
タカ丸が笑う。眉が変な具合に寄ってる。辛いんなら笑わなきゃいいのに、と思う。自虐的なことするなよ、馬鹿だな、こっちが心配になるだろうが。
「でもおかしくてね、このあいだ喧嘩したっていうんだ」
「え?」
「原因はなんだと思う?・・・浮気騒動なんだよ」
タカ丸の瞳が丸くなった。兄ちゃんが、昔の恋文を大切にとってあって、それが見つかって喧嘩になったって。小松田さんの言葉に俺までひやひやして肝をつぶす。タカ丸はひどく慌てて、「そ、その手紙、読まれちゃったの?」もはや整髪どころではない。小松田さんはお気楽に、「知らない」と返した。
「でも今は仲直りしてるし、きっともうそんな手紙は、もや」

「ターカまるー!」

俺は思わず大声をあげて走り寄っていた。タカ丸の表情は変に引き攣っている。普段アイドルのようにキャアキャア騒がれているくせに、見る影もない、ひどく頼りない様子が、不細工だ。見ていられない。こんな情けなくて笑える姿は俺だけ知ってればいい、と思う。
「探してたんだ。委員会があるからお前もこい、な!」
「あ、う、うん」
ぐわしと腕を掴んで、ぐいぐいと引っ張る。背後で小松田さんが、「あれえ、僕の髪は?」声をあげたが、それは無視する。無意識とはいえ、タカ丸を情けなくした罰だ(ということにしておく)。
校庭を突っ切って裏庭の菜園のところまでずんずん歩く。
「ねーどこまでいくの」
「気にするなよ、あんなの」
「え、さっきのこと?そうだねー、気にはしてないけど、肝は冷えたよ、びっくりしたってば、ほんと」
「お前もうとっとと忘れろ」
「もう気にしてないよー」
「嘘つけ。いい加減俺に覚悟決めろって」
「え、あ、そっち?」
まいったなあ、とタカ丸は頭をかく。なにくさいこと言わせてんだお前、がらじゃねーんだよこんなの。文句のひとつでもいってやりたい。怒った顔で振り返ったら、年下の後輩は苦笑して、「へーすけ、やろう」と強請った。俺は眉を顰めて、けれど、いいよと頷いて(据え膳食わぬは男の恥)、やけくそみたいに吠えた。
「えー、くそ!今日は絶対泣かせてやる」
「この前ハッチ先輩が教えてくれた縛りやってみる?」
「 や っ て み な い !!」
「はは。あ、兵助、長屋までもどるの面倒くさいし焔硝蔵行こう」
「ほんとところ構わずだなお前」
「とかいいながら兵助足どこ向いてんの」
タカ丸の恋文だって?んなもん後生大事にとっておくな、燃やしちまえ。腹立ち紛れに心のうちで吐き捨てる。だけど、ほんとに燃やしてたら殴る、とか思っている。俺も矛盾している。悔しい、悔しい。一緒にいる時間の長さで昔を記憶を塗り替えられるなら、俺は決してこの人を離さないで、ずっと何処かにしまっておくのに。

みんなよいこ

切羽詰った庄ちゃんの、なごみSS。
先日書かせていただいた切羽詰った庄ちゃんの、切羽詰ったなりのなごみSS。


庄左ヱ門は図書室に行ったらしいぞと団蔵が言ったので、それでは鬼の居ぬ間のなんとやらだと伊助が掃除道具を抱えて庄左ヱ門の部屋に入ったら、当人は文机に向かって書を認めていたので、伊助はぽかんとした。
「あれ?」
庄左ヱ門は顔を上げると、また来たのか、と呟き、「掃除なら自分でするからいいのに」と溜息を吐いた。伊助は素直に「うん、ごめん」と頷いて、それでも庄左ヱ門の部屋の入る。庄左ヱ門の自分でするはあてにならない。確かに、庄左ヱ門はぐうたらではないからある程度ひどくなれば自分で掃除はするけれども、眼に見えて汚れが目立たない限りは満足な掃除をしない。
「図書館にいったって聞いたんだけど」
「ああ、行こうと思ったんだが動けなくなってな」
「うん?」
首を傾げれば、庄左ヱ門が視線で自分の胡座を示す。伊助が覗き込むと、組まれた脚の間に最近忍たま長屋の周辺でよく見かける猫の親子が身体を丸めて眠り込んでいるのだった。伊助は慌てて猫を起こすまいと息を殺す。かーわいい、かわいいかわいいかわいい!声には出さなくても、きらきらと輝く瞳が雄弁だ。庄左ヱ門は小さく息を吐いて笑うと、子猫を取り上げて、伊助に手渡した。
「馬鹿、庄左、猫が起きちゃうだろ!」
「もう半刻もこの調子なんだ。いい加減、足が痺れたよ」
子猫は小さく欠伸をすると、伊助の腕の中で、なあなあと鳴く。小さすぎる鳴き声は親猫には届かない。親猫は子猫に比べてずいぶんと人馴れしていて、平気で庄左ヱ門の股座で眠りこけている。
「なあなあいってる。かーわいいなあ、小さい」
うん、と庄左ヱ門は頷く。
「乳臭いのは人間も猫も同じだなあ」
伊助は腕の中の小さな存在に鼻を押し付けてにおいを嗅ぐ。猫はなあなあと親を呼んでいる。
「おー、よし、よし」
伊助は身体を揺らしてあやすと、掠れた声で子守唄を歌う。ねーんねんころーりーよおころりよー。庄左ヱ門は子猫に夢中になってしまった伊助をしばらく見詰めて、少し微笑うと、再び書に向き合った。厳しい顔つきに戻る。卒業後の、甲賀忍軍への願書だ。受かったらいい、名誉だ。受からなければ、次はある。けれど、多分、悔しくてまた気が触れそうな気持ちになるに違いない。自分の中に獣が棲んでいて、理性はなく、ときどき暴れる。暴れるととても大切なものを食い散らかすから、始末に終えない。飼い慣らす術が見当たらない。大切なものを自分の手元においておくのが怖い。逃げろ、獣にとって喰われるぞ。誰もが心の奥底に醜い獣を飼っているのなら、みんなはどうやってそれを、押さえているのだろう。虚栄心、嫉妬、怨念、利己心、偽善。どれもがとても醜い。でも誰もが、そんなものばかりで生きている。気が触れそうになる。心の奥で、獣が吠える。いけない、庄左ヱ門は息を呑む。手元の筆を硯に叩きつける様にして、伊助を振り返る。壊したい。駄目だ、これはとても大切なもの。喰い散らかしたい。駄目だ、そんなことをしたらきっと泣く。泣かせたい。駄目だ。
相克する声に頭痛がする。
何も知らない伊助は酷い顔をしている庄左ヱ門を見上げて微笑む。
「眠ったよ、猫」
坊やよい子だ、ねんねしな。そんな言葉だけを吐き続ける、伊助の心の中にも、闇はあるのだろうか。庄左ヱ門は深く息を吐いて、固い床に身を横たえた。
「庄ちゃん、疲れた?」
「うん。伊助、唄ってて」
「疲れたら眠るといいよ、庄ちゃん」
ねんねんころりよおころりよ坊やよい子だ、ねんねしな。単調なリズムに、身をたゆたえて、庄左ヱ門は息を吐く。瞼の奥の闇の中に、薄ぼんやりとひかりが見える。よい子だね、と、それは、母の記憶。幼い頃のよくしていただいた教師の記憶。友の記憶。庄左ヱ門はよい子だねと、遠くから、近くから、浅く、深く。波のように。じわりと闇が滲んで、目尻に涙が溢れた。熱い指先がそれを拭い去って、庄左ヱ門のなかの獣を緩く締め上げるような、優しい声が耳を叩いた。

よい子だね。



***

なごんでない。
どころか、

 こ れ ど ん な ぷ れ い (母子プレイ)?

べつに最中に庄がばぶーて言い始めたりはしませんが( 嫌 だ 絶 対 )、乱暴に穿たれながら、伊助がぎゅうって庄左にしがみ付いて、「しょーちゃ、いいこだね」って荒い息の中で快楽の所為で舌ったらずななか言ったりするので、庄はむずむずする。(どんなプレイだそれ)とか心の中で突っ込むけれど、伊助は無自覚、空気読んで口が勝手に動いちゃってる。だからやっぱり庄の所為なんだぜそれは。

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