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きらきら

女体化現パロ。


兵太夫に選んでもらった服は、とにかくスカート丈が短くて、伊助はどうにも居た堪れない気持ちで庄左ヱ門を待っていた。
(コンセプトは”ミニスカートでドキドキ!庄左ヱ門☆抹☆殺☆大☆作☆戦”といったところかな!)
(兵ちゃん、抹殺じゃなくて悩殺ね、悩殺。殺してどうするの)
伊助がスカートを履いて試着室から出てきたときの、兵太夫と三治朗のはしゃぎっぷりといったらなかった。ぎゃー似合う!印象変わる!可愛い!抱き締めたい!だの何だの散々言って、全く、居た堪れないといったらありゃしない。ショーウインドに全身を映してみて、伊助は溜息をつく。やっぱりなんだか変、な、気がする。べつにスカートを履くのは初めてではない。だけど、こんなに短くて大胆に女の子らしいのは初めてだ。甘口コーデには辛口アイテムで攻めなきゃねー基本よねーなどといわれても何がなにやらさっぱり。とりあえず言われるがままにブーツを履かされバッグを持たされ、髪を弄られ、メイクを施され。もともとがくせのない地味顔なだけに、ここまで飾られると自分でもこれが誰だかわからない。
だいたい、いきなり着飾って現われても庄左ヱ門はびっくりするだけだろう。先日買い物途中に偶然会ったが、そのときはセーラー服の上にエプロンをつけて、腕から大根を吊り下げたまま秋刀魚を選んでいるという最低のシチュエーションだった。オバサン高校生といわれても何も反論が出来ない。
(もっと普段から気を使うべき?でもミニスカートに髪を巻いてネギ買ってる姿というのもなあ…)
ショーウインドウに映った自分の表情が完全に怯えきっていてなにやら可哀想になってしまった。にっこりと微笑んだら、その笑顔がすでに引き攣っている。恥ずかしい、居た堪れない。「誰」とか言われたらショック死する、かも、しれない。
そわそわもじもじしながら地下鉄の出入り口付近でぼんやりと立ち尽くしていたら、肩を叩かれてびっくりした。
「うわあ!?」
振り返ったら、虎若と金吾がにこにこ笑顔を浮かべて立っていた。
「伊助、偶然だな!」
身をちぢこませて、こくこくと頷く。金吾は品のいいストライプの細身のパンツにジャケットという組み合わせで、正統派美青年という出で立ちだった。授業のときにしかかけない眼鏡をかけている。伊助は首を傾げた。
「ふたりで出かけてたの?」
「ああ、土井センセーの課題片付けてきたとこ」
「あー、そっかあ!あれ面倒くさかったよねえ、私も庄ちゃんに聞きまくってようやくなんとか完成した感じ」
「あはは、俺たちも似たようなもんだ」
金吾と虎若は顔を見合わせて朗らかに笑いあう。金吾がにっこり微笑んで聞いた。
「ところで伊助、今日はいつもと雰囲気が違うんだねえ、どうしたの?」
「ああ、兵ちゃんにコーディネート頼んだら、こんな感じに・・・。なんか変だよねえ」
ぼりぼりと首筋を掻いてわざと女の子らしさからは離れたような仕草をしてしまう。本当はもっと、兵太夫みたいにキュートでいたいし、三治朗みたいに清楚で可愛らしくありたい。だけど今更、それを目指すのもなんだか気恥ずかしい。
「そんなことないけど。すごく可愛いよ」金吾はおっとりと品のいい笑みを浮かべて、それから隣の虎若を見た。
「な、虎若」
「え、あ、うん。いつもの伊助も可愛いけど、今日はまた違った雰囲気ですごく可愛いよ!!」
なぜだか顔中を真っ赤にして力説する虎若に伊助は救われたような気分になる。虎若はいいやつだ。
「虎ちゃん、ありがとう。そこまで必死な感じで言われると思ってなかったよ」
「え、」
はたりと、まるで今気付いたかのようにして、虎若が動きを止める。傍らの金吾を振り返ったら、苦笑を浮かべてこちらを見ていた。
「必死だね、虎若」
虎若の顔が熟れたトマトのように真っ赤になる。「あー、ごめん!なんか俺、今変だったよね」触ったら熱そうだ。真っ赤な表情を見詰めて伊助は笑う。すっかり緊張は取れていた。虎若の肩をバンバンと叩いて、いつものように大口を開けて笑う。は組メンバーとはもうずっと一緒だから、今更取り繕う気も起こらない。は組メンバーは互いが互いに恥ずかしいところとか狭量なところとか弱いところとか包み隠さず見せ合ってきた。可愛く見せようというのが今更なのだ。
「あー、こんな似合わない格好しちゃって、変に緊張してたけど、虎若のおかげで目ぇ覚めた気がする。ありがと。虎若大好き!」
満面の笑みで礼を言う。伊助は、大口開けちゃって、およそ女の子らしくない、とこの笑顔を評しているけれど、虎若にはきらきらのかたまりにしか思えない。可愛い。伊助は笑ったときに見える前歯がとても可愛いのだ。あと、眼がくるくる動いて、それも小動物みたいで可愛い。虎若は知っている。伊助は、怒った顔も泣いた顔も可愛い。
小学6年生のとき、ふたりで文化祭の準備のときふざけあっていたら、伊助が大道具を倒してしまった。咄嗟に庇って落ちてきた木材に額を切ってしまった。そんなことがあった。あのとき、木材を避けながら伊助はびいびい泣いて、鼻水と涙でぐっちゃぐっちゃの顔が、なんでだろう、すごく可愛く思えた。「痛くないよ、平気だよ」って言い聞かせながら、熟れたトマトよりまだ赤いその顔を、今すぐ抱き締めて笑わせてあげたいなあと思った。それから虎若は、ずっとずっと伊助に笑っていて欲しいと思っている。
伊助は虎若にとってきらきらのかたまりだった。


***


虎若はいーちゃんが好きだ。いーちゃんは庄ちゃんがすきだ。金吾はいい男だ。
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