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こっちをむいてよハニー

くくたか。しょーもない話。


恋人の過去の恋愛遍歴なんていちいち気にしてたらお前、いつまでたっても処女としか付き合えないぞ。
そういった鉢屋は目の前で不破にぶん殴られた。俺はもっともだと思いつつ、それでも気になるから仕方がないのだと溜息をついて、掌の中の手紙を畳み直す。
くだらない喧嘩をしたという自覚はある。
タカ丸が朝からいやに真剣に文なぞを書いていて、横から何を言っても上の空だった。立場上はタカ丸の上級生に当たる俺が、わざわざ四年生の長屋へ出かけていって、半刻以上もタカ丸に向かって構って構ってという素振りをしてみれば、嫌でも注目は浴びるだろう。タカ丸の同室になった綾部が同情の篭もった口調で、「先輩、彼は今恋文を書いてるから放っておいてあげてください」と軽口を言ったものだから、あるひとつの疑惑を抱えていた俺は、その場で無理やりタカ丸の筆を降ろさせた。そうしたらつけてすぐの墨がぽたりと畳に落ち、タカ丸が珍しく大声をあげた、というわけだ。
「何するんだよ、兵助ッ!」
「何恋文なんか書いてんだアホッ!」
「書いてないよ!恋文じゃない!」
「じゃあ相手を言ってみろよ!」
「優ちゃんだよ!」
「てめえこのやろう!!」
「あーっ!せっかく書いたのに、なにすんだばか!」
ぎゃいぎゃいと掴み合いの喧嘩を始めた俺たちの横で、綾部はいつものとおり平然としていた(らしい)。タカ丸は傷を追ったままで何処かへ行ってしまって、ひとり部屋に残された俺は、取っ組み合いの喧嘩の横でどうやら本を読んでいたらしい綾部に「いいスポーツですね」とけろりと言われ、脱力するより他なかった。
俺の手の中にある手紙は、あの時タカ丸が書いていたものだ。
「優ちゃんへ」
で始まるそれには、あんなに真剣に向き合っていたくせに、「元気です、そっちは元気?忍術学園は、都と水の味が違うので、慣れるまでに苦労をしました。お元気で」それだけしか書いていない。疑惑いっぱいの気持ちで読んだから、読んでから、しまった、と思った。
「謝っちゃいなよ」
とにこやかに不破が言う。不破が言うなら謝るしかない。不破は優柔不断だけど、何か判断下すときは、悩んだぶん決して間違ったことは言わない。それに、今回のことは俺が悪い。わかってる。わかってるのに、それでもまだすっきりしない気持ちなのは、タカ丸がまだ”優ちゃん”のことを大切に思っていることを知っているからだ。あいつが大切にしている記憶と、俺はどうやって戦ったらいい?


タカ丸を探しに外へ出たら、その姿はすぐに見つかった。事務員の小松田さんを捕まえて、その髪を弄っていた。小松田さんは歌うようにぷくりと唇を尖らせて足をばたばたさせている。どこまでもお気楽な人だ。あれで、タカ丸さんより年上っていうんだから俄かに信じがたい。そして、”優ちゃん”はその人の兄上だ。俺は小松田さんを通して俺の恋敵の人物像を探ろうとするけれど、どうもうまくいかない。小松田さんのようなふわふわした男なのか?いやいや、それは想像力が拒否をする。
「優ちゃんは元気、」
タカ丸が聞くのに、俺はなぜだか息を殺す。小松田さんは、元気だよ、とあっけらかんといった。
「奥さんとの仲もうまくいってるってさ」
「こべにさん、だっけ」
「そう、綺麗でやさしい人だよ」
「うん、じゃあお似合いだ」
タカ丸が笑う。眉が変な具合に寄ってる。辛いんなら笑わなきゃいいのに、と思う。自虐的なことするなよ、馬鹿だな、こっちが心配になるだろうが。
「でもおかしくてね、このあいだ喧嘩したっていうんだ」
「え?」
「原因はなんだと思う?・・・浮気騒動なんだよ」
タカ丸の瞳が丸くなった。兄ちゃんが、昔の恋文を大切にとってあって、それが見つかって喧嘩になったって。小松田さんの言葉に俺までひやひやして肝をつぶす。タカ丸はひどく慌てて、「そ、その手紙、読まれちゃったの?」もはや整髪どころではない。小松田さんはお気楽に、「知らない」と返した。
「でも今は仲直りしてるし、きっともうそんな手紙は、もや」

「ターカまるー!」

俺は思わず大声をあげて走り寄っていた。タカ丸の表情は変に引き攣っている。普段アイドルのようにキャアキャア騒がれているくせに、見る影もない、ひどく頼りない様子が、不細工だ。見ていられない。こんな情けなくて笑える姿は俺だけ知ってればいい、と思う。
「探してたんだ。委員会があるからお前もこい、な!」
「あ、う、うん」
ぐわしと腕を掴んで、ぐいぐいと引っ張る。背後で小松田さんが、「あれえ、僕の髪は?」声をあげたが、それは無視する。無意識とはいえ、タカ丸を情けなくした罰だ(ということにしておく)。
校庭を突っ切って裏庭の菜園のところまでずんずん歩く。
「ねーどこまでいくの」
「気にするなよ、あんなの」
「え、さっきのこと?そうだねー、気にはしてないけど、肝は冷えたよ、びっくりしたってば、ほんと」
「お前もうとっとと忘れろ」
「もう気にしてないよー」
「嘘つけ。いい加減俺に覚悟決めろって」
「え、あ、そっち?」
まいったなあ、とタカ丸は頭をかく。なにくさいこと言わせてんだお前、がらじゃねーんだよこんなの。文句のひとつでもいってやりたい。怒った顔で振り返ったら、年下の後輩は苦笑して、「へーすけ、やろう」と強請った。俺は眉を顰めて、けれど、いいよと頷いて(据え膳食わぬは男の恥)、やけくそみたいに吠えた。
「えー、くそ!今日は絶対泣かせてやる」
「この前ハッチ先輩が教えてくれた縛りやってみる?」
「 や っ て み な い !!」
「はは。あ、兵助、長屋までもどるの面倒くさいし焔硝蔵行こう」
「ほんとところ構わずだなお前」
「とかいいながら兵助足どこ向いてんの」
タカ丸の恋文だって?んなもん後生大事にとっておくな、燃やしちまえ。腹立ち紛れに心のうちで吐き捨てる。だけど、ほんとに燃やしてたら殴る、とか思っている。俺も矛盾している。悔しい、悔しい。一緒にいる時間の長さで昔を記憶を塗り替えられるなら、俺は決してこの人を離さないで、ずっと何処かにしまっておくのに。
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