伊助へ
先日は丁寧な手紙をどうもありがとう。いつも心のこもった手紙をありがとう。筆不精で滅多に返事を書かなくてごめん。今も迷いながら筆を執っているので、墨が乾いてしまって困る。
明日後から鷺嶽へ行くことになりました。仕事の話なので詳しい事はかけませんが、心配は要らない、大丈夫です。伊助の好きなまんじゅうを帰りに買ってきますね。
手紙を書くのは苦手なので、本当に何を書いたらいいか、困ってしまう。伊助に会ったら言おうと思うことはたくさんあるのに、それをうまく文にできません。つくづく風雅のない人間でごめん。先日家の納屋を整理していたら父ちゃんが母ちゃんに送った恋歌が何首かでてきて、懐かしがって家のものみんなで読んだのですが、呆れてしまうくらいまずかった。蛙が鳴くとそろそろ夏だから云々というような歌があるのですが、これなどは、ごく当たり前のことを読んだだけであって、どこが恋の歌かからっきしわからない。風雅のないのは、これも血かと諦めたような思いです。したがって今後もロマンチックな歌などは送ってあげられないからその点はどうかご了承頂きたい。(歌といえば、金吾が先日、庄左に習って喜三太に歌を送ったそうな。喜三太が大いに喜んでは組のみんなに見せてまわったそうですが、じつはその歌が庄左が手本に作ったそれを変えただけのもので、罰の悪い思いをしたそうな。は組で一番の色男はどうやら庄左のようですよ)
伊助はお元気ですか。季節の変わり目だが、風邪などひかないように滋養はたっぷり取ってください。先日取引先から高麗人参をたくさん分けていただいたので、それも一緒に送ります。粥に入れて食うのが一番美味ですよ。こちらは元気だから心配は要らない。
本当に、文というのものは何を書いたらいいやら困る。そうそう、伊助はもう忘れたかもしれませんが、一年の夏休みに、伊助は僕に手紙をくれましたね。手習いの一環では組のみんなに送ったのだと後で知ってなるほどと納得しましたが、じつはあの手紙を受け取ったとき、とても嬉しかったのですよ。あの時も、なんとか早く返事を書かなくてはと焦って、けれども何を書いたらいいのかわからずに困り果てたことをとても覚えている。何を書いたんだったか、もう忘れてしまいました。よほど不味い文だったろう、もし覚えていても、忘れてしまってよろしい。
拙い文もそろそろ終わりにしておく。ここまで読んでくれてありがとう。必ず帰りますから、僕のほうは心配要らない、のんびりと待っておいでなさい。それではお元気で。
この戦が終わればまた伊助に会いにいける。とても楽しみです。はやく、はやく会いたい。
虎若
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虎伊というほどでもなく。虎ちゃんは筆不精なイメージがある。でも、字体は柔らかくて読みやすそうな。庄左は丁寧なんだけど、少し固い。兵太夫はくせが強い。三治郎は丁寧で読みやすい。でも少し線が細い。乱太郎は柔らかで伸び伸びとしている。
伊助は手紙魔なイメージを勝手に持っている。近況を書いて送りまくり。今でいうところのメール魔か。
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