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こんなめに君をあわせる人間は僕の他にありはしないよ⑦

お仕事前に。


⑦ 急展開、あるいはいよいよ風雲は急を告げたか


狭い忍たま長屋の一室にぐるりと輪を作って胡座している。タカ丸が居心地悪そうにもぞもぞと肩を動かすのは、自分が今まさに命を狙われんとしている話題であるからか。
「5人いるな」
小平太が何故か意気揚々と宣言し、途端にカカカ、と鋭い音がして手裏剣が投げ込まれる。長次が近くにあった盆で受け止め、受け止めきれなかったひとつを食満が苦無で弾いた。キン、と金属同士が擦れ合う甲高い音がして、タカ丸はひい、と声をあげる。隣に座った仙蔵がぽんぽんと背を叩き、宥めた。
「大丈夫、八方手裏剣だ。見たところ毒も塗ってないし、当たってもまあ痛いだけで済む」
「痛いの嫌ですよう」
伊作は朗らかに笑い、「大丈夫、外に5人いるったって、こっちは6人だ」干菓子を掴み取ると、タカ丸にそのひとつを手渡す。「まあ、甘い物でも食べて、美味い茶でも飲んで、気をしっかり持って」
タカ丸は促がされるままに干菓子を口に放り込むと、まるでそれが気付け薬でもあるかのように茶で胃に流し込んだ。ほのかな甘みが、今ばかりは薬のように味気ないものに感じられて、不味い、と思う。
「抜け忍の捕縛か」
「以前にも狙われたことは?」
「あった、ような、なかったような…」
「はっきりせん奴だな」
文次郎がいらついた声音で言うのを、シャープな印象を纏う食満留三郎が制した。「まあそういうな、文次郎。ふつう抜け忍の捕縛など、わからないように遂行されるものだ」
「どこに所属していたんだって?」
「それが、祖父は仕事の一切を黙秘して逝ったので」
「優秀な忍者であられたのだな」
仙蔵が優雅に茶を啜る。
「いつまでこのままなのでしょう」
「なあに、相手が馬鹿でなければじきに止む。…今回のところは」
小平太がにっこりと微笑む。伊作が朗らかに笑って後を次いだ。「学園長先生にはすでにご報告してあるから、我々を取り巻いている曲者は、さらに学園内の先生方によって取り巻かれておるのだよ」
「ははあ、」
タカ丸が息を呑んだところで、「ああ、ほら、」小平太が促がすような声をあげた。「去っていく」
耳を澄ますよう仕草で示されたが、同じようにしてみても、よくわからない。これが、早くから忍術を勉強してきた者との差というものか。
食満がすらりと障子を開いた。周囲を軽く見渡し、「いないな」呟く。「行ったか、」仙蔵の静かな問いに「そのようだ」と短く返した。
「さて、本題だが」
伊作が噛みかけの干菓子を手に戻した。いつもの朗らかさはなく、低い声音が不吉な予感に肌を粟立たせる。
「学園長先生のご命令だ。いつもにこにこ明るいよいこがモットーの忍術学園に、何度も曲者さんに来訪していただくのはこちらの本意ではない。そこで、15日をもってこれを叩く」
「一掃か殲滅か」
「問わない。ただもう、来たくないなあという気持ちになっていただければそれで結構、だそうだ」
「ふん」
文次郎が鼻を鳴らす。了解の合図と受け取った伊作が頷くと、「よーっしゃ!」小平太が掌を鳴らして立ち上がった。「15日、合同演習の日か。うん、面白そうだなあ!」
「重要な任務をそのように言うものではないぞ、小平太」
仙蔵は落ち着いた様子で窘めると、また、はっはっは、とこちらも朗らかに笑って、茶を啜った。あまりの事態に青くなって震えているのは、ただタカ丸ばかりだ。
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