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子どもの体温

「すきなものをたべる」の回で突っ込みを入れている竹谷があまりにも子ども体型でかわいかったのでうまれたわけのわからんパロ。

---------- キリトリ -----------

小学生のころは六年生のお兄さんがすごく大人に見えた。
孫兵が小学校三年生のとき、孫兵には六年生に憧れのお兄さんがいた。竹谷八左ヱ門という名前のそのお兄さんは、孫兵の住んでいる地区で地区リーダーをやっていた。地区リーダーというのは、地区の子ども会のリーダーのようなもので、孫兵の通っていた小学校は土曜日や特別予定で一斉下校になった日は、地区ごとに分団と呼ばれる班を作ってみんなで帰る決まりだったので、そういうときに交通安全とかかれた旗を持って、横断歩道に立ってくれたりする仕事があった。
八左ヱ門はごわごわの硬い髪の毛をもっていて、あまり梳かれていなくていつもぼさぼさに乱れていた。太い眉毛をもっていて目がくりくりしていた。いつもにこにこ笑って、動物や昆虫に好かれていた。
ファーブル昆虫記が大好きだった孫兵が、ある日本を読みながら帰っていると、「本を読みながら歩くと危ないぞ」って注意したあとに、「おれもその本好き。あと、シートン動物記も好き。おおかみ王ロボって知ってる?おれ、その話が一番好きなんだ。うちにあるから、明日もって来て貸してやろうか?」といって、にこっと笑った。それが、孫兵が最初に八左ヱ門を好きだと思った瞬間だった。
孫兵は人見知りの激しい性格で、虫ばかりを可愛がってなかなか友達を作ることをしなかったから、孫兵が八左ヱ門になついて、彼の後ろをまるでひよこのようについてまわりはじめると、孫兵の親はそのことをとても喜んだ。八左ヱ門とはいっぱい虫取りをした。動物園や水族館にも出かけた。とても楽しい日々だった。
ところが、八左ヱ門は小学校の卒業と同時に引っ越してしまった。孫兵が手紙を書きたいから新しい住所を教えて欲しいと頼むと、八左ヱ門は少し困った顔をした。電話番号でもいいと熱心に頼み込んだら、八左ヱ門のお母さんが車から出てきていった。
「孫兵君、今日まで八左ヱ門と遊んでくれてありがとうね。でももう、ハチのことは忘れてちょうだいね」
どうしてそんなことを言われるのかわからなくて、孫兵は走り去る車を見えなくなるまでただただ黙って見つめていた。
今はもう、昔の話だ。


県内の色んな中学の制服が、青空の下ごった返していた。むくむくとわきあがる入道雲を見上げて、孫兵はカッターシャツの釦を二つ目までくつろげると、持っていた学校案内のパンフレットで胸元に風を送った。
「あっつー」
「高校見学ってさあ、なんで夏にばっかやるのかな。秋にやればいいのに」
「クーラーついてる学校あったらさ、今なら俺、即効そこに願書出す」
「あはは、わかるわかる」
連れの三之助と富松の会話を話半分に聞きつつ、孫兵はぐったりとグラウンド沿いに置かれたベンチに座り込んだ。三之助と富松に付き合っただけで、孫兵の受験予定校ではない。孫兵は県下で一番の進学校を受験することに決めている。午後からは炎天下の中部活見学だ。
「どこ行くんだよ」
と富松に声をかけると、「見たいのはバスケ。でも真夏の体育館に行く気になれん」と暑さに食傷した返事が返ってきた。
「俺、バレー見に行こーっと」
三之助がすたすたと歩き始めると、富松は「げ!」と声を上げる。三之助を一人で歩かせると必ず道に迷うのだ。
「俺も行くって!だからお前は勝手に動くな!・・・孫兵、お前どうする?」
「真夏の体育館は勘弁。適当に見学してるよ」
「オッケー。じゃあ、時間になったらこの場所で落ち合おうぜ」
「ん」
片手を挙げて富松を見送ると、孫兵は立ち上がってのたのたと裏庭に向かって歩いた。裏庭には大きな桜の木が植わっているから、いい日陰になると思ったのだ。
裏庭にたどり着くと、孫兵はそこで目を見張った。三メートル四方の場所にぎっしりとひまわりが植えつけられているのだった。太陽に似た大輪の花たちが、規則正しく植わって、一様に太陽を見上げている。黄色の鮮やかさが目を焼く。
「すごいな」
思わずつぶやいた。そのままため息をついて惚けたように小さなひまわり畑を見つめていた孫兵だったが、ふいにがさごそとひまわりたちが揺れたことに驚いて目を丸くした。
「・・・よいしょっとお」
ひまわりを揺らして間から出てきたのは小学生ぐらいの少年だった。小学生にしては背は高いほうかもしれない。細い手足にこんがりとよく焼けた肌。ぼさぼさの髪には、くもの巣が張っている。少年が身に着けているのは、高校指定の体操服だった。少年はどう見ても小学生だから、あれ、不思議な格好をしているな。この学校に初等部なんて併設されていたろうかと考え込んでいると、少年はきょとんと孫兵を見上げて、「あ、」と声を上げた。そのままあわてて駆け出していく。どうやら驚かせてしまったようだ。孫兵が首をひねってその背中を見送っていると、今度は背後で「おーい」と高校生の声がした。
「チュン吉は見つかったのかあ?」
振り返れば、ずいぶんと背の高い高校生。目が合ったので頭を下げると、「あ、見学に来た中学生?部活見なくていいの?」ともっともな言葉。なんとなく居辛く感じて孫兵が身を翻すと、
「チュン吉ここにもいねえわ。どこ逃げたんだろうなあ。飛んでってないといいけど」
と変声期前の少年の高い声がした。先ほどの小学生だ。孫兵は気になって、思わず振り返った。どうも、気になるのである。何か大事なことを忘れているような気がして、ひどく気になって仕方がないのだ。
振り返ると少年と目が合った。くりんとした大きな瞳は瑞々しいぶどうの粒を連想させた。太い眉が寄せられる。
「あ・・・」
思わず孫兵の口から声が漏れた。が、何と言いたかったのかは孫兵にもよくわからなかった。少年はじいっと孫兵を見つめている。お互いにお互いから目が離せなかった。
「・・・なに、知り合い?」
高校生が、小学生に声をかける。
「や、なーんか、どっかで見たことあるような・・・」
小学生が顎に指を添えて首をひねる。癖だろうが、ずいぶん大人びた仕草をするものだと孫兵は思う。
「ハチ、」
高校生が声をかけた。その瞬間、孫兵の脳裏に雷が落ちた。一瞬の閃光が、孫兵の記憶をフラッシュバックさせた。
「・・・ハチお兄ちゃん・・・!」
雷に打たれように動けない孫兵が、何かの天啓でも受けたかのように名を呼ぶと、ハチと呼ばれた小学生が、びしりと背筋を伸ばした。そうだ、この小学生、竹谷八左ヱ門にそっくりなのだった。今度は小学生が驚く番だった。孫兵を指差して、声を上ずらせる。
「あ・・・あれ・・・もしかしてお前、孫兵!?滋野宮小学校の伊賀崎孫兵!?」
「そ、そうだよ・・・!」
孫兵は何度も頷いた。
「君は誰?竹谷八左ヱ門くんの弟か何か?」
尋ねる孫兵に、小学生の目が曇った。じんわりと涙が滲むのに、孫兵は慌てる。それに助け舟を出したのは隣の高校生だった。
「っていうか、そいつが竹谷八左ヱ門だよ。本人」
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