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よいこわるいこふつうのこ

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034:手を繋ぐ(五年+タカ丸)

今度の合同演習のために街へ下見に出ることになった。「日曜なら一日遊べる、日曜にしよう」と三郎が提案すると、皆もとっくにそのつもりだったらしく当然のように「それしかあるまい」とにんまり笑顔で頷いたが、兵助だけが浮かぬ顔をして返事を渋った。
「日曜か、日曜はなァ・・・」
下見の必要がある。つくりの複雑な都会ならこれは絶対のことだ。だが、
「一日遊ぶのはなあ。俺は止しとく。下見が終わったら、悪いが俺だけ帰るよ」
と兵助が言うものだから、久しぶりでみんなと街の遊びができると楽しみにしていた八左ヱ門は、隠しもせず鼻白んだ視線を彼に向けた。
「なんだよ、何の用だ。付き合え」
と肩を抱いて唇を尖らせていう。兵助は「用ってほどのことでもないんだが」と口をもごもごと動かしたっきり、困った表情で、あとは八左ヱ門の大雑把な犬のような戯れを受けている。雷蔵が苦笑をして三郎を見遣った。三郎は空と呆けた表情で、
「街かあ、案内があればいいなあ」
と呟いた。それを雷蔵が引き継ぐ。
「案内なら、彼はどうだい、新しく入った四年の。ほら、確かもともと街で生まれ育ったというし」
くわしいはずだね、と兵助を振り返れば、彼は二重のぱっちりした瞳でぎょろんと五年の名物双子を見ていた。食いついた。雷蔵からしたら、それは予見されるべき当然の結果だったが、それにしても、あまりの食いつきのよさには笑ってしまう。何も知らない八左ヱ門だけが、「ったって、ツテはあるか」と少し困った表情を浮かべる。
「それなら、兵助が懇意だよ」
「懇意ってほどじゃ」
「変な謙遜するな。今度の日曜の件も、ヤツが理由なのだろ」
「誤解するなよ、三郎。俺はただ、頼まれて勉強を教える予定になっていて」
「なんだ、兵助、いつの間にそんな知り合いが」
「斎藤さんは火薬委員なんだ」
「ああ、委員会のよしみか」
「あ、ああ、ああ、そんなところだ」
「いやいや、もともとこいつはアルバイトで知り合っていて。斉藤さんが忍術学園に入ろうと決めたのも、兵助が」
「三郎、黙れ。打つぞ」
兵助の必死な言動に、雷蔵は苦笑し、三郎はからかう表情になっている。何も知らぬ八左ヱ門ばかりが、どういうことだと会話の流れに眼を白黒させている。
「とにかく。そういうことだから、兵助、斎藤さんにお願いしておいてもらえるかな」
「あ、ああ」
「ちゃんと一日中付き合ってもらえるようにお願いするんだぞ」
三郎の言に、八左ヱ門が横からはいる。
「いや、それは駄目だろう、三郎。だって斉藤さんとやらは日曜の午後は兵助に勉強を見てもらわなけりゃならんのだろ」
それに返したのは兵助だった。
「いや、そういうことなら斎藤さんもうんと言ってくれるだろう」
「あ、そうなのか?あれ、でも、いいのか?」
兵助の態度の変わりようにきょとんとする八左ヱ門を尻目に、「分かりやすいやつ」と三郎が呆れた顔で兵助を指差し、雷蔵の苦笑を買った。
 
 
 
兵助曰く、タカ丸は二つ返事で承諾してくれたらしい。待ち合わせは校門の前にした。久々知と八左ヱ門と三郎と雷蔵。四人が連れ立って校門へ参じると、とうにタカ丸は来ていて、彼のぶんの外出許可証を受け取った小松田秀作と談笑していた。
髪の色が明るい金に染められている。八左ヱ門は、ははあ、と目を丸くして唸った。それから感心したように
「四年だなあ」
と呟いた。この学園では、「四年である」ということは、容姿の美しさを称える言葉と同義である。今年の四年生は、容姿端麗の者が多い。
ぞろぞろと四人が近づくと、タカ丸は顔を上げて明るい笑顔を四人に向けた。
「忙しいところを付き合ってもらって」
「いいえ、僕も街で買い物をしたかったところですから」
「学園は山奥だから不便でしょう」
「まあ、時々は」
久々知は談笑に混じらない。気のない素振りをして校門の古びて黒光りした木目なぞを指で撫でている。この男が、自分でも自覚のないうちに年上の下級生に魅かれ始めていることを、雷蔵と三郎は気づいていた。兵助とタカ丸のやりとりの間に誰かが入ると、あからさまに面白くなくなった顔をして、ふいと余所を向いてしまう。子どものような所作だ。兵助はだんだん幼くなっていく。入学したての、あの誰より大人びていて誰にも懐かなかった兵助は、雷蔵たち友を持つことでよく笑い茶目っ気を出すようになり、タカ丸と出会って嫉妬を覚えた。
それをいいことだと雷蔵は見ている。「あいつこのままじゃ、どんな子どもっぽい忍者になるか」などと三郎はからかう。
その子どもを、タカ丸が明るい声で呼んだ。
「へいす・・・久々知くん、誘ってくれてありがとう」
「いや、俺の提案じゃないから・・・」
照れたように視線をそらす。誘ってくれてありがとう、は、本来は兵助こそが同級生たちに言わねばなるまい。
 
 
街をそぞろ歩きし大方の地形を掴むと、話は相手方の攻め方に及び、一気に話の様相がきな臭いものに変わった。こうなると話の主導権を握るのは三郎と兵助で、三郎は話のネタの豊富な男であるからどんな場面においてもそれなりの主導権はとるも。しかし兵助は、街に向かうまでの流行の音楽や芸能ネタにはすっかり閉口していたことを考えれば、これほど生き生きとよく喋るのはタカ丸には新鮮だった。
「久々知くんは、こういうのが好きなんだね」
「こういうの?」
タカ丸の呟きに、雷蔵が首を傾げる。
「演習、というか、・・・実戦が。俺なんかは、慣れていないのもあって、実技がくるたびになんだかドキドキしてしまう。教科のほうが気楽でいいなあなんて思うよ」
「好きというか・・・どうだろう、兵助は能力のあるぶんこういうことに集中しやすい性質なんだろうね。自分から戦いをふっかけるわけでもなし、こういうことが好きなのはどっちかっていうと三郎」
自分の名前が雷蔵の口から出たのを聡く聞きつけ、「ん、何だって?」と三郎が振り返る。なんでもないよ、とは雷蔵は言わなかった。そんな言葉で納得をする友人ではない。
「三郎はこういうのに熱中する性質だって話してたのさ」
「それをいうなら兵助だって」
三郎が、コンビニで買った街の地図を畳み込む。歩きながら地図を見遣っている姿は、はたから見れば高校生の旅行者だ。だが実際には、地図を見ながらトラップを張る場所、その方法を話しこんでいるのだから、やれ忍者というのは怖いものだとタカ丸は内心で身を震わせる。
「俺らがどうこうじゃなくて、雷蔵がもっと集中しろ!」
兵助がいかにも真面目に言い返すものだから、雷蔵は「はいはい」と慌ててふたりの間に駆け寄って行った。
話す相手を取られてしまったタカ丸が仕方無しにのんびり後ろをついて歩くと、より先のほうを歩いていた八左ヱ門がタカ丸に駆け寄ってきた。
「斎藤さん」
「タカ丸でいいよー」
「タカ丸、かき氷食いたくねェ?」
「え、食べたい」
「なんかこの先に行列できてるカキ氷屋あるんだけど!寄ってかねェ?」
「寄っていきたい!」
「んじゃ、けってーい!」
八左ヱ門がタカ丸の片手を掴んで、ぶんぶんと振り下ろす。子どものような浮かれた所作に、タカ丸も弾んだ笑顔で付き合う。結局、ふたりはよく似ているのだった。八左ヱ門がタカ丸の手を握ったまま、「うおーい、お前らー!かき氷食いませんかー!?」と声をあげると、三者三様に振り向いた。
呆れたような瞳で振り返った兵助が、八左ヱ門の手ががっしりとタカ丸のそれを握っているのをみて、ムッとしたように眉を潜めた。
「行かない。腹減ってない」
「でもタカ丸も行きたいって言ってる。なっ!」
「うん。久々知くんは、かき氷嫌い?」
「好きですけど、」
「食べる気分じゃない?」
「そんなこと無いですけど」
「じゃ、行こう」
笑顔で空いたもう片方の手のひらを差し出され、兵助は頬を赤らめた。睨むようにしてじっとその手のひらを見つめたまま、だが、それを握り返そうとはしない。そこまでの勇気と思い切りは、まだないのだろう。
「いいですけど」
「八左ヱ門、やったね!」
「やったね!」
イエーイ!とハイタッチを交わすふたりに兵助の眉間の皺はますます深くなってゆく。それを見遣って、とうとう三郎は耐え切れず爆笑した。
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