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よいこわるいこふつうのこ

にんじゃなんじゃもんじゃ
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飯食う人々。

それぞれのCPが飯食ってるだけのたるいSSS。

はまるとそればっかり食ってる久々知と好き嫌いのあんまりないタカ丸。
久々知の箸使いはとても綺麗だ。箸の上のほうを正しい持ち方で握って、一口サイズに器用にわけると、そのまま先ではさんでツイと口元に運ぶ。必要以上に大きな口を開けずに、啄ばむように運ばれた食事を口に入れると、もぐもぐとよく咀嚼して飲み込む。そうしてまた、飽きずに同じ料理に手を伸ばす。久々知は好物が出来るとそればかり食う。久々知にとって食事は悦楽であって、栄養のことだとかはあまり考えない。食事は、上手いもの好きなものだけ食べていればそれで生きていけると思っている。
久々知は先ほどから飽きずに豆腐ばかり食っている。
「もーう、兵助、他のものも食べなきゃ駄目だって。ほら、おひたしも食べなよ。ごはんも!」
タカ丸は茶碗を手にとったままあれこれと甲斐甲斐しく声をかけるのだが、久々知は「んー」と生返事してやっぱり豆腐ばかり食っている。仕方が無いから、タカ丸は己の皿から魚を切り分けると、箸で摘んで久々知の口元に運ぶ。
「ほら、あーん」
「あー」
ぱくん、と久々知の小さな口が魚を捕らえる。もぐもぐ。
「味噌が効いてておいしいでしょ。豆腐ばっかりじゃ駄目なんだからね」
「んー」
けれども久々知はやっぱり自分では豆腐ばかり食べる。タカ丸はぷくうと膨れて、今度はごはんを箸に乗せると、「ほら、」とまた久々知の口元へ運んでいく。
(なんだか餌付けしてるみたい)
タカ丸の飯は、久々知に食べさせるためばかりで減っていく。


食べ盛りの君たちへ!(食満と竹谷と子どもたち)
持ってきた握り飯にがふがふとふたりして喰らいつく。食堂のおばちゃん特製のお楽しみおにぎりは、三つの握り飯のそのどれもが味が違う。他人ともまるで味が被らないから、何の味があたるのか楽しみで食満も竹谷も大好きだ。食満が喰らいついたのは、喜三太の好きな海老天むすびだった。齧ってから、「お、」と言ってしんべえと握り飯を交換していた喜三太を呼んだ。「お前の好きな海老天が出たぞー」
「あ、いいなあ~。僕のと交換してください!」
「なに持ってる?」
「んと、おかかとしゃけとこんぶです」
「んじゃ、おかか半分と交換な」
喜三太がおかかのおにぎりを半分に分けて食満に渡すと、食満は海老天全部を喜三太に手渡した。
「僕も半分でいいです」
「子どもが遠慮するな。いっぱい食べて、はやく大きくなれ。俺の身長を越したいのだろ」
にこにこ笑って、丁寧に礼をいう喜三太の頭をぽんぽんと叩く。孫次郎はおにぎりの食べ方がへたくそで、ぼろぼろと草の上に飯粒を零していく。手のひらにも頬にもいっぱい飯粒がついている。竹谷は、あーあーと苦笑して、孫次郎の頬についたそれを摘んでは食べていく。
「孫次郎、ぎゅうって固く握ってから口に運べ」
「竹谷先輩、僕のおにぎりきゅうりだった」
「そっかあ、うまかったかあ?」
「うん。きゅうり二個はいってたから、先輩にも一個あげます」
孫次郎は手でにぎって生ぬるくなった一口サイズのきゅうりを竹谷のほうに手渡した。竹谷は口をあんぐり開けて、そのきゅうりを受け取る。
「うん、塩味が効いててうまい!ありがとな、孫次郎」
えへへ、と孫次郎がはにかんで笑う。好きなものはみんなで分けたらもっとおいしくなるって、ふたりの先輩はいつも孫次郎たちに教えてくれるのだ。だから孫次郎は、自分が好きだなって思ったものは絶対みんなに半分あげるようにしている。喜三太はお返しにこんぶおにぎりを半分くれた。しんべえは、おやつをこっそりわけてくれた。三冶郎は孫次郎の大好物の梅おにぎりをとっておいてくれた。虎若も平太も一平もおいしいと思うものを半分ずつくれた。独り占めして食べるより、ずっとずっとおいしい。先輩はすごいことをいっぱい知ってるなあと孫次郎は尊敬している。先輩たちは、惜しげもなくいろんなものを孫次郎たちにくれる。半分こじゃなくて全部くれる。先輩たちがお腹へっちゃうからいらないです、というと、竹谷も食満もぎゅっと抱きしめてにっかり笑って、「俺たちはもうおっきくなったからいいんだぞ」って笑う。
ご飯が終わってみんなして遊んでいたら、しんべえが、今日は大きな大福をいっぱい持ってきたの、と言った。みんなでわけあって食べような、と富松と孫兵が言って、ひとりひとりに大福を手渡した。孫次郎はもっちりとしてうまそうなそれに涎をたらしそうになったが、一平が、「これ全部先輩にあげよう」と言い出した。「先輩いつも僕たちにいっぱいくれるでしょ。くれてばっかりだから、そのお礼」
みんな、それがいいそれがいいと賛成して、大福をまとめた風呂敷を抱えて、竹谷と食満の元へ走った。ふたりは茶を飲みながら何かを楽しそうに話していた。ふいに竹谷の腹がぐーっと鳴って、竹谷は顔を赤くして大きく笑った。食満も声を上げて笑った。先輩、きっと喜ぶねとみんなで視線を交し合ったそのときだった。
食満が、ふところからふたつ草もちを取り出して、その一個を竹谷に手渡した。
「あいつらに内緒な。知ってるか、双葉屋の草もち。仙蔵がうまいって言うんでな、並んだんだが数が無くてな。おまけに高かったし。ふたつしか買えなかった。お前草もち好きだろう、ここのは特別うまいってよ」
「へえ、話には聞いてたけど、食ったこと無かったなあ。ありがとうございます!」
竹谷は嬉しそうに草もちにかぶりついた。「うまい!」とにこにこすると、食満もぱあっと花が咲いたみたいな明るい笑顔を浮かべた。「そっか、よかったな」それから、嬉しそうに草もちを食べる竹谷の横顔を嬉しそうにじっと見ていた。
孫次郎たちは互いに顔を見合わせて、それから風呂敷に包んだ大福をそれぞれに食べた。そよそよと柔らかい風が吹いて、うまいものを食べて火照った頬を撫でて行った。好きな人同士でわけあったあの草もちは、どんなにかうまいんだろうな、いつか食べたいな。ふっくらあんこがうまい大福を食べながら、孫次郎はうっとりと目を閉じた。


偏食の三郎とおおぐらいの雷蔵。
食べ盛りということを差し引いたって雷蔵は大喰らいだ。おやつと称して平気で白飯をかき込んだりする。どんぶりの日は、一杯じゃ「足りない」という。三郎は小食で偏食だから、そのほとんどを雷蔵に譲る。小食なのに定職で頼んだり大盛りで頼んだりするから、三郎はたぶん、雷蔵のためにそうしているのだろう。三郎の頼んだ定職には、その日、ふきのとうがついていた。ふきのとうは、三郎の好物だ。「よかったなあ」と嬉しそうに笑う雷蔵に、「ああ」と微笑み返して、三郎はふきのとうだけは完食した。あとは出し巻きたまごをひとかけと、白米を三口ほど食べ、味噌汁で流し込むと「ごちそーさんでした」と手をあわせる。それから雷蔵がもりもり食べるのを頬杖ついて幸せそうに見つめている。


は組とごはん。
みんなで車座になって土井先生の号令で「いただきます!」と一斉に手を合わせる。今日はとある事件に首を突っ込むためにみんなで山ひとつ越えるところだ。うすぐらい森の中での食事だって、みんなで一緒なら怖くない。しんべえが早々に握り飯を食べ終わってしまって、お腹減ったと情けない声で呟くのに、乱太郎が自分の握り飯を一つ分けてやる。するときり丸が、「しんべえ、我慢しろよ!」と厳しい声でしかりつけながら、乱太郎に自分の握り飯を半分渡す。きり丸が自分のものを無償で誰かに渡すなんてめったに無い。土井先生は苦笑して、きり丸に自分の分の握り飯を渡す。それから、明日の作戦について話す。「それはつまり、こういうことですね」と話を分かりやすくまとめる優等生の庄左ヱ門の横で、伊助はいそいそと沸かした湯をみんなに配っていく。ほかほかとあったかいそれは、みんなの心を暖める。庄左ヱ門の残した最後の握り飯を、湯の中に突っ込んで掻き混ぜる。庄左ヱ門は茶漬けが好きなのだ。「はい、庄ちゃん」と箸と一緒に椀を渡すと、庄左ヱ門は「ああ、こんな夜に茶漬けが食べられるなんて!」と嬉しそうに笑って伊助に礼を言う。伊助もにっこりと微笑んで返す。
それを見ている向かいの喜三太は、ぼろぼろと米粒を落としている。横に座った金吾が、「喜三太、よそ見するなよ」と呆れた声を出して米粒を拾ってやる。
「もったいないなあ」
「金吾、そういえば僕ナメさんたちのごはんもってくるの忘れちゃった」
「はいはい、後で一緒に探しに行こうな」
ひとときの食事が、これからの未来に緊張する子どもたちの心をほぐし、身体をあっためてくれる。つやつやとひかる米粒を、子どもたちは恭しく咽喉に流し込み、敬虔な気持ちで明日を待つ。
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