1のは女体化。きりまるとどいせんせーのあさ
目覚ましはかけない。土井半助という男は、ずぼらでだだくさなようでいてその実細やかなところにまで神経を張り巡らせているたちで、目覚ましをかけるとすぐさまぱっちり目を開いてしまうからだ。きり丸はその昔、早朝新聞配達のバイトの初日に目覚ましをかけ、3時半だというのに土井までぱっちり目を覚まし、あろうことか食事を作ってくれて「行ってこい」と玄関先で送り出されたことがあった。土井は前の晩、テストの採点で1時頃まで起きていた。その日以来、きり丸は目覚ましを使わず起きるようにしている。夏とはいえ、外は未だ薄暗い。きり丸は大きな欠伸をかみ殺すと、昨日の晩に作っておいた味噌汁とにぎりめしを温め直してもそもそと食った。先日粗大ゴミの日に拾ってきたちゃぶ台の上に、半助の書き置きが置かれていた。
「おはよう。気をつけていってくるように」
きり丸はそれを丁寧に折りたたむと、自分の勉強机の引き出しに仕舞う。その引き出しには、すでに何枚も同じような書き置きが眠っている。ジーンズと半袖シャツに着替えて、先日格安衣料店で1000円で買った安い甚兵衛を着た土井をまたいで玄関先へこっそり出て行く。
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