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よいこわるいこふつうのこ

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幼年期の終わり

金吾と喜三太。女体化1のは。


お昼休みは机をくっつけて、ふたりで向かい合ってお弁当を食べる。まだ学園へ転校してくる前、喜三太は友達の少ない女の子だったから、心配して金吾が構ってやっていたのが、そのまま名残として今も続いているのだ。今はもう、構ってやるというよりは、面倒を見てやっている、と形容するのが正しい。今だって、金吾は、喜三太の口の周りについた食べかすに手を伸ばしている。
「ついてるよ」
「ん」
手を伸ばす金吾も金吾だけれど、その指に顔を寄せて、とって貰おうとする喜三太も喜三太なのだ。これで、とってやった米粒を金吾がぱくんと食べたらさすがに叱り付けてやろうと団蔵は密かに決めていたが、さすがにそれはなく、金吾は育ちの良さを見せるように、自分のナフキンにその米粒を零した。
「あ、ほら、またついてる。喜三太、もっと大きな口あけておにぎり食べなきゃ駄目だよ」
「うん」
金吾の甲斐甲斐しさは、よく気がつくのを通り越して、もはや”お母さん”だ。団蔵があきれ顔で見守っていると、虎若も同じように見やって、苦笑している。
「いい感じだね」
「いい感じっつか、親子みてえ」
「あー」
虎若も苦笑混じりで同調する。ふいに団蔵が、「あのふたりってつきあってんのかな」と呟いた。虎若は、初めて聞いた、とでもいうようにきょとんとした表情を浮かべて団蔵を見返した。だって、とその反応に言い訳するように団蔵は言葉を継ぐ。
「すげー仲いいじゃん」
「ああ、うん・・・。でも、改めていわれると変な感じがするなあ」
「なんで?いつもいっしょだし、怪しく思っても当然じゃねえ?」
「いわれてみると、そうなんだよなあ・・・。でもなんだろう、ふたりが恋人同士って考えると、ちぐはぐな感じするなあ」
団蔵と虎若は、己もそれぞれの弁当にかぶりつきながら、教室の一角のふたりに、再び視線を送る。
おにぎりを食べ終わった喜三太が、じーっと金吾のお弁当を見やっている。金吾はいつも、タッパーにフルーツを詰めて持ってきていた。食事のバランスを考えてのことらしい。毎日でっかいおにぎりを三つ作って持ってきている喜三太に比べて、なんともまじめで繊細だ。そのフルーツが、気になっているのだろう。
視線に気がついた金吾は、タッパーにフォークをつけて喜三太に寄越した。一人分の量しかないが、惜しげもなく全部を喜三太に寄越した。
「メロンだけど、なめさんたちにはあげたら駄目だからね」
「うん」
「全部食べていいよ」
「うん」
金吾は口の中に含んでいた最後の食事を咀嚼し終わると、茶で流し込んで、後は黙って喜三太がせっせせっせとフルーツを口に運ぶのをみていた。小動物みたいに夢中で食べるその姿に、口元が緩む。
「おいしい?」
「うん」
「味わって食べなよ」
金吾はにこにこ微笑む。自分のほうが、美味しいものを食べた後みたいに、嬉しそうに微笑んで喜三太を見ている。


午後は移動教室だった。雨で運動場が使えないから、図書館で読書、ということらしい。教室で女子が着替えをはじめてしまうから、男子たちは昼休みもそこそこに教室を追い出されてしまう。自販で紙パックのジュースを買い、それを飲みつつ、団蔵と金吾と虎若もてろてろと校内を移動する。授業中はもちろん飲食禁止だが、胃袋の大きい男子高生の手にかかれば、紙パックジュースなんて、移動の最中には飲み終わる。
「仲いいじゃん」
と団蔵がストローを加えながら金吾にそう切り出したとき、金吾は「腹減った」と呟いて、缶コーヒーを選んでいた。
「え、なにが?」
金吾はきょとんとして団蔵を見遣る。虎若がその背中をからかうみたいに押した。
「腹が減るならフルーツを喜三太にやらなきゃいいんじゃないのってハナシ」
「ああ」
金吾が頷く。なにをいまさら、とでもいわんばかりの表情を浮かべた。
「別に、いつもと特別なことはなにもしてないだろ。初等部の時と同じだよ」
「初等部の時の仲の良さが、ずーっと変わらず続いてるのがすげえってことだよ」
仲のいい1のはメンバーだって、初等部の時と今では、関係が少しずつ変化している。昔のようになにもかも一緒というわけにはいかない。ましてや男と女だし、成長しているのだから、当たり前のことだ。金吾はかがんで缶コーヒーを手に取りながら、「だって未だ子どもだから」と誰にともなく呟いた。
「だってまだ子どもなんだ。俺だって、これでいいのかなって時々思うけど、向こうが変わるのを許さないからさ」
この前の雨の日。金吾を待っていた喜三太はどこかふくれっ面だった。喜三太のリクエストで街のほうへ寄り道をして、ぶらぶらとふたりで歩いて、帰りに寄ったカフェで、喜三太は拗ねたみたいに怒った。
「なんで最近無視するの」
「誰が?僕が、喜三太を?」
喜三太はでっかいパフェを前に、むすっとした表情で頷く。
「気のせいだよ。僕は別に喜三太を・・・」
「この前、ひとりで、音楽室まで移動したもん。ぼく、乱太郎たちが、一緒にいこっていってたけど、断って、教室で、ひとりで待ってたんだよ。でも、金吾結局帰ってこなくて、ひとりで音楽室いっちゃったじゃない」
「だって、部活のミーティング、理科室だったんだよ?教室に帰ってくるより、そのまま行ったほうが近いから・・・」
金吾の口調に責める物言いはなかった。どこかいいわけじみた焦りが滲んでいるのを、彼自身が自覚していた。正論を主張しているほうがどこか慌てている、奇妙な会話だった。けれど、喜三太はみるみるうちにしゅんとして、すっかり肩を落としてしまったから、金吾も酷く慌てたのだ。結局、ごめんねごめんねって、なにがごめんなのか自分でもわからないまま何回も謝った。けれど喜三太は、元気なく、「もういいから」と呟いておしまいだった。「もう、いいから」
「喜三太もかわんねーよなあ」
団蔵が同意するように頷く。喜三太だけだ。いつまでも子ども体型で、恋愛事に興味も示さないで、毎日なめくじがどーだとかごはんがどーだとか。辛辣な表現を使えば、幼稚なのだ。金吾もこの間のやりとりを回想しながら、そう結論づけた。ひとりで教室で金吾を待ち続けたことを、金吾に責めてみても、それは結局のところ八つ当たりだ。でも、昔から手のかかる女の子ではあったけれど、こんなに、人を振り回すような困った言動をしていただろうか。時々、金吾には喜三太の考えることがわからない。それは、金吾が変わったということなのだろうか。
金吾はくさくさする気持ちで、缶コーヒーを飲み干した。


移動教室がある時は、いつも最後まで庄左ヱ門が教室に残る。戸締まりや消灯の点検をするためだ。その日の昼休みは、委員長会の招集があったから、庄左ヱ門はぎりぎりの時間を、委員長会室から走って教室まで戻った。消灯は終えてあったが、ぽつんと喜三太が立っているのに驚いた。
「喜三太、次移動教室だよ」
「うん」
「どうしたの、誰か待っているの?」
「金吾」
庄左ヱ門はしばらく考えて、いった。金吾が昼休みに部のミーティングに出ていることは把握している。
「ミーティングで理科室に呼び出されていたような・・・。音楽室に近いし、きっとそのまま行くんじゃないかな」
「・・・」
喜三太は頼りない風情でうなだれている。普段子どもっぽいのに、その一瞬が頭を垂れた百合のようで、庄左ヱ門は少し頬を赤くした。
「約束したの」
「してない」
「じゃあ、きっとそのまま行くんだよ。僕ももう移動するし、喜三太も一緒に行こう」
「やだ、待ってる」
喜三太が変なところでぐずるので、庄左ヱ門は困ったように首をかしげた。
「どうしたの、喜三太。何かあったの」
喜三太は、黙っていたが、しばらくして、ひぐっ、と変な具合に喉を鳴らした。下唇をかみしめると、そのままぼろぼろと大粒の涙を零した。掌が、ぎゅうっとスカートのひだを握りしめるので、変な具合に皺ができる。ひーっ、と喉を鳴らして喜三太は泣き始める。びいびいと泣き始めるクラスメイトに庄左ヱ門もびっくりして、金吾が普段しているみたいに、頭をぽんぽんと叩いた。年頃の女の子が泣くのを初めて見た。
「やだよう」
と喜三太がうめくように呟く。
「ばあちゃんが、お見合いするから村帰ってこいって。ぼくまだお見合いとか、・・・やだよう。行きたくないよう」
「ええっ!?」
喜三太が田舎の旧家の一人娘だということは聞いていた。庄左ヱ門は目を白黒させる。どうしたらいいか・・・言葉を探しあぐねている内に、喜三太はすんすんと鼻を啜りながらも泣きやんだ。
目をぱちぱちしばたかせている。
「泣いたらちょっとすっきりした。庄左ヱ門、びっくりさせてごめんね」
「う、ううん。それより喜三太、今の話だけど・・・」
「16になったら結婚するって、昔からばーちゃん言ってたの。ぼくらももう15だもんね。来年だもん。前からわかってたことなんだけど、なんかやだなーって思っただけ」
喜三太は照れ笑いして、ごしごし手の甲で涙の後を擦る。
「みんなには内緒ね」
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