ときどきすごく少年漫画みたいな忍たまが読みたくなります。戦闘シーンだけで何ページ使ってるん?その技名自分で考えたん?みたいなやつ。
下はその系統なんで注意してください。(「それはもう忍者じゃねーよ」とかは言わないお約束)
あ、カタカナ名のやつが敵ってことで!
はあっ、はあっ。
激しい息遣いで雷蔵はどうにかこうにか立ち上がった。大きく肉を抉り取られた肩からは、鮮血が噴出している。こちらを睨みつける眼光の鋭さだけは揺るがないものの、身体を支えている両足は大きく震え、立っているのがやっとという有様であった。放っておけば、そのうち死ぬ。そう判断したトビマロは、「諦めよ」と一言重い口を開いた。
「諦めよ。お前はよく頑張った。私に対峙してにここまで生き延びていられること、褒めてやろう。しかしな、お前はもうすぐ死ぬ。お前は負けるのだ。無駄な悪あがきはこの世で最も醜い行為といっていい。さあ、諦めて私の前に首を差し出せ。さすれば楽に逝かせてやろうぞ」
「不破様ッ!」
傍らでつばきが叫んだ。悲痛な表情で首を何度も横に振った。
「いいです、もういいです。もうそれ以上戦わないで!もともと、私と城との問題なんです。私が城に帰れば片のつくこと。私も覚悟は出来ました。もう十分です。不破様、どうかもう私のために傷つかないで」
少女の涙に、だがトビマロは冷たい視線を放った。好い敵との死合いに無粋なことをいう女だと腹立たしささえ覚えた。トビマロは本来の任務を忘れ、雷蔵との死合いに酔っていたといっていい。トビマロの目にはとうに雷蔵しか見えてはいなかった。叩いても叩いても不屈の眼光でトビマロを射抜きながら立ち上がってくる雷蔵に、トビマロは不思議な高揚さえ感じていた。たいていの相手は、最期のほうは死の恐怖でトビマロを見ていなかった。そんな相手に止めをさすことを、彼はもうずっと長い間味気ないものと感じていたのだった。この男ならばきっと、断末魔の叫びも、それはそれは美しいに違いない。トビマロは雷蔵に降伏を勧めながらも、心の底では、彼が最期まで自分に抗いながら死んでくれることを願っていた。
「つばきさん、大丈夫。以前言ったでしょう、あなたを城には帰らせない。何があろうと絶対に」
雷蔵は低く腰を落とした。右肩は壊されたが、まだ足がある。後一度くらいなら大技も放てる。集中を高めるために雷蔵が長く低く息を吐き出すと、トビマロは大きく身体を震わせて、高い笑い声を上げた。
「そうか、まだやるのか。まだやる気なのか、お前は。まだ私を楽しませてくれるというのかあああ!」
嬉々とした表情で、トビマロがこちらに走り来る。雷蔵はじり、とつま先をわずかに動かして間合いをつめると、一瞬で距離を掴み、彼の必殺技のひとつである”とんび”を仕掛けた。くるん、と軽業師のように体が宙で一回転し、間合いが限りなく近くなったところを、相手の咽喉めがけて思いっきり蹴り上げるのだ。技のタイミングは完璧だったが、トビマロは自分の咽喉を雷蔵の爪先が叩くその一瞬を計って、たくましい両腕で雷蔵の足を掴んだ。
「これを折ってやればもう立てまい」
「・・・ッ!」
「さらばだ、不破雷ぞオ・・・ッ」
トビマロの言葉がすべて言い切られるより先に、彼の巨体は横の岩に叩きつけられた。彼を受け止めた衝撃で、岩はばらばらに砕け散った。
「おのれ、何者ッ!?」
口から零れでた血を拳でぬぐい、自分を飛ばして相手を見遣ると、そのままトビマロは固まった。そこにいたのは、傷ひとつ負っていない雷蔵だった。慌てて横を見ると、確かに息も絶え絶えの雷蔵がこちらを睨んでいる。
「どういうからくりだあ!?」
叫んだトビマロに、今来たばかりの雷蔵は、ぽきぽきと首を鳴らして不適に微笑んだ。
「どうだ、”さかさとんび”の味は。これはな、回転を逆にかけてお前の脳髄に思いっきり蹴りをぶち込んでやる技でな、うまく入ったら二刻は動けん」
にたり、と微笑むさまは、同じ雷蔵の表情でもどこかふてぶてしく見える。トビマロが立ち上がって無粋な輩に鉄槌を下してやろうと立ち上がった。しかし、身体が己のものではないように動きが利かないのだった。
「なんだと?!」
慌てふためくトビマロを、ふたりの雷蔵が見下ろした。
「これはどういうことだ」
「すまないが、お前にはここで脱落してもらうよ」
血だらけの雷蔵が、構える。その横で、鏡写しに同じ構えを取りながら、もうひとりの雷蔵が不適に笑った。
「あんたの敗因を教えてやろうか、トビマロ。不破雷蔵をひとりしかいないと思い込んだことだよ」
よくわかんないけど楽しかったらそれでいいよね!
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