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ぼくらは男の子①

三年生メインで上級生を絡めた性の目覚め話。
春画とか赤ん坊とか性交とかそういう言葉は嫌いよという方はお読みにならないでください。
三年生に関してホモはあんまりありません。


その物語をするには、まず三年生たちの話から始めなければならない。忍術学園の三年生たちは、迷子学年といわれる。脅威の方向音痴に、想像力の迷子、表情筋の迷子に感性の迷子。とにかくなにかしら迷ってばかりの彼らは、その日、学園の隅に捨てられていた春画本をたまたま目にしてしまったことで、全員が性の目覚めという成長期の大きな袋小路に迷い込んでしまったのである。
赤ちゃんはどこからやってくるの?
という疑問符を、彼らは抱いた。正確にいうと、女のどこからやってくるの、ということである。それから、どんな方法で赤ちゃんはお腹のなかに入るの、という疑問も合わせて彼らを苛んだ。
始まりは、屋外講習の帰り道である。夕刻になりすべての課程が終了すると、そのまま長屋へ戻ってもよいことになった。講習が行われた火薬庫からいつもは通らぬ薬草園の並ぶ薮道を行くのが一番近い。わいわいと幾人かで連れ立って楽しく帰っていたところ、先頭を歩いていた浦風藤内がはたと立ち止まった。次々と数珠繋ぎで玉突き事故が起こって、文句を云わんと彼の背後から「とうない~っ急に止まんなあ!」などと覗き込むと、藤内はなにやらまじまじと地面を見下ろしている。なにかあるのかとその場にいた全員が視線を下にやると、そこには、思わずのけぞりたくなるようなグロ画像――もとい、春画本が落ちていたのである。
美しい女房が魅惑的なウインクを決め、裸で大股を開きながらこちらを見ている。股の中心は薄く墨塗りされてぼかされてよく見えない。
「あ、春画本だ。先輩のかな」
藤内のクラスメイトの三反田数馬が声を上げた。先輩のかな、といったのは、春画本の所持が三年生まで認められていないからである。それにしても、わざわざ誰かの目に留まるようにページを開けて捨てていくというのは、なんとも性質の悪い悪戯である。もっと小さな、例えば一年生の目に触れていたらそれこそかわいそうだったと数馬は溜息をつく。そうしてそれを指でつまみあげるようにして拾い上げた。
「捨ててくる」
すたすたと焼却場まで持って行こうとするのを、次屋三之助と神崎左門が背後から呼び止める。
「待った!もっとじっくり見てからにしようぜ!」
「ええ~!?」
数馬は呆れたような視線をふたりに向けた。数馬はあまりこういうのに興味がない。興味がないというより、汚らしいような、嫌悪感まで抱いている。
「こんな泥だらけの読むことないじゃん。街で新しいのでも買ったら」
「買うのは恥ずかしい」
「うん、大体、春画本は規制がかかってるから18歳以下は買えないんだぞ!」
「だって、でも、先輩たち持ってるじゃん。18歳じゃなくても持ってるじゃん」
「先輩たちはいいんだよ」
「そうそう、先輩たちは勇者だもんな。キレて下級生に焙烙火矢のストック全部投げつけたり、夜中ギンギンなんて放送禁止用語ぎりぎりの鳴き声あげて深夜徘徊したり、大声で笑い声を上げながら塹壕掘り進めたり今更朝顔観察に嵌ってみたり、・・・よほどの勇気がないと出来ないことを軽々とやってのけてる」
「でも俺たちは駄目」
「そう、俺たちは可憐で繊細な三年生。そこまでの勇気はとても出せない」
「無理だよな、」
「うん、無理、春画本なんて買えない」
数馬は白んだ瞳で、ふたりに春画本を放った。おーっ、と二人は歓声を上げてそれをキャッチする。誰かが興味を持って眺めれば、つい自分も気になってしまうのが好奇心の強い少年期にはありがちのことで、結局その場にいたみんなして春画本を覗き込む流れになった。
ドキドキしながら興奮冷めやらぬ態でみな頭をぶつけ合っているものの、こちらに向かって女房が微笑んでいる――しかも尻を突き出すというみっともないようなポーズで――意味をよく理解しているものは誰もいないのである。ただ、春画本イコール大人イコールそれを眺めている俺たちという方程式に酔いしれているだけなのだ。主に左門などはそれが顕著で、ページを捲るたび、女房のとるポーズに対して指をさしてげらげら笑っている始末である。
「えーなんでこいつ水着姿で河岸に立ってるの、これじゃ変質者じゃん!」
藤内は顔色を蒼くして、口元を抑えつつ、「なんかよくわかんないけど気持ち悪くなってきた」と顔を背けている。数馬は「僕、こういうの嫌い」と最初ッから離れたところに立っている。三之助が、まじまじと見つめながらふいに、「女ってどっから赤ん坊を産むのかな」と呟いた。富松が顔を赤くしながら、「そういう話、俺らはまだしちゃいけないんだぞ!」と呟く。
「なんで?」
「なんでもだよ!留三郎先輩が言ってたんだ。まだそういう話は俺らには早いんだ」
「ならいつならいいんだよ」
「知らねえけど、そのうち先生が教えてくださるんだろ!知らねえけど!」
「俺、今知りたい」
「じゃあ先生にお訊きしてこいよ」
「だって訊いたらいけないことなんだろ、怒られたらどうするんだよ!」
「じゃあ訊くの我慢しろよ」
「だって知りたくなったんだよ」
ふいに左門が口を開いた。
「俺、今年の夏に家帰ったとき、母ちゃんの腹が膨らんでてさー、デブになったって言ったら殴られて、なかに赤ん坊がいるんだって教えてくれた」
「腹切って出すのか?」
三之助と富松が目をむく。富松は頭の中で、とんでもない想像を膨らませてしまったらしく、「あわわ、てえへんだあ~」と情けない声を上げて顔を真っ青にしている。藤内は、うぷ、とこみ上げてきたものを無理に飲み込んで、「耐え切らない」とか細い声で呟いた。数馬は外の生徒よりは知識があり、呆れた様子で溜息をつくと、
「女性は赤ん坊をほとからだすんだよ」
と一言言った。
「ほと?」
「春画で言うとどこ。描いてある?」
「あるよ、ぼかしのはいってるとこ」
「なんでぼかすの」
「・・・いやらしいところだから」
数馬の顔もだんだん赤く染まってゆく。首を傾げたのは左門だった。
「赤ん坊はさあ、恵みの宝なのに、なんでそれが出て来るところがいやらしいんだ?」
数馬はその疑問に答える術を見つけられなかった。加えて三之助が、「どうやって赤ん坊を腹の中に入れるのかなあ」と呟く。数馬もそこまでの知識はなかったから、終いには怒ったような顔をして、「知らない、先輩に聞けば」といって、春画本を焼却場へ持っていってしまった。
さて、取り残された仲間たちは好奇心を抱えてたまったものではない、左門が、「孫兵なら知ってるかも!あいつ、ほら、生き物のことすっげー詳しいし!」というのでみんなしてじょろじょろと孫兵の部屋へ詰め掛けた。孫兵はちょうど風呂に入りに行くところだったので、全員で風呂の準備をして、風呂で話をすることになった。
「赤ん坊の出来方と生まれ方?・・・つまり、お前たちは人間の生殖方法と出産方法が知りたいわけか?」
左門のつたない説明を、孫兵はそうまとめた。
「よくわかんねーけど、そう。孫兵知ってる?」
「簡単にしか知らないけど。性交をすると腹のなかにある袋に赤ん坊が入るんだよ。で、女性のほとから生まれるわけ」
「せいこう」
「交尾のこと」
「交尾って虫のすることだろ」
「人間もするんだよ」
「違うだろ、だって、虫と人間じゃ体が違うじゃん」
「尾がないかわりに別のところをまぐわせるんだよ、一緒だろ!」
「どこまぐわせるんだよ!」
「それは知らない」
「中途半端だなあ~」
「だから最初ッから詳しくないって言ったろ!」
「もういいよ。じゃあな、虫だけ野郎!」
左門の言いように孫兵はむっと顔をしかめると、浴槽から風呂桶に手を伸ばして、浴場から出て行こうとする左門の頭にそれを投げつけた。パッコーン!と小気味いい音が響いたが、石頭の左門は痛いとも言わず、怒った様子で振り返って、「なにすんだばか!」といったので、そこからはもうお互いがのぼせるまでま殴り合いのけんかになった。

続く。
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