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人でなしの恋⑤

妖怪パロ。
食満竹で性描写があるので気をつけてください。

---------- キリトリ -----------

三郎が山に帰らなかった夜、鵺もまた山には居なかった。夕刻までいつものように食満の屋敷で働いて、帰ってきたのだが、眠れないので再び人間に化けて食満の屋敷に向かったのだった。
真っ暗な闇夜を食満の屋敷まで急ぎながら、鵺は、己が狂っているのではないかとひやりとした。三郎狐は人間に深入りするなといった。それはそうだと鵺も思う。人間と妖怪でははじめから棲んでいる世界が違う。交わることなどできはしない。それなのに、こんなふうに、人間に化けていそいそと屋敷へと急ぐ己を、鵺はもはや手遅れだと感じていた。逢いたい、逢いたい、逢いたい。逢って、何でもいいから話がしたい。いや、言葉なぞなくてもいいのだ。ただとなりにあって同じものを見るだけでもいい。離れがたい、と感じていた。そうして、そんなふうに考える己の心をもはや物狂いだと自嘲した。もし己が人間であればどうだったろう、と最近はよく詮無いことを考えてしまう。もし人間だったら、人間になれたら。
とり止めもないことを考えているうちに食満の屋敷に着いた。
明日は大切な日だ、もう家人は寝静まっているだろう。鵺はさてどうするかと思案して、結局猫に変幻すると、高い壁を飛び越えて花梨の匂いが満ちる庭へと降り立った。逢わずに帰ろう、せめて、顔だけ拝んでからこっそりと去ろうと思っていたのに、屋敷の奥から、「誰だ」と声がした。食満が、灯りもなしに、白い月明かりを頼りに庭のほうへ出てきた。寝着のまま縁に立って、庭を見渡す。寝ていなかったのか、眼は冴えているようだった。猫の姿だから然しておびえる必要も無いのだが、鵺はびくびくとして草葉の陰に隠れた。ふいに、食満が、
「・・・八左ヱ門?」
と名を呼んだ。その響きがあまりに切実で、恋うようでありいとおしむようでもあったから、鵺は心の臓が苦しくなった。
食満は、姿も見えぬのに、来訪者は八左ヱ門だと思えて仕方が無かった。気配がするのだ。だが、探してみても庭には何も居ない。気のせいだったか、恋うあまり夢でも見たか、と背を翻して屋敷へ戻ろうとしたときだった。ふ、と目端に愛おしい青年の姿が見えて、食満は振り返った。花梨の木の下に、八左ヱ門が立っている。少し頬が赤く染まっていた。はにかむような、それをこらえるような、不思議な表情で、ひたと食満を見つめていた。
「・・・八左ヱ門、やはりお前か」
「こんな時間にごめん。どうしても逢いたくて、」
「気にするな、逢いたいときにこればいいんだ」
食満は屋敷のものを起こすことはせず、こっそりと裏から酒と塩を盛ってきた。縁に並べて、二人でそれを味わった。月の白い、いい夜だった。庭のほうからりいりいと虫の声が聞こえて、遠くの山でほうほうと梟が歌っていた。冷たい風がそよそよとふたりの頬を撫でた。
「いい夜だ」
「うん」
「満月の夜が一番美しいというが、こうしていると、欠けた月もそれはそれで美しい」
「秋は月が白く見える、俺はそれが好きだ。夜なのに明るくて、色んなものが見えるだろ、昼とは違ったように見えるのがまた面白いんだ。白い月の夜に見えるものは、みんなどこか、あやかしじみて綺麗だ」
食満を振り返ると、彼の瞳は、まっすぐ八左ヱ門を見つめていた。白い月明かりを浴びて、彼は美しかった。腕が伸ばされて頬に触れるのを、八左ヱ門は拒めない。頬に触れた手のひらは温かだった。
「寒かろう、もっとこっちへ来い」
こっちへ来い、といいながら、食満は自分から膝を摺り寄せて八左ヱ門に近づき、彼を抱きしめた。
「明日鵺を退治たら、お前を俺のものにしてもいいか、」
八左ヱ門は腕の中で首を横に振った。食満が覗き込んでくるのを、深く俯いて熱っぽい視線から逃れるように横を向いた。
「嫌か、」
「明日じゃ駄目だ、遅すぎる。今日ならいい」
食満が息を呑んだのがわかった。そんなことが嬉しく、八左ヱ門ははにかむように微笑んだ。そのまま太い腕に抱きしめられて唇を貪り吸われた。妖怪は、こんなふうなまぐわりはしないから、八左ヱ門はひどくどきどきしていた。知っている、人間は、愛するものと身体を繋げるのだ。詳しいやり方を八左ヱ門は知らなかったから、食満にされるがままに愛された。身体の隅々を白月のもとに暴かれて、身体を火照らせた。食満の愛し方はどこまでも優しくじっくりと丁寧だったが、何も知らない八左ヱ門は獣のようだと思った。行為の間中、「好いか、」「ここはどうか、」と尋ねられるのをそのたびに、「わからない」と首を横に振った。好いとはなんだ、ただただ熱に浮かされているようで、苦しめられているようでもあり、労わられているようでもある。奪われているようでもあり、与えられてもいる。もう何もわからない。自分ばかりが総て裸にされて暴かれて、食満ばかりが衣服を着て、八左ヱ門を好いようにするばかりなのが悔しく、「ひどい、ひどい、」と八左ヱ門は泣いた。
「俺にもお前をおくれ」
「やろうとも、やろうとも」
膨れきった硬い楔で射抜かれて、八左ヱ門は苦しさにも似た快楽のなかで、明日ではなく今日もう自分は死ぬのだと思った。激しく突き上げられるたび、ああ、ああ、と声にならぬ声が漏れて、鵺はこの行為だけで自分は幾度啼いたろうと思った。こんな良い思いをするかわりに、どこかで人間が死んでいるのだな、俺のこの声が殺すのだ。鵺はしっとりと濡れた心でしみじみとそう思い、自分は酷いあやかしだと思った。退治られても仕方がない。この男の母親も俺が殺したのだ。
(俺は明日、この男に殺されるのだな)
八左ヱ門は自分を退治る男を抱きしめて、その額に、頬に、唇に口付けた。そのたびに、愛している、愛しているとまじないのように唱えた。恋は、乞いだ。何度も口に出せばそれは言霊となって力を持つ。食満は、腕の中でしなやかに背を反らせる男の肉体を、飽くことなく掻き抱いた。八左ヱ門の腕が、食満の黒髪を掻き混ぜる。開いた口からは、言葉にならぬうめきがひっきりなしに漏れている。ああ、ああ、と鳴き声のようだったそれは、いつしかひい、ひい、と鵺の鳴き声のようにも聞こえてくるのだった。食満は母親の死んだ夜を思い出して胸が締め付けられるような切なさを覚えた。ああ、鵺よ、どうしてお前はそんなにも鳴くのだ。なにを乞うて鳴いておるのだ――。
食満の突き上げが激しくなった。腿を高く抱えられて、身体の一番深いところに飛沫を浴びせかけられた。
「ああっ」
と八左ヱ門が高くひと鳴きして、それは終わった。
ふたりで身体を横たえて、互いに身体を擦りあった。そのこには同じ人間としての肉体がある。だが八左ヱ門は切なげに、「俺はいつかお前と同じものになりたい」と言うのだった。
「同じもの?」
こっくりと八左ヱ門は頷き、それからいそいそと着物を着込んだ。「帰る、」というので、食満は朝までいればいいといったのだが、八左ヱ門は首を振った。それから、食満の腕を取って、
「明日頑張れ」
と言った。
「上手くいくよう俺も祈っている。きっときっと、見事鵺を退治て見せるのだぞ、留三郎」
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