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雪が降ればいい

連載は小休止です。

玉三郎と九丁目。
現パロ。昭和の匂いがする。


理性なんかもう何処かへ吹っ飛んじゃってただ擦れる感覚が気持ちがよくてがっつんがっつん腰を使っていたら、いつの間にか俺の下で九丁目は伸びていた。しまったな、やってしまった、ああもうおれってやつはと頭を抱えたいほど深く反省したが、快楽をそのままにすることも出来ずに、とりあえずそのまま腰を使って上り詰めてから楔を引き抜いて、俺はとりあえず九丁目の身体を拭くと上から布団を被せた。
こんなことももう三度目だ。
散らかった部屋の真ん中にむくりと置きあがって、テーブルの上の飲み残しの缶ビールをあおる。冬とはいえ、すっかり温くなったそれはお世辞にもうまいとはいえず、俺は近くに散らばっていたさきいかを齧りながら、何度も新しいものを冷蔵庫から出してこようと考えたが、そのたびに後で買いにいかなくちゃならなくなることを思ってうだうだと我慢をして過ごした。すっかり意識を手放してしまった九丁目の寝顔をぼんやりと見ていたら、頬に涙の跡が残っているのに気付き、ああそういえばこいつを抱こうとしたとき嫌だ嫌だと繰り返されたっけかと何とはなしに思い出した。俺は酒が入ると誰を抱いてるんだかよくわからんようになるので、よくめちゃくちゃをやって、それでこいつは嫌がる。今日は夕方から電車に乗って隣町にあるデパートへいき、子どもたちのプレゼントを買ってくるのだと張り切っていた。何かってやるつもりなんだと尋ねたら、さあまだ決めていないけれどゴジラの人形はどうかなあなどとわくわくして言うもんで、俺は何でだか可哀想になっちまって、今の子どもはマセてるからよ、んなもんじゃよろこばねーよ、よしとけよしとけ、と言った。九丁目は子どもたちにプレゼントを買う金があったら酒でも買おうぜといわれているとでも思ったんだろうか、嫌な顔をして、それっきり黙った。別段俺はそんなことを言いたいわけではなかったが、ただ、俺もこいつのセンスもお世辞にもいいといえねえことはしっているし、だいたい、子どもたちっていうのが凄いんだ。豪商の息子がいるかと思いや、銭のことしか考えてない守銭奴はいるし、あとひとりはまあ、貧乏性っぽいから俺たちと感性は似てるかも知れねえが。俺たちの親切が、子どもたちの喜びにそのまま繋がるとも思わない。九丁目がわくわくしてやったことが、結果不発に終わってしまうのは、辛いことだなあとそう思ったのだ。
ビールを飲み干して、冷蔵庫を空けたら一缶も残っていなくて、俺は溜息をついてジャンパーを羽織った。近所のコンビニに行こうともそもそ立ち上がる。九丁目を見たら、すうすうと寝息を立てていたので、そのまま放っておくことに決めた。
靴下の上にサンダル履き、トレーナーの上にジャンパー。俺もきちんとすればそれなりのいい男のはずなんだが、こんな格好でふらふらイルミネーションの下を歩けるまでになっちまってるんだから草臥れてる。身奇麗にして、ナンパでもしてみようかとふと思う。多分、成功するだろう。そうしてロマンチックな一夜を名前を覚えることもしない女としっぽり過ごすのだろう。
(…めんどくせえなあ)
こんなことを考えてしまうのだから、年の瀬だからって浮かれるはずもなかった。駅前の大通りを行っていたら、「やい、玉三郎」と声がして、振り返ったら見知った坊主がミニスカートを履いてブルセラのポケットティッシュを配っていた。
「きり丸か、おめえなにやってんだクリスマスに」
「バイト」
「明日九丁目と食事行くんじゃなかったか」
「おう、明日は稼げねーから今日働いてんだよ」
つくづく見上げた根性だ。生きるために恥も外聞も捨てた守銭奴が尋ねる。「玉三郎はなにやってんだ」
「酒買いに行くとこだよ」
「さっきまで何やってたんだ」
「ああ、適当だよ、適当」
「まァた九ちゃん泣かしてんじゃねーのォ、ほんとサイテーだな、おっさん」
「うるせーよ、ガキが」
言い合っていたが、俺の後ろをでれでれと鼻の下伸ばしきったじーさんが通った途端、きり丸はにっこり笑って裏声で「どうぞお」とティッシュを配り始めたので、俺は白けた思いでそこを退いた。


コンビニでビールを買うついでに、250円のショートケーキを買って部屋に戻った。そうしたら九丁目は消えていて、財布もなくなっていたので、俺はしまった逃げられたと思って、アパートの外に出た。ジャンパーを羽織ってこなかったので寒い。しかし、取りの戻るのも今更だし、自販機で缶コーヒーを買ってちびちび飲みながら公園までふらふら歩いた。真っ暗な闇のなかには、誰もいない。星は結構綺麗に見える。ただ、俺はそっち方面の情緒は特にないから、あー、星がでてら、で終わる。公園からでてまたとぼとぼ歩いていたら、背中で九丁目の声がした。
「玉三郎さん、どうしたんです?」
「お前どこ行ってたのよ」
「あ、お酒きれてたみたいなんで買ってきましたよ。寒くないですか、」
「寒いよ」
俺は飲みかけのコーヒーを手渡す。
「おら、これやるよ」
「ありがとうございます」
「プレゼント買いにいけなかったな、夜になっちまってな」
「ああ、朝仕事行く前に近所のコンビにで菓子袋でも買ってきます。あの、靴下に入ったやつ」
「ああ、うん」
俺は寒気で緩くなった鼻をススンと啜り上げて、九丁目のぶら下げているコンビニのポリ袋を取り上げる。冷たい缶ビールの重みが、指に食い込んで痛い。
「家にケーキ買ってあるぜ」
「え、凄いですね。紅茶とか買ってこればよかったなあ」
「自販で買えばいいや」
しみったれたクリスマスだけれども、気まぐれのような心で、祈る。神様、俺は今日はこいつに優しくしたいです。優しくさせてやってください。何にも出来ないし、特に喜ぶようなことも思いつかない、金もねえけど、とりあえず、家に帰ったらキスをしよう。額に、頬に、触れるだけの優しいキスを。
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