6年生現パロ。
「クリスマス遊ぼう」とメールを入れたら、仙蔵からは速攻「無理」と2文字できてそれっきり、続いて食満が「悪い、もう予定入れちまった」――多分デートだ。なんか腹立つ、伊作は「クリスマスくらい女の子と遊びなよ(^_^;)」余計なお世話だっつうの!最後に文次郎、あいつは真面目で堅物だから、「っていうか俺ら受験生」。長次にいたっては返事も来んかった。
今が18の大学受験を迎えためっぽう忙しい(はずの)冬だとは知れている。そうはいっても、俺らだってこれで最後だし。卒業間近の最後の冬だし。仙ちゃんは京都の超頭いい学校に行くんだって決めてる。文次郎は、第一志望の大学は東京だけど、京都と悩んでるっぽい。もしかしたら京都にするかも、って言って、それを仙ちゃんに教えてやったら凄く不細工な顔になって、「そんなことになったら文次郎を速攻ぶっ殺す」とか言ってた。同じ大学通えるなんて楽しそうなのに、俺は羨ましいけどな。食満はえーっと、仙台のほうだったかな、行くっていってた。長次は地元。俺も推薦で決めた大学が電車で一時間のとこだから、自宅通い。伊作も推薦で大学決めたはずだけど、バイトやら何やらで忙しそうだ。俺もクリスマスはさすがにまずいかなーと思わないではなかったんだけど、だけど、俺たち去年までなんだかんだでクリスマスは集まってうだうだやってたんだもの。べつに約束したわけじゃないから、実をいうと去年も危なかった。去年は伊作に彼女ができて、食満が風邪をひいて、文次郎も暇じゃないっていうし、そんならやめとくかーって話になって、俺はつまんないなって思ったから仙ちゃんと長次と街をぶらぶらしてたら、文次郎がひとりで買い物してたから無理やり仲間に入れて(結局何がしたかったんだ、アイツ)、食満がだいぶよくなったってメールくれたから呼び寄せて、伊作の冷やかしに行こうって話になってイルミネーションが綺麗な百年公園に男5人で行ったら、目の前で伊作が女の子に頬を張られてひとつの恋愛が終わっていて、俺たち全員で爆笑したのだった。なんだかんだで集合してうだうだ過ごしたクリスマスだったのだ。
でも今年は無理かな、やっぱりな。
つまんねーなと思って長次に電話したら、付き合ってやるって一言くれた。わは、いいやつ!もうこうなったら俺、長次とふたりっきりでハッピークリスマス過ごすもんねー。べつに俺だってクリスマスのにふたりで過ごしてもいい女の子だっていないわけじゃないけど、けど、男同士でたらたらつるんでたほうが楽しいんだもの。俺がいつまでも子どもなんだろうか。だけどさあ、俺ら、今年で仕舞いじゃん。みんなはさみしくないんだろうか。
文次郎に文句を行ったら、「どうせ新生活始まったらすぐに忘れるって。そんなもんだって」と軽く言われた。そういうもんなのか、マジで、そんな寂しいもんなの?小学生からずっと一緒の6人組だったから、これでばらばらってことがいまいち実感湧かないんだけど、そんな簡単に前だけ向いて歩いていくもんなんだろうか、俺たち。
寂しいメールがつまった携帯を前に唸っていたら、食満からメールがあって、「お前どうせひとりだろ、約束断ったから俺とでいいなら遊ぶ?」と気遣いたっぷりのメッセージをくれた。俺は笑顔になって食満に電話掛けようとしたら、今度は伊作からのメール。「で、何時にどこ集合なの~?」なんだお前、女の子と過ごすんじゃないの、っていうかお前もクリスマス一人なんじゃん(怒)。「仙蔵と文次郎これないかな?」って食満に零したら、「明日学校で仙蔵相手におねがい、おねがい、仙ちゃんと遊びたいよう!って甘えてみろ、お前ならイケる。あいつは動物系に弱いんだ」とのこと。よし、わかった、色仕掛けだな、やってみる。文次郎は、あいつ本人がどれだけ嫌がろうと仙ちゃんがその気になれば縛り上げてでもつれてきてくれる。
「わーい、今年のクリスマスも楽しそうだなー」と喜んでいたら、電話越しに苦笑されて「ほんとにガキっぽいなあ、お前」と呆れられた。それでもいいよ、今が楽しいんだから、しばらく子どもでいい。
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