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ハッピーメリークリスマス!

>>『夏休みとかに料理つくりに遊びに行ってあげたらいいよ、タカ丸さん!帰ったときにおかえりーって温かい
ご飯と一緒に迎えてあげたらそれだけで久々知先輩倒れるよ!』

コメで最高の萌ネタをもらったので・・・(ありがとうございます)


なんかの冗談だろ。
久々知はまっしらけになったエクセル画面を見て、泣くことさえ忘れてただ呆然と立ち尽くしていた。傍らでは事務の小川さん(21歳/部長と不倫中☆内緒だゾ!)が、内股でごめんなさあ~いと涙目になって平謝りしている。
「ちょうど久々知さんのデスクの近くを通りかかったときにバランス崩して転びそうになっちゃってえ、慌てて手をついたらデリートキーぽちっとしちゃってたんですう~」
久々知は真っ白な頭のまま、「はあ、」と呟き、「怪我はなかったでしたか」とようやくそれだけを言った。小川は久々知はそういってくれると思っていたとばかりに輝いた笑顔を見せると、「はい、おかげさまで!」と力強く頷き、「それじゃああたし待ち合わせがあるんで」と申し訳そうな振りだけはたっぷりに、オフィスから去っていった。見るに見かねた上司が、久々知の肩をぽんと叩き、「えーっと、手伝おうか」と申し出てくれたが、久々知は口から魂を飛ばしつつゆるゆると首を横に振った。
「いえ、結構です。課長、今日はお子さんとクリスマスディナーに行かれるんでしょう?楽しんできてください。俺、何の予定もありませんから」
表情筋をフルに使い、にっこりと微笑み、やがて誰もいなくなった真っ暗なオフィスで手をついて倒れこんだ。泣くなおれ、泣くんじゃない、俺。お前もう成人して立派な大人だろ、泣くんじゃないよ。ああ、でも、今地球が滅亡しても俺はちっとも悲しまないぜ・・・。
久々知兵助、23歳の涙のクリスマスであった。


今日だけは父親に頼み込んで、店の手伝いをなしにしてもらった。クリスマスは、可愛くなりたい女の子たちで店が繁盛して忙しい日なのだけれど。いつもは仕事で忙しくて全然会えない久々知が、クリスマスだけは死んだって定時で上がるから、一緒に過ごそうといってくれたのだ。嬉しい。へへへ、死ぬほど嬉しい。タカ丸はゆるむ頬をつねって、念入りに髪形を整える。同じゼミ生の綾部が、「あやまあ、顔がゆるゆるだ」と横からからかってくる。
「今日はハッピークリスマスですか」
「うん、ハッピーです。綾部は?」
「私はタカ丸さんが私のディナーご一緒しませんかの誘いに頷いてくれればハッピークリスマスなのですがね。どうも叶わず、アンハッピークリスマスです」
「う、・・・ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらず。塾のアルバイトを入れたので、これから受験生相手にオラオラ、クリスマスは絶滅したんだよ、お前らのサンタクロースは微分積分だコラと叫んで恨まれてきますから」
「今週日曜の美術館めぐり、楽しみにしてるから!」
綾部は美しい笑みを浮かべる。頬を染めたタカ丸のポケットで携帯がなった。久々知からのメール着信である。慌てて尻ポケットから携帯を引っこ抜くと、ぱくんとフラップを開く。『ごめん。仕事で残業入った。何時までかかるか分からないから、今日はナシにしてくれ。ほんとごめん。・・・日曜あいてる?』
スッとタカ丸の表情が消えたので、綾部は横からお邪魔しますよ、と携帯の画面を覗き込んだ。そして、おやまあ、と呟いた。
「まあ、相手は社会人だから仕方ないです。元気出して・・・私との約束はまた別の日でいいですよ」
「ううん。先に約束したのは綾部だから」
タカ丸は首を横に振ると、ぽちぽちとメールを打った。『仕事ならしかたないね。こっちは気にしないで、仕事がんばってね。日曜は予定があるからちょっとムリなんだけど・・・ごめん。またそっちのスケジュール教えてね。空いてるときにごはんでも食べに行こうね』
それから携帯を閉じた。いいんですか、と瞳が語る綾部に、わざと明るい笑顔で「残念!」と茶化した。
「僕のバイト終わるまで待っててください、三木ヱ門のなりきり路上サンタクロースでケーキ売りバイトでも冷やかしに行きましょう」

久々知は、終電に滑り込んで帰宅した。それでも全部は終わらずに、持ち帰りだ。明日提出の書類が消えたのだから仕方なかった。恨む気持ちもないではないが、恨んだって仕方のないことだし、トイレ休憩だからと油断して保存しておかなかった自分も悪いのだ。久々知は溜息をついて自室のマンションのドアを開けた。真っ暗な玄関が自分を飲み込む。
が、奥の部屋から明かりが零れていて、久々知はびっくりして革靴を履き捨てると、部屋に上がった。掃除も満足にしていなかった汚い部屋が綺麗に片付けられて、小さいテーブルにいっぱいの食事が並んでいる。タカ丸が緊張したような笑顔を浮かべて、「お、おかえり~」と控えめな挨拶をした。
「タカ丸ッ!?へ、部屋ッ・・・家、鍵ッ・・・!」
うまく言葉にならない。タカ丸は「えと、あの、大家さんにあけてもらって・・・その、不法侵入してすいません」と深く頭を下げた。
「どうしても会いたくて、今日駄目になっちゃって、元気出そうと思ったんだけどやっぱりへこんでたら、友達が会いたいときは会うために会いに行けばいいって言うもんだから・・・その、一応ご飯なんかつくってみたりしたんだけれども。冷蔵庫の中身ちょっとだけ使っちゃいました、ごめんなさい。あと、友達からケーキ貰ってきたからご飯の後に食べよう。あ、あと、お風呂も沸いてる!仕事お疲れ様です。あの・・・怒ってる?」
立ち尽くしたまま、呆然とした表情でわなわなと震えている久々知に、タカ丸は圧倒されて怯えたように彼を見上げた。久々知は、くわ!と目を見開き、「怒ってなんか!」といった。声が大きくなってしまって、驚いたタカ丸がびくりと肩を揺らした。
「嬉しいです、ありがとう。部屋、・・・汚かったろ・・・ごめん。エロ本とか・・・出しっぱなしだった気がするし」
「いやいや、健全な男だから!い、一応ベッドの下においてみたりなんかしましたけれども・・・よかったですかね」
「結構です!飯まで作ってもらって・・・冷蔵庫、十ヶ月放置のマヨネーズとかあったろ・・・」
「ぱんぱんに膨らんでてちょっと怖かったかな。捨てちゃったけどよかった?」
「ありがとう・・・ほんと、嬉しい」
久々知はスーツ姿にコートを羽織ったまま、ぎゅうっとタカ丸を抱きしめた。
「嬉しい。ほんと、今なら死んだっていい。嬉しい。嬉しい。嬉しい。あーほんと、どう言ったらお前にこの気持ちが伝わるかな。ほんとに嬉しい。嬉しくってたまらない。ありがとな。好きだ、大好きだ」
「えへ、えへへへ。なんか、笑っちゃうね、なんか、嬉しくて。どうしよう、にやけがとまんないよ。あー、兵助としゃべってるだけでこんなに嬉しいんだよ、俺頭おかしくなちゃったのかも・・・。へへ、兵助大好き!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめあって、うへへ、とお互いにやけ笑いをして。真夜中だし、クリスマスなんてとっくにおわちゃってたんだけれども、ふたりはその晩タカ丸の作った料理を食べながらテレビもつけずお互いの話を何より面白いものとして没頭して聞いて、平凡だけど何より幸せな時間をすごした。
ハッピーメリークリスマス。すべての人に幸いあれ!


こういうことですか、わかりません!
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