お久しぶりでございました。
この二週間あまり実にいろいろなことがありました。
・風邪をひいた。というか、ひいている。鼻水とくしゃみと偏頭痛がとまりません。
・パソコンが壊れた。ので、新しいパソコンを買った。ら、古いパソコンが直った。・・・二台もどーすんのよこれ。
・漫画喫茶にプチはまりした。貴重な休みの隙を見つけては足しげく通い、「遊☆戯☆王」と「ジョジョ」を読みきった(どっちも巻数が結構多いジャンプの名作です)。
・それって駄目な大人の代表じゃないの?
・たぶんそう。
---------- キリトリ -----------
孫兵はとてもとても基礎体温が低いよというお話。
戯れにぴとりと布団の中で手足をくっつけたら、氷みたいに冷たかったんで、びっくりした。
「ひ、」
と思わず小さく驚いた声をあげると、孫兵は「僕はどうも体温が人より低いようで」と淡々とした返事。竹谷は己が基礎体温が高いほうだから、孫兵の冷たい手足によくない感じを覚えてしまって、自分の手足を擦り付けてなんとか温度を上げようとする。
「大丈夫か、こんな、低くて」
「動きは多少鈍くなりますけどね。いいんじゃないですかね、生きてるんだから」
「寒くないのか」
「僕は、別に」
慣れてますし。孫兵は反応も淡白で冷ややかだ。竹谷が嫌いなのでなくて、誰に対してもそうなのだ。孫兵は、人間に対してはほとんど感情を動かされない。竹谷は、孫兵をぎゅうと抱きしめる。寝巻が包む肉体は、しなやかで、全身が無駄のない筋肉で出来ていることを、抱きしめた感覚が伝えてくる。竹谷は「冷てえ」としみじみと呟く。
「離れればいいのに」
孫兵は呟くが、竹谷は離れない。孫兵は竹谷のこういうところが好きだ。初めはくすぐったいなと思っていた。くすぐったくて嫌だな、と思っていたのに、そのうち好きで好きでたまらなくなった。一緒に布団の中で寝て、こんなふうに冷たい孫兵を抱きしめてくれる人が、この世の中に何人いるだろう。竹谷は、俺じゃなくてもさ、という。
この先にそんな人間は絶対出てくるさ。
確かにそうだろう、と孫兵は思う。そんな人間は竹谷だけではないだろう。孫兵は、人柄は淡白で人間に対しては薄情だけれど、容姿はとても美しいから近づいてくる人間は少なくないのだ。だけど、孫兵は竹谷がいいのだ。竹谷以外の誰かに抱きつかれたって、きっと緊張して防衛本能が働いて満足に眠れないに違いない。こんなふうに抱きしめられて、ぽかぽかした肌の温みに、ほっと息をつける人は一人だけだ。
「寒いだろ、孫兵」
と心が蕩けてしまいそうな甘やかす声でもう一度囁かれて、孫兵は別段寒くもなかったけれど、
「そうですね、とても」
と頷いたら竹谷が、ほらみろ、と満足げに頷き、ほらどうだ、これでもか、なんてぎゅうぎゅうしがみ付いてくるものだから、孫兵はあったかいというより熱い感じがして、のぼせそうだと思いながら、まだまだ、寒いです、すごく寒い、なんて思いっきり甘えてやった。
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